Moschino. Photography Mitchell Sams.

「らしさ」を壊す:ミラノ・ファッションウィーク day1

MOSCHINO、Neil Barrett、Versaceがそろってファッションのジェンダー規範に異議を唱え、その境界線をぼかし、個性を尊重した。

by Steve Salter; translated by Aya Takatsu
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18 January 2018, 12:32pm

Moschino. Photography Mitchell Sams.

「メンズウェアとウィメンズウェアがどのように共存できるかに興味があります」。モデルたちがフリルのついたチュールのロングガウンを手に取ったり、ビニール製のボディスーツで走ったり、目出し帽を脱いだりしているバックステージで、ジェレミー・スコットはそう話した。自身が手がけるMOSCHINOの2018年メンズウェアとウィメンズウェアのプレフォールコレクション「Overt/Covert」を通して、スコットはふたつのジェンダーを弄び、ひねりを加えることで、刺激と解放を探求したのだ。ミシェル・ゴベールによるテクノ満載のBGMに鼓舞されたMOSCHINOのメッセージとは、「服は私たちを定義できるが、必ずしも制限するわけではない」というもの。これは、ヒーロー、カップル、そして夢追人へ向けたコレクションなのだ。

Moschino

ボタンをきっちり留めた紋切り型のビジネスマンはフェティッシュに色づけされたのち、鞭のお仕置きで言うことを聞かされる。ぴったりとした黒いドレスの中心にはカマーバンドが配され、ビニール製のブーツを履いたグラマラスなショーガールのボディスはサスペンダーで吊られていた。裁断されたピンストライプのスーツからは、肉体とクリーンなデザインが露わになっている。「マスキュリンとフェミニンを破壊して掛け合わせるというアイデアに取り組みたかった」と、スコットは付け加えた。メンズウェアの象徴をウィメンズウェアへと落とし込み、発展させる。そして彼はウェアの要素(チュール、花柄、コルセット)も持ち出して混ぜ合わせたのだ。フリルやチュールのケープをまとっていても、筋骨隆々とした男性モデルたちの男性性は損なわれておらず、数々の単語が記されたラテックス製のタグをピンで切り貼りしたルックは、破壊や倒錯、セックス、力、混乱を力強く表現していた。

Moschino

「これはステレオタイプへの懐疑と、新しいものの提示ーー男性と女性の新たなエネルギーーーに関するものなのです。非常にたくさんの人や友人が、このふたつの性に異議を唱えています」。カリフォルニア生まれでジェンダーニュートラルのモデル、オスロ・グレイス(Oslo Grace)が、『ルポールのドラァグレース』を勝ち抜いたヴァイオレット・チャチキ(Violet Chachki)と共にタキシードを着た最後のルックは、これ以上ないほど魅力的だった。「これはポップカルチャーの一部です。彼らには居場所があり、意見もある。これが今という時代、私たちが暮らし、ともにつくり上げている実際の世界です。世間は人にレッテルを貼りますが、私たちはそれを取り除いて、自分がどうありたいかを表現することができる」。スコットがもっとも遊び心に満ち、挑発的で力強く語った瞬間だった。

Moschino

『ニューヨークタイムズ』に掲載された、ブルース・ウェーバーとマリオ・テスティーノへの告発が業界の注意を集めた、まさにその直後に始まったこのショー。セックスとファッションの蜜月は、私たちを不快にした。そうであるべきだったのだ。体験は共有され、人々は守られなければ、変化は起こされなければならない。とはいえ、隠された世界をつまびらかにし、同時に性の多様性と合意の上でのセックスが持つ力を讃えたMOSCHINOは安全領域だ。「セックスは人間性の一部であり、合意の上で行われる限り、何の問題もありません」とスコットは説明する。「人にセクシュアリティがあるのなら、そこにはポジティブな力が宿っているのです」

Neil Barrett

フェティッシュな秘めごとはないにしても、ニール・バレットもまた、典型的な男性の定番服を引っかき回してユニフォームを再考し、メンズウェアの多様性を掘り下げながら、着こなしにおけるフレッシュな解釈を探求した。教室からオフィス、クラブ、戦場まで、バレットはそのファッションを象徴するものを切り貼りし、再現して、ルールを結びつけ、新たな服をつくり出したのだ。テーラリング、ミリタリー、スポーツウェア、ストリートウェアの明確な境界線はすべてぼかされている。最初のインスピレーションになったのは、90年代半ば。新世代のデザイナーによってメンズウェアのかたちや素材が再考され、男性の着こなしが変わっていった時代だ。

Neil Barrett

バレット自身、その時代の先頭に立った人物である。だから2018年秋冬シーズンにおいても、ショー会場に並んだのは、かたちで遊び、再解釈された作品群だった。そこにはミリタリー・テーラリングとミッドセンチュリークチュールが並ぶ。ボマージャケット風のコクーンシェイプのアウターはオペラコートのようにも見え、タイトウエストのトレンチコートやスーツは砂時計のようなくびれを演出している。バレットのアプローチは倒錯性こそ少ないものの、男性的な規範で構成された私たちが暮らす社会に対して、ジェレミーと似たような疑問を呈している。

Versace

ヴェルサーチ家の深遠へと私たちを誘うドナテッラ。だが「Go Big and Go Home!」と題されたショーは静かな夜になるはずもなかった。この一家は、もうすぐ放送されるテレビシリーズ『アメリカン犯罪物語:ジャンニ・ヴェルサーチの暗殺』を完全なる作り話と批判しているが、Versaceの2018年秋冬コレクションは鍵穴から彼女らの真実を垣間見せてくれている。

Versace

ドナテッラにとってコレクションのテーマである「家」は故郷であり、そのインスピレーションはヴェルサーチ家の閉ざされた扉の向こうにある親密さから得たものだ。アクセサリーは豪華なインテリアの数々から着想を得た。クラッチやトラベルバッグに施された年代物の天鵞絨プリントは、カーテンを想起させるし、ブレスレットは食器からつくられている。チェスターフィールド風のソファーは、革や天鵞絨にカウチンボタンをあしらったアウターやアクセサリーとして生まれ変わった。ジャンニの生涯とその遺産を讃えた2018年春夏ウィメンズコレクションに次ぐこのメンズコレクションのショーは、ただただ自分の中にある「ヴェルサーチ」を受け入れるというものだった。さらに強い自己顕示的パーソナリティを持ったそのメッセージは、ルールに異議を唱え、境界線を無視し、個性的である術を尊重している。

Versace

Credits


Photography Mitchell Sams
Translation Aya Takatsu

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