90年代スーパーモデルたちを讃えるブランドThe Fan

懐古の世界を探り、服を作る、エル・アズダリとクリスティーナ・アランダ=ガルゾンが、ブランドThe Fanを立ち上げた。ボマージャケットに、アンディ・ウォーホルが70年代に手がけた『Interview』誌の表紙をパッチにプリントして配したコレクションでデビューし、熱狂的ファンが世界中に生まれた。そんなふたりが、第2弾コレクションで讃えているのは、90年代スーパーモデルたち——そして、その世界観をルックブックで体現しているのは、あのアジョワ・アボアー。The Fanの勢いはとどまることをしらない。

|
mar 29 2017, 1:45am

ファンを表明するのに最も適しているのは、それを着ること——The Fanを立ち上げた2人はそう考えている。The Fanは、エル・アズダリ(Elle Azhdari)とクリスティーナ・アランダ=ガルゾン(Cristina Aranda-Garzon)によって立ち上げられたスポーツウェアのブランドだ。1970年代に発売された『Interview』誌のなかからとびきりアイコニックな表紙を選び、それらの写真をプリントしたパッチを袖に配したMA-1ジャケットを発表して、2017年初旬、ブランドとしての活動を開始した。

小規模な商品展開だったにもかかわらず、やがてこのジャケットは、セオフィラス・ロンドン、A$AP Rocky、アジョワ・アボワーといったスターたちがこぞって愛用し話題となった。なかでもThe Fanの世界観に魅了されたアジョワは、第2弾コレクションでモデルを務めると、申し出たほど。この最新コレクションは、クローディア・シファー、クリスティ・ターリントン、ナオミ・キャンベル、シンディ・クロフォード、ケイト・モス、そしてリンダ・エヴァンジェリスタ——90年代にファッションの世界を制した、あの"スーパー6"へのトリビュートとなっている。ジャケットが2種、パーカが1種、ロングスリーブTシャツが9種揃った今コレクションは、90年代にファッション界を超えてポップカルチャーを支配し、世界を魅了した6人の存在を讃える内容で、その名も『SUPER6コレクション』。今年初旬の立ち上げから数ヶ月で早くも第2弾の『SUPER6』を発売するエルとクリスティーナだが、なんと第3弾も間もなく発表するという。過去から現在まで、ポップカルチャーに心酔しているというふたりに、話を聞いた。

おふたりはどのようにして出会ったのですか?
エル:よくある出会いかた——みんなもストリートやクラブで友達を作るでしょう? FacebookやInstagramなんてない時代(MySpaceはあったけど)で、わたしはソーホーのストリートに遊び、友達と何時間も駄弁ったりしながら毎日を過ごしていた。そこでたくさんのひとと出会って、そのうちの数人が今の親友になった。

でも、クリスティーナとは、ショーディッチ地区のカーテン・ロード通りにあるクラブPlastic Peopleで出会った。音楽好きで、どんな出来事もその空間の雰囲気に飲み込んでしまえる、なんでもありのブラックホールみたいな場所——そんな場所を必要とするひとは、あの時代、Plastic Peopleに集まっていたの。自治体があの地域一帯を"キレイに"するということでPlastic Peopleもなくなり、今では美味しくもないハンバーガー屋になってしまっているけれどね。とにかく、クリスティーナと私はPlastic Peopleで出会って、すぐに仲良くなった。わたしが彼女に電話番号を聞いて、後日会って、浴びるほど飲みながらスタイルの話で盛り上がり、さらに仲良くなった——2008年のことよ。

The Fan立ち上げはどのような経緯で?
エル:服が好きでたくさん集めていたんだけれど、その服好きの情熱を形にしたいとようやく重い腰を上げたの。気軽で楽しくやりたいと思った。そして、子どもの頃から写真が大好きだったから、写真を中心に何かを作りたいと考えた。ある夜、クリスティーナと会って、その話をして——そうやってThe Fanが誕生した。事業計画を書いて、資金を持ち寄って、その夏はアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)が手がけた『Interview』誌の表紙を讃える内容のMA-1ジャケットを手作業で作り続けた。その商品数限定の小規模カプセル・コレクションを、わたしたちは『メガスター・コレクション(Megastar Collection)』と名付けたの——あの時代に『Interview』誌の表紙を飾ったスターたちの存在なしに、今のわたしたちが持つ概念や日常はありえない。世界を変えた人たちよ。
クリスティーナ:アイデアが決まって、それを形に実現していこうと決めて、「わたしたちふたりが大好きなものをモチーフにしよう」ということになったの。わたしたちはふたりとも同じような美的感覚を持っていて、また、ふたりともコレクターだったから、一緒に古着屋をまわって、時間を忘れて音楽の話で盛り上がって、アートのエキシビションをまわって——そうやって現在にいたるという経緯よ。

