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村上虹郎、18歳最後のインタビュー

個性派俳優の父と芸術的シンガーの母。90年代を席巻したポップスターたちは次なるジェネレーションのスターすら生み出した。村上虹郎が口笛を吹くと、まるで小鳥のさえずりのように鳴り響き、撮影でジャンプをすればその跳躍力に驚かされる。圧倒されるほどの弾け出るエネルギーを放出しながら、前につき進む虹郎を、ずっと、見ていたい。

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jun 24 2016, 1:05am

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ALL CLOTHING SAINT LAURENT.

MAIN PHOTO: T-SHIRT GIVENCY. LEFT PHOTO: ALL CLOTHING SAINT LAURENT.

このインタビューの翌日、自身の誕生日を迎える村上虹郎は10代を「俳優としての準備段階の時期」と振り返り「あと1年、いろいろなことを我慢して、吸収して、20代で羽ばたきたい」と意気込みを語った。

映画界で存在感を放ち、そのポテンシャルは誰もが認めている。しかし、彼が河瀨直美監督の『2つ目の窓』でキャリアをスタートさせてからまだたったの2年。「このまま俳優を一生やるかはわかんないです。『次、はい次』という感じでやらせてもらっているので。ただ、『自分が出ていなくても当然観る作品』って映画に出ていたいなとは率直に思います」。

柳楽優弥と菅田将暉が愛媛の松山を舞台に暴走する若者を演じる、真利子哲也監督の『ディストラクション・ベイビーズ』は、その願いを叶えた作品だ。村上は柳楽が扮する兄を探す弟役。

「誰もが嫉妬するべき作品にかかわれて良かったです。この重みや疾走感は真利子監督ならではだと思いますし、柳楽さんと菅田さんがとにかくすごい。映画には生き様が映ると思う。普通はその役しかできないはずなのに柳楽さんと菅田さんは『2人の役を入れ替えても面白いんじゃない?』と思わせるんです。僕もあわよくば、柳楽さんと菅田さんが演じた役を両方できるような俳優になりたい」。

この作品に出演したことで、様々な収穫があったという。特に印象的だったのは「焦らなくなりました」という言葉。これだけの猛者たちと共演したら焦りそうなところだが。「ちょっと上の世代に染谷将太さん、菅田さんがいて。周りから僕は『次の世代』って言われるけど、キャリアが全然違う。僕はまだ2年。あの人たちは10年くらい。おこがましくも、さすがに10年はかけていられないから、5年くらいで追いつかなきゃと思っていました。でも、この現場で、イケイケの人たちが準備万端で戦っている姿を見て、『僕はまだ準備万端じゃない』ってことがわかったんです」。

役者業について「一生やるかわからない」と言いつつも、口を開けば、「何をサボってきたんだ僕はっていう状態。芝居ができないから、どうにかしなきゃ」「映画に出たいっす。そして高みを目指したい。俳優として高みに行くことは、人生の高みに行くってことだと思うし」など、芝居と映画に対する意欲がどうしたってこぼれ落ちる。「今、うわーって喋ってますけど、こんなに口数必要ないですよね。40になった自分がこんなに喋ってたらイヤだし(笑)。でも、今はまだ10代だから話すのもありかなって。ただ、今の自分が『ダセえな』と思うような30歳、40歳にはなりたくないですね」。

感情と、思考と、固有名詞が、整理されていない状態で口から放たれ、グルーヴを生み出す。フォトシューティング中は予測不能の動きでカメラマンを翻弄し、その身体能力の高さで一同を驚かせる。心身からエネルギーを放ち、この瞬間を楽しむ彼は「限界が見たいっす。自分の限界なんてたかが知れてるんですけど、居るべき場所を見つけて、出会うべき人と一緒に限界を超えたいです」と興奮を隠さない。「身長がもうちょっとあったら海外に出て行くことも考えたと思います。でも、いかんせんちっちゃいから、日本で頑張って映画に出て、海外の映画祭に行きまくる。カンヌももう一度、日本映画と行きたいです」。

自分の資質を冷静に認識している彼は、情熱を持ち続けている音楽に関しても、「もしも映画で歌をやることになったら、僕は潔く、母親に『歌を教えて』ってお願いします。そのほうが世間的にも絶対に面白いし」と言うように、2世に与えられる特権と、つきまとうデメリットを受け入れ、ときに自分を含む家族を茶化しつつ、いばらの道を進む決意を表明する。「作品を観てもらうために、有名になることを頑張るべきなのかなって。うちの両親は、有名になればなるほど傷つく可能性が増えるから、僕に有名になってほしくないんです。でも『両親が有名になったんだから僕もなる』って思ってます。人生で、『あ、今、この人を中心に回ってるよね』と思えるタイミングが、一度でも自分に訪れてくれたら面白いなって思います。でも、今の自分は全然つまらないんで、どうしよっかなーって感じです(笑)。まずは今日の夜、誰と何を食べようかなってところが大事。自分が何かを得られる人と、自分がうまいと思うものを食べる。それを積み重ねていって、いつか世界が虹色に染まればいいなと思います」。虹郎という名前に重ねた夢を語り、自分を鼓舞し、彼は未来へと続く18歳最後のディナーへと向かっていった。

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Credits


Text Takako Sunaga
Photography Yusuke Yamatani
Styling Tatsuya Shimada at Tron
Hair and make-up Takai
Styling Assistance Misaki Kato