女性のために闘う:2018SS ミラノ・ファッションウィーク Day2

「世界を変えなければならない。いまだにこの世は、女性にとって生き辛いから」

by Steve Salter; photos by Mitchell Sams
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28 September 2017, 11:02am

リアルな人間を描いたコミックを題材に、圧巻の2018年春夏メンズ・コレクションを作り出したミウッチャ・プラダ。ウィメンズの2018年春夏コレクションでは、同様の物語を女性に焦点を当ててさらに探求した。ショー会場を飾ったグラフィックは、幅広い世代の女性アーティスト8人とのコラボレーションによるものだ。

Prada

今回Pradaと協働したアーティストは、ブリジッド・エルヴァ、ジョエール・ジョーンズ、ステラー・ルーナ、ギウリアーナ・マルディーニ、オノ・ナツメ、エマ・リオス、トリナ・ロビンス、そしてフィオナ・ステイプルズの8人。会場セットには、史上初の女性アクションヒーローコミック『ミス・フューリー』を作り出したターペ・ミルズのアーカイブ作品が用いられていた。『ミス・フューリー』は女性の声を集めた作品だ。世界には怒りがたくさんあるが、世の女性たちが団結すればより良い未来が見えてくるかもしれないのだ。

Prada

「世界を変えなければならない。特に女性のために、世界を変えていかなきゃ。いまだにこの世は、女性にとって生き辛いから」と、ショーのバックステージでミウッチャは高らかに語った。世界中で女性の人権を取り巻く過酷な現状に加え、なんといってもドナルド・トランプの米大統領就任と彼の発言が映す世相が、私たちに戦いを余儀なくさせている。ニューヨークのデザインスタジオ<2x4>によってデザインされた会場で、わたしたちはPrada 2018年春夏コレクションにウィメンズマーチを連想させた。世界中で数百万人もの人々が一丸となり、団結と挑戦、そして平和的抵抗した、あの日を。

Prada

「状況が後退しているように感じるときはまだ戦いは終わっていと思い出さなければならない」と、ウィメンズ・マーチを追ったドキュメンタリー映画『We Still Rise』を手がけたポーランドの映画監督ダグマラ・コドルバンスキー(Dagmara Kodlubanski)は語っている。「落胆することなく『"普通"の人にも大きな変化を生む力はある』と信じなくてはならない」。ミウッチャ・プラダは、ダグマラの姿勢を今シーズンのコレクション全体に反映させていた。「闘う女性を服の細部を通して表現しました。それはわたしがデザイナーだから」と、彼女は説明した。

Prada

ウィメンズファッションは、女性らしさとフェミニズムの表現に価値を置き、社会に目を向けることで自らの世界観を物語ろうと試みてきた。しかし、Pradaはこれまで、その流れに抗い続けてきた。「今回のコレクションは男性的だと言うこともできるでしょう。しかし、わたしはその言葉を使いたくありません」と、ミウッチャは言及した。「それは、男性が強い女性を形容するときに必ず使う言葉。どうして"強い女性"と言わないのでしょう?彼女たちは"強い女性"なのに」

Prada

会場の音楽は、ラナ・デル・レイからk.d.ラング、ニーナ・シモン、キム・ディール、スザンヌ・ヴェガへと続いた。「女性による、女性のために」というメッセージを掲げ、壁に描かれたコミックの世界は、そこから飛び出したかのように、テーラリングやシャツ、アクセサリーにスクリーンプリントされていた。ミウッチャは、ビートニクス、テディボーイ、ニューロマンティックを融合させ、現代という覚醒の時代に生きる女性たちのための新しいコレクションを打ち出した。

Prada

ショーが終わるとモデルたちがミウッチャの名を連呼し、ファッション評論家が彼女のもとへ群がり、シャンパンを求めて観客たちが席を立つ——雑然とした祝福の雰囲気のなか、ミウッチャは絵画がまっさらなキャンバスから始まるように、すべては白のドレスから形を成していったのだと説明した。パターンを引き、装飾や柄、素材が足されていく——アニマル柄からジャガード、スタッズ、ボタンまで、万華鏡のように鮮やかに仕上げられていくのだ。これはミウッチャの戦闘服である。「女性の立場を考えると、わたしたちは戦わなければならないと感じるのです。いつの時代も激励と強さが必要です。しかし、今こそ本当に必要なときなのです」

Prada

世界観もアプローチも異なれど、MOSCHINOもまた、Pradaと共鳴するメッセージを打ち出していた。ジェレミー・スコットは、典型的な女性らしさにMOSCHINOフレーバーを加えた。バレエダンサーからバイカー、上品なプリマドンナへと、高まるリズムに合わせて目の前で成長を遂げる女性。「今回のコレクションは『どこまで成長することができるか、どれだけ高く跳ぶことができるか』を考えた」と、彼は説明した。ファッション界で過去20年間を駆け抜けてきたジェレミー・スコット——彼のこの言葉には真実と希望が隠れている。

Moschino

しかし、ジェレミー自身の創作の歴史よりも注目すべきは、彼による女性の物語——「なりたい自分になるのが一番!」というメッセージだ。チュールを多用したスカートにレザーを組み合わせて、安全ピンのアクセサリーをほどこすなど、すべてが大仰で楽しく、そしてポジティブなコレクションだった。「Shirt happens」と書かれたDIY感溢れるTシャツからマイリトルポニーとのコラボレーション、胸から花びらを出してはランウェイに振りまいたアナ・クリーブランドまで、観客は終始笑顔でショーを楽しんでいた。ジェレミーは、たとえ深刻な話をしていても顔に笑みを絶やさない。そして、それは伝染する。「僕はポジティブな力を与えていかなきゃならない。だから、僕自身がスーパーポジティブでなくちゃならないんだ」と、彼は話す。これだから、わたしたちはジェレミーを愛さずにいられないのだ。

Moschino

MOSCHINOが女性らしさの典型をめぐる旅へとわたしたちをいざなってくれた一方で、Fendiはイタリアの未来派と南国情緒が出会うカリブ海への旅へ連れていってくれた。カール・ラガーフェルドがストライプやチェッカーボード柄、そして三角形を多く盛り込んだスケッチをもとに、Fendiのデザインチームは、それをシースルー素材のレイヤーとシンメトリーに落とし込み、大自然を彷彿させるソフトな世界観を作り上げた。

Fendi

オーシャンブルーが、シーフォームグリーンやコーラルピンク、砂色などのカラーに合わせられ、クリス・オフィリがコラボレーションで生み出したタペストリー作品「Weaving Magic」を彷彿させた。イギリスに生まれたオフィリは現在カリブの国トリニダードトバゴを拠点として創作活動を続け、同国に語り継がれる神話の世界を探っている。Fendiは、彼が描く光景をわたしたちに見せてくれた。ヌードカラーのスパンコールが散りばめられ、イギリス刺繍で繊細に描かれたヤシの葉や、レザーの花が装飾されたドレスには、Fendiというメゾンが誇る職人技巧の奥深さを感じさせた。政治的なメッセージこそ見られなかったが、そこには日常から非日常へ逃避するための美の世界が存分に描かれていた。

Fendi