Quantcast

狂気的に静かな音を紡ぐ、jan and naomi

不思議な空気感をまとい聴く人の心を惹きつける注目のユニット、jan and naomi。モデルとしても活躍し、この夏はフジロックへの出演も決定するなど、静かながら彼らの勢いは止まらない。このたび、NHKのいじめを考えるキャンペーン用に書き下ろされた5曲を収録したセカンドEP『Leeloo and Alexandra』のリリースに伴い、ヤンとナオミの2人にインタビューを敢行。

Mihoko Saito

ふたりが会ったきっかけを教えてください。
Jan(以下、J):渋谷の百軒店にあるHESOというお店で知り合いました。バー&レストランで、ライブもできるような場所で、そこでそれぞれがソロライブしたり、飲んだりして、だんだん顔なじみになっていったんです。仲良くなりはじめたきっかけは、お店の人たちがやったクラブパーティがあったんですが、ちょっと酔っ払ってしまい、トイレのドアを壊してしまって。
Naomi(以下、N):ノックが強すぎて壊れちゃったんだよね?
J:よく言えばそんな感じだけれど(笑)。それでお店の人にドアを直せと言われて、朝6時くらいに半ベソかきながら直そうとしていたら、ナオミさんが登場して「どうしたんだい?」と。そんなきっかけがあってよく話すようになりました。

バンドを組むことになったきっかけは?
J:HESOが閉店してしまう日、大勢人がいたなかで潰れずに最後まで飲んでいたのが、俺とナオミさんと店長だったんです。
N:そのお店にはアコースティックギターとピアノが置いてあって、だいたい2~3時くらいになると顔なじみの人しかいなくなり、誰かがピアノを弾き始めるとそれに合わせてギターを弾き始めるみたいな雰囲気だったんですよ。その閉店する日もそんな感じで。どちらともなく音を出し始めて、EPに入っている「HESO」という曲ができたんです。
J:店長が「曲を作ろう」とコードを弾きはじめ、それに2人でメロディをつけて、歌詞もそのときにできて。まるでゾンビのようになって酔いつぶれた男たちが床に転がっているのを横目にセッションしてできた曲なんです。2時間くらいで(笑)。
N:もうお店にあるお酒全部飲んじゃおうみたいになって。ダンボールに入ったぬるいハーパー缶が何ケースもあったから、それを飲みながら。
J:その曲が奇跡的に誰かのiPhoneに動画として残っていて、店長がYouTubeにアップしていたんですよね(笑)。その後にお店を解体している半分廃墟のような場所で曲を練習して、ライブをやることになったんです。
N:せっかくいい曲ができたんだからライブやろうって。それがきっかけですね。

はじめてセッションした時の感想は?
N:ああ、俺、すごく覚えているんですよ。曲を作るときにコードを鳴らしてメロディをつけるんですけど、ヤンがまったく違うアプローチをしてきたから、すごく面白いなあと感じました。
J:俺、覚えてないです(笑)
N:でも俺もヤンにそう言われたんだよ。サビのときにメロディ乗せたら、「えー!こう行く?」みたいな。「それ面白いかも」なんて話をしながら曲を作った覚えがある。
J:そうだ、「HESO」のサビって2人がそれぞれ違うメロディと、違う歌詞を歌っているんだけど、要はその違う感じをくっつけちゃったんだよね。多少は寄り添いあったと思いますけど。

そして、自然と2人は活動し始めた。
N:HESOがなくなって、みんなが集まる場所がなくなってしまったんです。HESOに出入りする人たちと場所の雰囲気に惹かれていたので、次からはこのお店に集まろうとはならなくて。そこで出会った仲間とはSNSでつながっているけど、「次の日曜日に代々木公園でピクニックしよう!」って言ってもきっとみんな来ない感じがして。
J:「HESO」って曲も、HESOのことを歌っているわけではなくて、お店に漂っていた独特の空気感を表現しているんです。いろんな芸術分野の人たちが集まるお店だったので、メランコリックかつ文化的なバイブレーションを俺らで受け継いでいきたいなということからバンドが始まり、ライブをするときはそのお店にいた人たちが集まったりして。お店の雰囲気を移動式にしていけたら面白いなって思ったんですよね。
N:だから、音楽で何々を目指そうというよりも、俺らがライブをやって、その場所でみんなが遊んで、HESOって店を継続することを目標にしてきた感じです。例えば「Aメロ間違えたでしょ!」っていうことよりも、「楽しい」っていうことのほうが今までは大きかったです。

今までどんな曲を聴いて影響を受けてきましたか?
J:去年まではニール・ヤングが好きで、その影響が自分の中で大きいのかなと思っていたんですけど、最近自分を振り返ってみると、小さい頃に観た『フォレストガンプ』の映画に一瞬出てきたエルヴィス・プレスリーがめっちゃかっこいいなと思ってたなと。で、エルヴィスのことめっちゃ好きなんじゃないかなって。
N:ヤンは完コピできるくらい、エルヴィスが上手なんですよ。だからきっとそうなんじゃない?
J:うん、そんな気がしてきた。

