CHAIが必要とするのは自分らしさを保つためのPUNKマインド

パワーアップし続けるCHAIが今、残すメッセージ。

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27 februari 2019, 4:56am

もっとワガママになって、もっとなりたい自分になる。それが2019年にCHAIが掲げるPUNKマインド。これは彼女たちだけでなくリスナーである私たちが達成すべき目標でもある。最新アルバム『PUNK』のリリースやイギリス、アイルランド、アメリカ、アジアでのツアーを重ねより進化したCHAIが今思うことに耳を傾けて考える、今大切にしたいこと。

誰がすごいかなんて、誰にも決められない

どの国にも良い点や悪い点の両方あるとCHAIは言う。愛情表現を怠らない欧米では挨拶として堂々とハグするし、素晴らしいものを見たときの反応もシンプルで真っ直ぐだ。海外ツアーを敢行してきたCHAIは世界の音楽シーンに混ざることで、日本人の大半は歓声にしろダンスにしろフロアでさえ正しいことをしようと振舞っているように感じた。そういうフロアの空気はステージ上に立つアーティストのパフォーマンスにも影響するので、多くのミュージシャンがそれについて語るのは仕方ないこと。なぜならそれがみんなで作るライブであり、ライブの醍醐味でもあるからだ。

良く言えば穏やかで悪く言えば個性の否定、そんな日本人の気質を考えたときに長年かけて染み付いた常識や文化からの影響は大きい。海外ではあまり意味をなさない敬語文化や社会が作り上げた“しきたり”、日本人はそういった敬いのカルチャーによって手に入れたものも失ったものも多いだろう。

「お店に行くと海外と日本の違いがすごく分かる。向こうの人は普通に音楽を聴きながら接客するし、すごく自由。日本の店員さんはすみませんってよく言うけど、海外ではあまり謝らないしチップ制度もあってお客さんとスタッフが対等なイメージ。日本にもそういう自由さがあった方がいいんじゃないかな」と、ボーカル・ギター担当のカナが語った。カナは双子のマナと比べて凛々しさを感じる。インタビュー中もカナは口数があまり多くなかったが、発言するときにはバシッと意見を言う逞しさがかっこよかった。一方でボーカル・キーボード担当のマナはCHAIを引っ張っているかのように質問に答えてくれた。ニコニコと笑いながら場を盛り上げるが、時には厳しめな洞察を披露するクールな部分がカナとよく似ている。

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そんなマナが苦い顔をしてカナの後に続いた。「変な立場があるから日本はストレス社会なのかも。嫌われたくないとか立場を気にしてるのかなって勘ぐっちゃうから、本当に尊敬して敬語を使っているのかよく分からない。相手を敬う姿勢がすごくいいと思うときもあるけど、そういうことが多すぎて海外と比べたときに日本は苦しそうだなって思っちゃう」。集団生活の中に現れる年代や経歴による境界線。その壁が作り出す社会全体のストレス問題も深刻だが、立場の話を考えたときにミュージシャンとリスナーの関係性についてはどう思っているか気になるところだ。CHAIがCHAIの音楽を聴いてくれる人たちに対して何を望んでいるのか、マナが話してくれた。

「ファンに求めることはCHAIがすごいと思わなくていいってこと。誰がすごい人なのかは誰にも決められないし、みんなすごいんだよね。私たちは毎日同じところに通ってる人はすごいと思うし尊敬してる。得意分野が違うだけで誰もが同じすごい部分を持ってるから、自分にもすごいところがあるって気付いてほしい」。

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悩めば悩むほど自分が見えてくる学生時代

「世界を変えたいって気持ちはすごくあるけど、戦いたくはないし相手もいらない。笑顔でハッピーにコンプレックスや可愛いに対する価値観を変えるために主張はするけど押し付けはしない。自分で気付いて考えて決めてもらいたい」、そう語るのはベースやアートワーク、歌詞担当のユウキ。彼女は学生時代に名古屋で出会った同じ悩みを持つ4人が、ずっと誰かに求めていた言葉や彼女たちが実際に感じていた気持ちをポジティブに変換して歌詞を書いている。思春期や進路選択など学校という小さな世界の中で生きる学生の悩みは本当に尽きないが、CHAIはそんな学生生活があったからこそ生まれたバンドだ。

