NulbarichのフロントマンJQが語る、ミュージックとファッションの相思相愛

結成からわずか2年で武道館公演を成功させたバンド、Nulbarich(ナルバリッチ)。今月ミニアルバム『2ND GALAXY』をリリースしたばかりの彼らだが、流動的なメンバー構成などによっていまだに謎の多い存在でもある。中心人物であるJQにその“謎”の正体や新譜、日本固有のファッションと音楽の関係を訊いた。

by Yoko Abe; photos by Syuya Aoki
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29 November 2019, 1:11pm

2016年、デビューシングル「Hometown」がラジオのヒットチューンになったことを皮切りに、スターダムを駆け上がったNulbarich。2018年は武道館公演を成功させ、今年2月には3枚目のフルアルバム「Blank Envelope」、続く11月にはミニアルバム「2ND GALAXY」をリリース。さらにきたる12月1日にはさいたまスーパーアリーナでワンマンライブを開催予定だ。

フロントマンのJQは、流麗な歌声だけでなく、その個性的なファッションスタイルも注目されている。その一方でメンバーのキャリアなどは謎に包まれており、ミステリアスなバンドでもある。そこでワンマン前のJQを直撃し、Nulbarichについて、そして自身のクリエーションにとって必要不可欠だというファッションについて話を伺った。まずは、今回の撮影を担当したフォトグラファー・青木柊野が21歳だったことがトークのきっかけに。

ティーンの頃からファッションクレイジー

━━21歳のときって何してましたか。

JQ:何していたんだろう。もう音楽活動はしていましたね。もともと自分で歌っていたわけじゃなく、プロデューサーや作家として活動していて。稼いだお金を全部服につぎ込んでいたんじゃないかな(笑)。20歳過ぎから、作曲でなんとなく食べられるようにはなっていたから、ショップに通いつめて、ファッションブランドの展示会に行きまくってた。

━━当時はどういうブランドが好きだったんですか?

JQ:中学の頃からスケーターだったので、割とストリートっぽいブランドがずっと好きですね。当時はDELUXEのデザイナーのHUEさんや、スタイリストの高橋ラムダさんに影響を受けていました。いわゆるアパレルの中の”カリスマ”たちに憧れて、展示会にどう潜り込もうか試行錯誤してましたよ。Sasquatchfabrix.とかWACKO MARIA、BEDWIN & THE HEARTBREAKERS、ちょっと新しいですけれどBlackWeirdosももうずっと好きですね。毎週末は渋谷や原宿で服を見るというのが中高時代の定番でした。

━━ご自身の進路としてはファッションでなく、音楽だったんですね。

JQ:洋服を作ることにあまり興味なかったんです。それより、すごい人が作ったものを着たいという(笑)。

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━━20歳ごろからすでにミュージシャンとして成功していた中で、2016年になってからバンド活動を始めたきっかけは?

JQ:作家の仕事を通して仲良くなったミュージシャン達と飲んだり遊んだりする中で、いつかバンドを組んでみようという話はしていたんです。それが実現したのがたまたま2016年。「ちょっとやってみない?」と言って作った曲が、ラジオでドーンとかかって。僕たちとしては「やばい!まだアーティスト写真ない」「じゃあロゴ、キャラクター作ろう」みたいな(笑)、レギュレーションも何もない状況でした。

━━固定のメンバーはいるんですか。

JQ:10人ぐらいですかね。だいたい各セクションに2人かな。ドラム2人、ベース2人みたいな感じです。メンバーの中には、プロのミュージシャンとして活動しているメンバーもいるので、今回は3人でとか、今回は4人でやってみるとか臨機応変なんです。みんなで「これいいよね」という曲を作ったら、それをどう遊ぶかがメインで。だから、その時の参加メンバーで、作る音も全然変わる。同じセクションでも、オルガンあがりの奴もいれば、ジャズピアニストもいるっていう感じなので、別のメンバーが入るだけでバンドがガラッと変わるんです。むしろその変化が肝ですね。でも、今のところこういうスタイルをうまく世の中に説明する言葉がなくて。バンドじゃないと言われたらバンドじゃないかもしれないけれど、でも僕たちはバンドだと思っています(笑)。

━━それだけの個性が集まっていると、1つの作品を作り上げるときにうまく噛み合わなかったり、衝突したりしないんですか?