今作『SUPER6コレクション』のジャケットには90年代のスーパーモデルたちの写真を用いているわけですが、彼女たちの何があなたたちふたりをそこまで魅了したのですか?
エル:あの6人は、強く、パワフルで、美しく、知的で、そして楽しいひとたちだった。そんなすべてを兼ね備えた人間が存在するなんて信じられないわよね。まったくの不可解。とにかく無敵だった——だから、彼女たちを讃えたこのジャケットも無敵の存在感よ! 90年代スーパーモデルたちは、あの時代を真に象徴する存在だった。パッチになっても、とんでもなくセクシー!
クリスティーナ:今でも世の中が90年代のスーパーモデルたちの虜になるのには、きちんとした理由がある。頭脳、美、そして性格——わがままで生意気とも捉えられるあの女性のあり方は、時代の先を行っていた。アーティストやミュージシャン、写真家といったひとびとを魅了してやまなかった彼女たちは、力強い90年代の世界観ができあがる上で、とても大きな役割を果たした——それは誰にも否定できない事実。

90年代スーパーモデルの中でもっとも好きなのは?
エル:ひとり選ばなきゃならないとすれば、シンディかな。でも、シビル・バックも大好きだった。あの、ぶっ飛んでいて、「ひとがどう思おうとかまわない」といった態度に憧れたわ。
クリスティーナ:わたしはケイト・モス。これまで2回ほど一緒に仕事をしたことがあるんだけれど、彼女は言いたいことを言うし、やりたいことをやりたいようにやるひと。それでも、いまだにひとびとから求められる存在であり続けている。それはすごいこと。社会通念なんか笑い飛ばすシビル・バックも大好き。モデル業界に入ったばかりのとき、パリで彼女は業界のひとびとから「ほかのモデルたちのようになりなさい」と言われて、しばらくは言うとおりにしてみたけど、すぐに「ふざけんな」となったんですって——シビルは、ベースを担当してバンド活動もしていたスケーターだったのよ。それが本来の彼女だったの。自分のやりたいようにやろうと決めたシビルは、髪を鮮やかな赤に染めた——そこから彼女の人気が急騰したの。どんなことがあっても自分自身であること、その大切さを物語るエピソードでしょ。

懐古的な世界観に惹かれるのはなぜ?
エル:それは話せないわ!個人的なものだから。懐かしく感じる世界観にまったく興味がないひともいる。わたしは「カウンターカルチャー」にとても惹かれるんだと思う。わたしが懐かしく感じる時代や瞬間には、たくさんのことが起こっていた——それを今の世代に「昔、こんなことが起こったんだよ」「こんな素晴らしいものが生まれたんだよ」と見せていくのはとても重要なことだと思う。
クリスティーナ:クリエイティビティというものにおいて、もっとも画期的な瞬間は過去に起こったんだということ——ひとびとが恐れをかなぐり捨てて新しいものを作り出した瞬間がね。インターネット技術の登場と普及で、現代は何もかもが手に届く存在となった。だから、今はクリエイティブな個性で繋がる"部族"のような概念自体が薄れているように思う——みんなが同じような見た目でね。でも一方で、インターネットが普及したからこそ生まれるクリエイティビティもあって、だからこそひとびとが繋がり、コミュニティを作り出している。そうやって、インディペンデント系のファッション・ブランドが、伝統的なマーケティング手段を用いなくても世界中にファン層を拡大するという現象が生まれたの。

The Fanのコレクションを体現する存在としてアジョワこそが完璧だと考えた理由は?
エル:The Fanは、過去と現在を祝福することをテーマとして、そこに現代的な解釈と遊びを加えるブランド。アジョワは、とても現代的な存在感でありながら、昔ながらのソウルフルさを持っている女性。彼女が出演している映像の数々を見ると、彼女が内に強さを秘めているのが見えるし、感じられる。すごくパワフルなの。自分の過去に関してオープンに語ることができるという部分にも惹かれる。そこに強く感銘を受けるわ。
クリスティーナ:アジョワもぶっ飛んだスタイルよね!彼女は恐れ知らずの活動家。使命感をもって活動していて、女の子たちが心の状態や体型の悩み、薬物、性について語り合うことができるプラットフォームGurls Talkの立ち上げは、その大きな一環。ああやって世の人々のために立ち上がることができるひとを、わたしは心から尊敬するわ。

The Fanの次なるステップは?
エル:ジャケットはわたしたちのブランドのトレードマーク商品。これからも主張の強いジャケットを作り続けていくわ。ほかの商品も開発していこうと思っているけれど、小規模の限定生産のスタイルは貫いていくつもり。だって、みんなが着てるものなんて誰も着たくないでしょう?ひょっとしたら、現代ポップカルチャーをコンセプトに服を作るということも考えられるかも——「わたしがどれだけカニエ・ウエスト好きか」というようなテーマとか(カニエ自身がカニエを溺愛しているのと同じくらい、わたしもカニエが好き!)……でも、その前にまずは、今年2月に、時代を超えたアイコンたちを讃える新たなコレクションを発表するわ。ぶっ飛んだ世界観になるから、お楽しみに。

『SUPER6コレクション』は、thefanof.comにて販売中。

問い合わせ先
GR8
Tel 03-3408-6908

Credits


Text Lynette Nylander
Photography Emanuele D'Angelo
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.