少年時代の記憶をめぐって : wewill spring/summer 18

グラフィックデザイナー・鶴田一郎が描いたモダンな美人画との邂逅が、美にまつわるはじめの記憶——。少年の頃を追想する、「THE MEMORY OF BEAUTY」と題したWEWILLのセカンドシーズン。ショーの直後、デザイナーの福薗英貴に話を聞いた。

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12 October 2017, 11:06am

アントワープ王立芸術アカデミーの日本人初卒業者であり、WHEREABOUTSやSMITH &HARDY、TAKEO KIKUCHIなどのデザイナーを歴任した福薗英貴。彼が手がけるWEWILLの二度目のコレクションが、夜の秩父宮ラグビー場で発表された。

事前に届いたインビテーションには、1987年以降ノエビア化粧品のCMに起用されたことでも広く知られるグラフィックデザイナー・鶴田一郎による4人の美人画が描かれていた。黒髪・長髪のひっつめ、切れ長の目、シャープな日本人顔でありながら、モダンな佇まいには、たおやかなアール・ヌーヴォーのようなおもむきもある。デザイナー曰く、「女性を意識するきっかけになった絵」なのだという。テーマは「THE MEMORY OF BEAUTY」だ。

お香の匂いがほのかに漂い、ゲストの話し声と虫の声が響くなか、坂本龍一のピアノソロ曲「美貌の青空」により静かにショーが始まった。男のワードローブに1着はありそうなベーシックな服を、柔らかなファブリックを用いながら落ち着いた色合いでまとめ、肩肘を張らないオーバーサイズのシルエットに仕上げた。コートのラペルやシャツの後ろ身頃が部分的に大きくなっていて、レイヤードのバランス感にはどこかイノセントな空気感もある。足元は、ワンストラップのレザーシューズ、シグネチャーグラフィックである「KROY WEN No.1」(鏡に映すと福薗が最も好きな街、NEW YORK)と刺繍されたもの、Reebokのスニーカーと富んでいる。そして、ランウェイが暗転すると、鶴田一郎の美人画が大小様々にトレースされたTシャツやスウェットが強い印象を残し、そっとショーの幕が下りた。ごくパーソナルな記憶の旅に誘われた気分のまま、ショー直後の福薗に話を聞いた。

フィナーレには美人画の数々が登場しました。

鶴田一郎先生の絵との出逢いは、僕が最初に「女性」や「美」というものを意識したきっかけなんです。僕は小学生でした。その時の印象が今でも変わらず強く残っていて、何十年間も大好きな絵を使用することを先生が快諾くださったのは本当に嬉しかったですね。今回のコレクションは、ごく個人的な子どもの頃の記憶に紐づいています。自分が着ていた服や、純粋に好きだったもの。明確に覚えていないけれど、おぼろげな記憶を思い出すのがとても楽しくて、結果的に少年時代を回想しながら作り上げていった感じです。

招待状にもアロマチップが同封されていましたが、お香のような匂いで、どこかノスタルジックな気持ちになりました。これもまた少年時代の記憶につながるのですか?

そうですね。竜涎香(りゅうぜんこう)の香りです。実家が仏壇くさいというか、お香の匂いが染みついている古い家だったんですね。確かその匂いは竜涎香ではなかったと思うんですけど、そういう嗅覚の記憶とリンクしながらAir /Aromaさんとコラボレートしたものです。初めての試みですが、今後はルーム・フレグランスやディフューザーを作りたいと思っています。実は、香りのデザインは昔からやってみたいと思っていて、いずれは香水にも挑戦したいですね。

ショーでは、品のあるビッグシルエットが中心でした。

歩いた時にサッとなびくような、風をはらんだ雰囲気にしたかったので、大きめのシルエットにしました。あくまでフィーリング的なものですけれど、子どもの頃って、楽な格好ばかりするじゃないですか。バスケットショーツのようなキュロットパンツだったり、父の背広をこっそり着た時の、子どもの体と服のあいだにある量感だとかはジャケットに投影してみたり。つまり、僕の個人的な、ぼんやりとした記憶にインスピレーションがあるのです。

ではReebokの白いスニーカーやリュックサックも?

Reebokは中学生の頃いつも履いていて、バッグに関してはよくリュックを背負っていたので。初めてバッグを作るのですが、今回は吉田カバンさんにご協力いただきました。その当時の僕が持っていたのは普通の開き方をするものですが、縦方向に割れるバッグを作ってみよう、と。やはり吉田カバンさんは傑出した技術がおありなので、自分のデザインをお持ちすると、期待以上のものをあげてくださって、とても面白かったですね。

目尻にすっとのびるアイラインは鶴田一郎さんの美人画を思わせます。今回はフェミニンな要素がコレクションに浸透しているように思いましたが、その点は意識されたのですか?

メンズ、レディスという区分けを気にせずに作ったというのはあるかもしれませんね。僕はもともと着物が好きなんですが、着物は基本的に、素材は違えど性別にとらわれないものですよね。そういう点では「ユニセックス」というキーワードはずっと頭にありました。2シーズンを終えて、これからのWEWILLのスタンスのひとつになるのかなと思っています。フェミニンなものを男性が着ることで、かえって男らしく見えることもあると思っているので。