JQ:逆に、みんな「俺やりたい! 俺やりたい!」みたいなのはあまりないんですよね。この曲は誰と作ろうかということで揉めたこともないし。そもそもそれぞれ好きな音楽が全然違うんですよ。唯一いいよねって重なる部分、僕たちの共通言語がブラックミュージックなんです。そこは世の中の他のバンドの人たちとわかりやすく違うところだという気がしますね。そういうバンドだからこそ、1つのアルバムの中でも楽曲の振り幅が広いんだと思います。

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ソロよりバンドなのは、みんなとやったほうが楽しいから(笑)。

━━ソロプロジェクトではなくて、あえてバンドの形を選んだのには理由があるんですか?

JQ:みんなとやったほうが楽しいから。ほんとそれだけですね(笑)。そもそも表に立つつもりで音楽をやっていなかったので、1人だったらこういう形の音楽はやっていないと思うんですよ。中学生の「バンド組もうぜ」みたいなノリから始まって、ありがたいことにデビューしてから2年で武道館ライブができて。友達とアパレル始めたらそれがバズっちゃったみたいな感覚があります(笑)。

━━メンバー間のハブになっているのがJQさんということなんでしょうか?

JQ:僕が声をかけたということもあって、メンバーの中で共通の友達が多いのが僕っていう感じかな。お互いに存在は知っていたけど、まさか一つのバンドを組むとは思っていなかった人たちもいて、そういう意味では僕を通して矢印が結びついたメンバーは多いと思う。彼らがすごくフレッシュにケミストリーを起こしていく感じは、僕としても想定外ですごく面白い。

━━他のメンバーは顔出ししていないですよね。

JQ:他の活動をしているメンバーが多いので、レギュレーション上、顔出しや名前の公表などは控えているんですよ。でも、ライブには普通に出ていますし、全然隠してはいないです。音源だけを聞いている人は実態をつかみにくいのかな。デビュー時に先入観なしで音源を聞いてもらえたというのは、僕ら的にプラスだったとは思いますけどね。

━━アルバムごとの印象も全く違いますね。

JQ:そうですね。1st、2nd、3rdのどこから聞いたかでも、イメージは全然違うと思う。このメンバーで、このスタイルだからこそ生まれるケミストリーを毎作楽しんでほしいですね。

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━━先ほどもおっしゃっていたように、一曲一曲の音楽性にも振り幅がありますよね。それらをアルバムとして編む場合、グランドコンセプトみたいなものに則るというより、作った曲をどう並べるかが重要になってくるんでしょうか。

JQ:そうですね。僕はDJでもあるので、曲順にはこだわりがあります。とはいえ、今回のミニアルバム「2ND GALAXY」は、さいたまスーパーアリーナでのライブが発表された後に作っているので、その影響を受けているとは思いますね。あえて意識するようなことはなかったけれど、その事実は消しようがない(笑)。だから今まで以上の規模のステージで、わかりやすくちゃんと多くの人に届けることが大前提だ、という意識は自分の中にありました。こうやって振り返ってみると、前の作品よりも音数も少なくシンプルで、大きいところで鳴ってもごちゃごちゃしないようなアレンジになっていると思います。