それってライブでも披露したりするんでしょうか?
J:ライブというかライブが終わった後に飲んで、もう1回ギター持った瞬間にエルヴィスになります(笑)。
N:そのとき、テンション上がってるよね。
J:曲を歌うというよりはエルヴィスっぽく何かをやっている感じです。実はエルヴィスのインタビュー集がすごく好きで、音声だけのものがレコードで出ているんですが、インタビューに答えているときの声のトーンだとか、ユーモアだとか、ずっと聞いてられますね(笑)。
N:俺はそういった人は特にいないんですが、音楽を始めたきっかけはバンドからの影響ではなく、一人で宅録して完結して発表している人たち。それが誰だって言われたらまた難しいんですが、バンドを組まなくても音楽活動ができるということに触れたときに「あ、俺でもできるかも」って。バンドを組むって奇跡に近いことだと思うんですよ。しかも4人とか5人とか人数が多くなればなるほど。さらに小学校や中学校の同級生だったとか、本当に運が良かったというか、それって頑張ってもできないじゃないですか。少なくとも俺はできなかったです。そんなときに1人でやっている人たちを見て、「すげえ」って感動して。それなら俺でもやれるかもと思ってやってみたら、出来て。今、パソコンのツールがすごく進化していて、誰でも簡単に音楽をできる時代になっているじゃないですか。Macを買ったら最初から「ガレージバンド」が内蔵されているのに、なんでみんな曲を作らないんだろう? って思いながら、曲を作っていました。すごく楽しかったから、それがモチベーションになっていましたね。

他の人や要素が絡むのは苦手なタイプ?
N:はい、苦手です。バンドも何度かやっていた時期はあるんですが、すごく難しくて……。

でもヤンさんとは息があった。
N:それはさっき話した、小学校の同級生が「ダウンタウン」になった、みたいなことがようやく俺にも訪れたってことじゃないですか、ついに。

年齢差を感じさせないようなふたりの関係性が印象的です。
N:もともと、上下関係とか体育会系的な人間関係が苦手で、年下との繋がりがあまりなかったのですが、ヤンとは話していても、年の差を感じることなく、付き合える仲なんです。もし、ずっと一人でやっていたらツアー回りもどれだけつまんなかっただろうなと思うし、右も左もわからない土地で、どこに行くんだろうってなりますね。
J:そういえば、バーに置いてあった誕生日占いに、ナオミさんはソウルメイトって書いてあった(笑)。あと、Bar CALLASの功さんもそう。
N:そうなんだ。

新しいアルバムに込めた思いを教えてください。
N:本当は先にレコーディングしていた曲が6曲あったんですが、去年の秋頃にNHKの方から「いじめを考えるキャンペーンで、2~3分のドキュメンタリー番組作っているのだけれど、君たちの音楽がぴったりだから曲を作ってくれないか」と言われたんです。新しい曲でという指定があり、4ヶ月で完成させないといけなかったのですが、ライブで演奏する間もなくレコーディングに入りました。企画やメッセージ性があるものだし、すごく協力したかったのもあって、話を聞いたり映像を見たらすぐに5曲作れました。
J:ライブで1回もやらなかったものを録音するというのが初めての経験だったんです。そういった意味で1作目よりももっと若々しいというと変ですけど、生々しいというか。客観的に聴いて、いい意味での不完全さがあるような気がします。聴く人によってどう捉えるかは違うかと思うのですが。

石黒景太など、コアなアーティストたちがjan and naomiのジャケットを手掛けていますが、今回のジャケットも個性的で気になります。どのような経緯でこのデザインになったのでしょう?
N:とんだ林蘭さんという女性のアーティストに、コラージュでデザインしてもらいました。もともとヤンとジャケットの話をしているときに、タイトルをカタカナにしようというところまで決めていたんです。最終的に完成させるときに「東京アートぶっかけフェアー」で見た彼女の作品を思い出して、やっていただけたらなと思い、お願いしました。
J:曲を聴いて作ってもらうのではなく、先に、歌詞だけを渡してデザインしてもらいました。

jan and naomiの音って、ジャンルレスでエイジレス。時代に惑わされない強さを感じます。
J:俺自身も揺るぎのない強く美しいものが好きですし、そういうものって現代を生きるうえでとても大切なものだと思うし憧れを持っています。なので、そうやって表現をしていくという使命感みたいなものを持っているのかもしれません。

音楽において、jan and naomiという音楽の安定感が自然と伝わってくるので、言葉では言い表せない心地よさを感じるのかもしれませんね。
J:今って情報量が多い分、形だけが先行してしまいがちで、何も残らないものやことが多くて悲しいですよね。そんな時代の中でも、魂の奥底に共鳴することができたらいいなと、そして、共感してくれる人たちに届いたらいいなと思っています。

最後に、今夏のフジロックへの出演も決まりましたが、今の心境を教えてください。
J:いつか出演してみたい舞台だったので、アーティストとして呼んでいただけるというのが、ステージのどうこう関係なく、たまらなく嬉しいですよね。
N:大きな野外イベントなので普段より多くの人に見てもらえることを祈っています。俺らはいつもと変わらず同じスタンスでやっていくと思うのですが、それでもやっぱり「フジロック」という名前には興奮しますよね。

"Leeloo and Alexandra" Japan Tour 2016 in Tokyo
7月8日(金)
東京・ツアーファイナル
品川キリスト教会グローリア・チャペル
OPEN/START19:30 /20:00
自由席¥2,500-当日券¥3,000-
DISK GARAGE050-5533-0888(平日12:00~19:00)

[問]Bar CALLAS TOKYO
tel: 03 6883 4609
東京都渋谷区富ヶ谷2-45-21
callastokyo.com

[問]一般チケット発売中
プレイガイド: e+ http://eplus.jp
ローソンチケット 0570-084-003 Lコード:72339
チケットぴあ 0570-02-9999 Pコード:302-534

フジロックフェスティバル
7月23日(土)
http://www.fujirockfestival.com

"Leeloo and Alexandra"
Label:Hot Buttered Record
発売中
定価 ¥1,620(税込)

Credits


Interview and Text Mihoko Saito
Photography Satomi Yamauchi