CHANMINA WEARS DRESS, LEOTARD AND CORSET CHIKA KISADA. EARRINGS GARELLY. 

痛みとは美しさ:ちゃんみな インタビュー

「常に戦っていたいですね」20歳のディーヴァが向かう、その先。

by MAKOTO KIKUCHI; photos by Toki
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17 January 2019, 9:00am

CHANMINA WEARS DRESS, LEOTARD AND CORSET CHIKA KISADA. EARRINGS GARELLY. 

撮影した写真を確認するスクリーンを眺めながら、思わず「わあっ」と声をあげてしまった。
なんて強くて美しい眼差しなんだろう。耳元で光るジュエリーと相まって、彼女の意志の強そうな瞳が余計に神々しい。

現在、ラッパー/シンガーソングライターとして活動しているちゃんみな。高い歌唱力と独特なリリックセンス、華やかなルックス、強烈なキャラクター、そして圧倒的な「若さ」。彼女の魅力は一言では語り尽くせない。バラエティ番組での歯に衣着せぬ物言いも、決して奢っているわけでも演じているわけでもなく、彼女の自然体として受け入れてしまう。

韓国の血を引く彼女は、英語と日本語、韓国を操るトリリンガルで、幼い頃からK-POPや洋楽に親しんできたと言う。「最も影響を受けたアーティストは?」と聞くと「アヴリル・ラヴィーン!」と即答した。大衆的なものを好きだと素直に言えるアーティストは意外と少ない。飾らず、等身大な彼女に一瞬で惹きつけられる。

昨年2018年の10月で20歳の誕生日を迎えたちゃんみな。インタビュー終了後、「たくさん喋っちゃってすみませんでした」と彼女は言った。借り物ではない自分の言葉で、すべての質問にはっきりと受け答えをしてくれていた彼女はもう、私達が知っている「高校生ラッパー」ではない。新たなステップへと軽快に駆け上がっていく歌姫は、これから私達に何を見せてくれるのだろう。

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TOP SIRLOIN. TROUSERS GARELLY. EARRINGS ASHLEY WILLIAMS BY GRAPEVINE BY K3. GLOVES GARELLY. SHOES YELLO.

—— まずは最新曲の「Pain Is Beauty」について。最初タイトルを見た時、 “Beauty is pain.”(美しさとは痛み)と勘違いしていたんです。「履いて2分で痛くなるハイヒール」みたいな。

それよりはもっとポジティブな意味で「痛み」を使っています。私の作った曲の歌詞はぜんぶ実際の経験からきているのですが、自分にとっては嫌だったこととか辛かったことが結果的に音楽になって表れてくるんです。そういう意味で、“Pain is Beauty.”(痛みとは美しさ)。

—— 表舞台に立つ人として、周りからの評価というのも「痛み」や「辛さ」になることは多いと思います。中には聞きたくないような辛辣なコメントもあるんじゃないかなと。それに対してはどう向き合っていらっしゃいますか?

その時の気持ちを大切にするようにしています。もちろん、「批判されたって全然余裕」ってわけではなくて、そういうコメントを見た時はめちゃくちゃ嫌ですよ。でもそれが後に自分の経験となって、もっと優しくなれるということもあるので。

—— ちゃんみなさんが世に知られるようになったキッカケは『BAZOOKA!!!高校生ラップ選手権』でしたよね。ラップ文化特有の「ディス(dis)」からキャリアをスタートさせたのにも関わらず、ちゃんみなさんの曲のメッセージはいつもポジティブだなと。

私は全然、ヒップホップの歴史に詳しいわけではなくて。ただ好きで始めただけでした。「相手を蔑むのがヒップホップの文化だ」と言われたら、私は好きではないなと思います。最近は、ラッパーというよりも「ラッパー/シンガー」という肩書きで活動しているんです。歌詞をメロディに乗せて歌うのも、ラップだけの曲よりもその方が私らしいと思ったから。自分にどうしても似合わないものってあるじゃないですか。似合わないものを無理してやるのではなくて、自分ができるものをやる、「ナウ(now)」でしか書けないものを書く、それを意識しています。

—— 「似合わないものを無理してやるのではなく、似合うものを」というのはファッションにも共通しているのでしょうか。さっきも撮影の際に「淡い色のリップより、ダークリップがやっぱり落ち着く」とおっしゃっていましたね。

そうですね。ただ、ファッションに関しては「これは似合わないだろう」と分かってはいるけど、やってみたいなあと思うものもあります。「透明感」って言うんですかね? ほとんどスッピンで、アイメイクだけ真っ黄色で、頬から鼻の辺りにそばかすがバーってあるような、ああいうのちょっとやってみたいなあと。まあ、結局できないんですけど(笑)。

—— それはかなり意外でした。ちゃんみなさんって、すごく好き嫌いがはっきりしているイメージがあるんですよね。お買い物も即決即買い、みたいな。

それが、そうでもないんですよ! 日によって体型が変わるし、お尻を鍛えているっていうのもあって、ボディシェイプに合う服を見つけるのが本当に難しい。日本のブランドの洋服ってかなりお尻が小さくつくられているから、かわいいと思って選んだものでも試着してみないと分からない。買い物にはいつも時間がかかりますね。

—— ちゃんみなさんのカーヴィな体型はすごく魅力的ですよね。ここ数年、女性の「美」を定義するものが変わってきているというか、広がってきている、という感覚があります。「美」の定義について思うことはありますか?