「学生時代って一番嫌いだったんだよね。狭い世界すぎて早く抜け出したかった。もっと違う世界もあるんだなって思い始めたのは制服がなくなったときから。スタイルが良かったり髪がキレイだったり着崩すのが上手だったり、制服基準でしか可愛いがなかった空間の中で生きなきゃいけないのが難しかった。私服で自分を表現できるようになって自由を知った」ーマナ

「高校の時は好きなことはあっても何がやりたいのか分からなかったし、どうせ仕事にできないって諦めてる部分もあった。それこそ昔から絵が好きだったからCHAIで描けていることが不思議。でも今思えば、あの時悩んだおかげで”コンプレックスはアートなり”っていう言葉も浮かんだし、悩みを活動の軸にして発信するまでに至ったと思う。何も考えないで楽しいだけの学生生活だったら、やりたいことがなくなってたかもしれない。ちゃんと芯が出来たのは、超悩んでもがき苦しんだから」ーユウキ

そこだけじゃないんだよ、そこだけの世界で生きちゃダメだよ、これから始まる、いつでも始められる、まだ若いんだから。このCHAIのメッセージが、悩める若者たちに訪れた幸運であってほしい。

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自由と愛で溢れる、パワフルな大人たち

苦しい学生生活の中で喜びも悲しみも共有できる仲間と出会えたことは4人にとって大きな希望だった。しかしCHAIが海外で活躍するほどに成長できたのは彼女たちを支える存在があったからこそ。インディーズ時代のCHAIを発掘したプロデューサー石川大との出会いは、彼女たちがコンプレックスをここまでの自信に変える勇気の最後のひと押しとなった。

ドラムのアグレッシヴなイメージとは裏腹にユナは穏やかなキャラクターだ。「レールに沿った生き方を説明する大人ばかりだったんだけど、大さんは私たちのやりたいことを理解してくれた。包容力がすごくて、ああいう大人になりたいなって思う」と語るユナの言葉から分かるのは石川さんに対する信頼。コンプレックスを抱えた自分を丸ごと愛して認めてくれる、それはいつの時代も若者が人生の先輩たちに求めることなのかもしれない。

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さらにCHAIが憧れる大人として名前を挙げたのが、しをりん、ゆりしー、ぴっかぱいせん、ゲッツ!の4人からなるクリエイター集団チーム未完成。食パンをモチーフにした「パン」のロゴが代表的なアートワークだが、それぞれが仕事をしている上で活動するチーム未完成から爆発的に自由を感じるそうだ。「大人でも、10分でも嫌だと思ったことがあったらやりたくないと声を上げてほしい」とユウキが言うように、つまらない常識や縦社会のしがらみに立ち向かえる自由でエネルギッシュなパワーを持つ大人こそが、彼女たちが憧れる大人像である。

自分のPUNKを見つけよう

インタビューの最後に、メンバーそれぞれのPUNKな一面を教えてもらった。

「しょっぱいものと甘いものを同時に食べられる。焼肉屋でカルビとチョコレートケーキかチーズケーキを交互に食べるのは最高に美味しい!」ーマナ

「無理して笑わない。友達に顔引きつってるよって言われた時に自分の顔を想像したらやばくてやめた(笑)」ーカナ

「すごく歩くのが遅い。周りがスタスタ先に行っても何も思わない。ゆるゆるパンク」ーユウキ

「一年を通してテンションが一緒。悲しいこととか嫌なことがあっても全部笑顔に変えられる(カナ談)」ーユナ

なりたい自分になるために、もっとPUNKに生きていこう。

text & interview Saki Yamada
photography & artwork MASAKO.Y
hair and makeup Tomomi Yoshida