━━さいたまスーパーアリーナ、大きいですよね。

JQ:でかいですね。ぼそぼそMCしたら、ブォンブォンブォンってなっちゃって、聞き取れなさそう(笑)。

━━確かに(笑)。どんなライブになる予定ですか。

JQ:スーパーアリーナとなれば、もうお祭りですからね。超贅沢なホームパーティーみたいな気分です。

ファッションとミュージックの深い関係

━━ライブの衣装もご自分でお選びになっているそうですね。

JQ:はい。初期は全部自分でスタイリングしていたんですけれど、今は一緒に仕事がしたい一心で、高橋ラムダさんにお願いしています。ラムダさんと一緒に服を選ぶとか本当にやばい(笑)。常に刺激をもらっていますね。次のライブの衣装は今絶賛話し合い中。ステージ上で映えるものを選ぶのは、普通の服を選ぶのとは全然違うんですよ。例えばそのステージの照明は、シンプルなのか、LEDが後ろにバンってあるものなのか、赤が強めなのか、とかね。さらにステージチェンジするとなると、また選ぶ服も変わってきちゃう。

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━━JQさん、なんだか楽しそうですね(笑)。

JQ:めっちゃ楽しいですね(笑)。常に音楽のことを考えているから、ファッションは最高の息抜きです。ラムダさんと一緒にパリコレのルックを見て「これいいよね」「これやばかったね」ってお酒を飲みながら話すのは本当に楽しい。今でもお付き合いさせてもらっているアパレルの先輩方も、普段音楽では得られないインプットをくれるので、すごくいい刺激になっています。

━━JQさんが音楽を続けていく上で、ファッションは欠かせないものですか?

JQ:そうですね。僕の場合は10代からずっとファッションが好きなこともあって、音楽とファッションがイコールで結びついています。そもそも音楽って、そこに付随したファッションが生まれて、それが一つのカルチャーになっているものが多い。ヒップホップや、レゲエは代表的な例です。日本は後から音楽をインポートしてきたところがあるので、音楽とファッションがあまり密接にないというのは感じますね。でも、そのごちゃっているところが日本の良さだと思うんです。僕みたいなのもいれば、ヨレヨレのTシャツで歌うロックンロールも、かなりファッション的にイケてる。別にバンドでハイブランドを着てる奴がいてもいいと思うし、お互いにそれをリスペクトしあうのがクールだと思う。

━━バンドのあり方や、作る音楽、そしてファッションの捉え方など、JQさんのスタイルは固定観念にとらわれず柔軟ですよね。

JQ:別に「僕たちはこういう音楽だけをやるんで」と言うようなこともないし、その分、明日違う曲を書いたとしても誰かに文句を言われる筋合いもない。僕らが楽しければそれでいい。もちろん、本音はお客さんに全部の曲を四六時中聞いていてほしいけど、でもそんなわけにはいかないじゃないですか(笑)。「その人がはまったタイミングで聴いてくれればいい」って思ってるんです。例えば、Beastie Boysのセカンドアルバムって、当時はすごく叩かれたんですよね。かなりゴリゴリのヒップホップをやったから「あのバンドが!?」と驚かれてしまった。でも、ヒップホップ業界では名盤と言われているんですよ。やっぱりいろんな奴がいるから、僕たちが合わせると言うより、相手にどこかではまるタイミングがくるといいなという気持ちです。

━━ご自身のスタイルが確立しているんですね。

JQ:そうですか? でも、ほら、僕っていうことに関しての世界一位って、僕以外にいないから。

━━めちゃくちゃいい考え方!

JQ:誰かと比べるとしんどくなるじゃないですか。だからこそ、そう思うようにしているんだと思います。根はネガティブなんですよ(笑)。音楽や、夢に向かっていくことって、見たことのない景色に飛び込むことだから、不安とワクワクは表裏一体です。コイントスみたいなもので、ワクワクが勝っていればその分不安は見えないし、不安のときはワクワクが見えなくなってしまう。せっかくコインを投げているんだったら常に表のワクワクが出るようなチートをしたいと思っているんです。もちろん、たまに裏にもなるんですけどね。そういうときは「神様、意地悪っすね」って考えるようにしています(笑)。「ポジティブでいいね」と言われることもありますけど、でも「そっちの方がよくね?」って単純に思うんです。

Credit

Styling Lamda Takahashi
hair-make Daiki Okinaga

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