Cabbageの話をしよう

マンチェスターの音楽シーンで、いま最もエキサイティングなバンド、キャベッジのメンバーに話を聞いた。

by Matthew Whitehouse
|
09 August 2016, 4:29am

1マイル離れていても、キャベッジ(Cabbage)はキャベッジだと判る。襟付きのシャツを着てランチを頬張るビジネスマンたちの中で、ショーディッチにあるパブのテーブルに背中を丸めて座る彼らは、どこからどう見てもバンドマンにしか見えない。(5人中2人は、バスに乗り遅れ、この時点ではまだ待ち合わせのパブに到着していない)。

「紙ある?」ボーカルで作詞もしているリー・ブロードベント(Lee Broadbent)はタバコを巻く紙を探している。しかしその口調は、「この紙は消費期限を3週間もすぎてるじゃないか! 痛い思いをしたくなければ黙ってついてこい」と凄むイギリス北部の国境警備員のようだ。ギタリストのオーイン・クリフォード(Eoghan Clifford)は、どのバンドのスウェードヘッドもそうするように、静かに座っている。隣には、シンガーで作詞担当のジョー・マーティン(Joe Martin)が歌詞を綴ったノートに何かを書き込んでいる。このノート、「サームス・フロム・ザ・パッチ(Psalms from the Patch)」は、その後マッチとケチャップ、缶ビールとともに青いビニール袋に入れられ、私にプレゼントされた。

彼らと過ごす時間は奇妙だ。キャベッジのインタビューは、まるで3分の間にアイデアをぶつけ合い、メンバーが競うようにそれぞれの言いたいことをしゃべる。まるで彼らの音楽を聴いているようだ。

彼らのデビューシングル「Kevin」を聴いてみてほしい。自分をイケていると思い込んでいる男について歌う、インディーズバンドらしい曲かと思いきや、聴き進めていくと、実は地球で初めて自意識というものを持った人間への賛歌であることがわかる。

「こないだ読んだ本に、動物の脳には本来的にふたつの"本能"だけを持っているっていうようなことが書いてあったんだ」とリーは言い、私がそれをきちんと記録できるよう、そこで言葉を止めた(レコーダーで録音していたのだが)。「そのふたつというのは、繁殖と永遠についてのものらしい。だから、人間は一生をもって、自分が得た知識を繁殖で継承していくか、その知識を保持して永遠に生きようとするかのどちらかなんだそうだ。心理学者はそう考えてるらしい」

「もちろん、人間の意識ってものがその邪魔をするわけで、俺が「Kevin」で言いたかったことは、繁殖とか永遠性みたいなものじゃなく、"一緒にいる"と感じるその感覚なんだ。「Kevin」はまさにそのことを歌った曲なんだ」とリーは誇らしげに結論付けた。

耳慣れた歌詞の世界ではないかもしれない。しかし、キャベッジ自身が普通のバンドではないのだ。リー曰くマンチェスター市にある、人口10,921人の架空の町、モスリーで結成されたキャベッジは、ザ・フォール調の曲「Austerity Languish」にある、"Days spent differentiating thieving and thriving / I'm at one with the NHS drip drop surviving(盗みと夢の違いを知った日々/出来損ないの保険でなんとか生きてる)"や、無骨でシュールな「Dinnerlady」の、"I'm a dinnerlady in a private school / where the lips are so stiff and Jack Wills is so cooooool.(俺は私立学校の食事係/学生はスノッブな奴ばかり着てるJack Willsはクーーーール)"などの歌詞でもわかるように、社会に対して物申すバンドだ。

「思いを発信できる立場にありながらそれをしないバンドを、ただただ"もったいない"と思うんだ」と、実際に学校で食事係として働いたことがあるジョーは言う。

「興味がないだけなのか、それともニッチな存在と捉えられるのが怖いのかわからないけど、聞いてくれるひとがいるのに、心のうちをさらけ出さないバンドたちの心境が理解できない」

しかし、意見を声高に叫ぶことで問題となるケースももちろん多い。「親父をファシスト呼ばわりして家から追い出されたことがある」と、なんでもなさそうにリーが言う。「俺がイギリス労働党党首ジェレミー・コービン(Jeremy Corbyn)の話をすると、親父はいつも俺をからかうんだ。ある晩、積もり積もったイライラが爆発して、『親父はファシストだ!』って叫んだ。そうしたら親父は『出て行け!』って玄関を差して叫んだんだ」

「もう家に戻ってるけどね」とリーは私を安心させようとするように付け加えた。「家の外の犬小屋にね」とオーインが冗談を飛ばす。

お気づきだろうが、彼らは怒りを募らせている。パブが閉業していくことに怒り、コミュニティが崩壊していくことに怒り、政府の予算削減によって、リーが働いていた薬物依存者・再犯者更生支援の団体が解散に追い込まれたことに怒っている。しかし——バンド名に"キャベツ"とつける彼らだ——そこにユーモアを忘れないのがキャベッジだ。

「反逆だ!」とリーは言う。「俺とオーインは、その昔ゴールキーパーだった。それがドラマーになり、何年もの友達関係を経て、"そろそろ何か一緒にやろうぜ"ってことになり、でも同じバンドにゴールキーパーとドラマーはふたりもいらないから、役回りを交代したんだ。

「"バンドやろうぜ! じゃあ俺が歌うから、お前はギターな。バンド名はキャベッジで"ってことになった。まあこの名前には様々な意見があるだろうけど」

そう、彼らには様々な意見が寄せられるだろう。彼らは、最新のマンチェスター・バンドとして話題となっているバンドなのだ。そして、彼らには地元出身バンドの影響が色濃く見てとれる。バズコックスのブラックユーモア、ハッピーマンデーズのシュールレアリスム、ザ・ストーン・ローゼズの髪型などをきちんと受け継いでいながらも、彼らのサウンドには、先達たちのどのサウンドとも似て非なるものがある。少なくとも完全に似ていることはない。

言うなれば、マンチェスターという街が持つ偉大なポップスのエネルギーを見事にとらえているバンド、それがキャベッジだ。70年代後期から90年代中盤にかけ、少なくとも2世代にわたり多くのバンドを輩出し、ポップミュージックを永遠に変えたマンチェスターという街の、偉大なるエネルギーを彼らは体現している。そしてキャベッジは今、そのマンチェスターの音楽シーンを再生する使命を課せられている。

「"みなさん、きいてください、ぜひライブにも来てください、はい終わり、気をつけて帰ってね"というようなつまらないライブはしたくない」とオーインは言う。「俺たちは、来てくれた人たちが"何かを感じた"と思えるようなライブをやりたいんだ。自分がその空間の一部になったっていう感覚を得られるようなライブをね」

Credits


Photography Debbie Ellis
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

Tagged:
MANCHESTER
cabbage
music interviews