私は「スレンダーな女性が綺麗だ」というのは分かるんですよ。昔から「デブ」って言われて生きてきているので。高校生の時もクラスメイトの男子に「おい、デブ」とか「ぷーちゃん」とか言われていました。だから確かにスレンダーなりたいなとは思う。でもたぶん無理なんですよね。それを受け入れてからは、自分の体型をうまく見せられるファッションをしようと思うようになりました。自信満々というわけではないから、スッポンポンで外に出されたら痩せている女の子達に太刀打ちできないと思ってしまうけれど、自分に似合う服を着ている分には胸を張っていられるんです。彼女達が持ってないものを私は持っているし、私にないものを彼女達は持っているし。ビューティ・スタンダードに意味なんてないんじゃないかなって思うんです。人によっても場所によってもぜんぜん違いますし。日本だったら細身で小柄な人が「可愛い」と言われるけど、アメリカだったら胸やお尻が大きい人が魅力的とされることも多い。今の20代の日本人女性の一日の摂取カロリーは、戦後より低いらしいですけど……。

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LEOTARD SIRLOIN. SUNGLASSES GARELLY.
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LEOTARD SIRLOIN. TIGHTS FACETASM. SUNGLASSES GARELLY. SHOES YELLO.

—— 昨年9月にリリースされている楽曲、「Doctor」についてもお聞かせください。MVが印象的でしたが、あれはどうやって制作されたのでしょうか?

あの世界観自体は、わたしが高2のときに見た夢の記憶から来ているんです。それを「怖くてカラフルで」っていう曖昧な言葉で監督さんに伝えたら、本当に忠実に再現してくださって。振り付けはDoctor Swagというチームが手掛けています。名前もスタイルも「Doctor」にぴったりで、迷わずオファーしました。サビの肩を振る振り付けは曲が完成する前の段階から、アイディアとしてあったので、それは採用してもらいました。楽曲よりも先にMVのイメージが出来上がっていたんですよね。

—— 普段の作曲のプロセスも、ビジュアルから入っていくことが多いですか?

ほとんどそうですね。自分の中にあるビジュアルを広げていってから曲を形にしていって、最後にリリックをのせる、というパターンが多いです。ただこれは本当にその時のプロデューサーさんにもよりますね。私の曲達は、私一人で作っているわけではないので。それでも、最初のインスピレーションというものはいちばん大切にするようにしています。

—— 他のアーティストの音楽からインスパイアされるということもあるのでしょうか?

前はそういうこともありました。「こういう曲を作りたい」というところから曲を作り始める、みたいな。でも最近はそれだとうまくいかないんです。音楽ってちゃんとした測りがないじゃないですか。「ここは12センチで」って言うみたいに具体的な説明ができたらいいんですけど、結局「あの時のあの感じで」とか「雲の上に自分がいるような」とか、抽象的な感覚でしか説明できないから、曲もなんとなくアバウトな感じになってしまう。

—— 確かに新曲「Pain Is Beauty」然り、今のちゃんみなさんの音楽からは的確なメッセージが伝わってきます。

去年、20歳になったというのは関係しているかも知れません。一生ハタチになんてならないと思っていたし、大人ってもうちょっと大人だと思っていたんです。落ち着いていて、そう簡単には傷つかない。でも実際に20歳になってみると、なにも変わらないんですよね。24時になった瞬間に、渋谷の歩道橋の上で「かかってこい世界」って叫んで。

—— 「高校生ラッパー」という肩書きでメディアでの露出が多かったちゃんみなさんには、あえて若さを武器にしているという印象がありました。20歳になった今、年齢をどう捉えていますか?

若さを武器にしていたのは、その時にしか書けないものを描きたかったからなんです。10代を過ぎちゃったら「未成年」なんて曲は書けないですし。「Pain Is Beauty」は20歳になった今だから書けた曲。21歳になったらまたその時にしか書けない曲が生まれるんだろうなって思います。曲と一緒に私も歳をとっていきたい。

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DRESS, LEOTARD AND CORSET CHIKA KISADA. EARRINGS GARELLY.

—— 10代という枠組みを降りることでの怖さ、みたいなものは感じませんでしたか?

たしかに、音楽業界に限らず、20歳を過ぎると急に「新人枠」に入れられてしまうというのはありますよね。「新人」として、同じ土俵にあがってきた若者に対して、上から接してくる人もいます。でも、時代は若い人達が作るんですよ。流行語だって作っているのは若い人達。だからそういう大人には「どいてな!」っていう気持ちでいますね。それしかないです。

—— いいですね!「どいてな!」って。ちゃんみなさんを見ていると、歳をとることにポジティブになれそうです。

超ポジティブです。だってめっちゃ素晴らしくないですか? 女性は30代でいちばん綺麗になって、40代で色気が爆発すると言われていて。50代になったら可愛いおばあちゃんになる準備がしたいし、どれだけ変化できるんだろうって考えるとワクワクするんです。今だって「21になった、22になった、何歳で結婚するんだろう、子供は持つのかな」とか、そういうことを考えるがすごく楽しいし。

—— 楽しんで歳を重ねていくことができるのは、素敵なことですよね。では最後に、今後やっていきたいことがあればお聞かせください。

K-POP歌手が、日本語バージョンで歌を歌うことがあるじゃないですか。そういう歌詞って、元の韓国語が無視されていることが多い。韓国語がわからない人が歌詞を作っているのかもしれないけれど、私だったらもっと上手くできるのにって思うんです。私が最初に好きになった音楽であるK-POPに対して、貢献したいなという思いがあります。あとは……常に戦っていたいですね。今のネット社会って感情の沸点が低くなっている気がします。それを放って置いちゃだめだと思うんですよ。言われる筋合いのないことも言われなくちゃいけないなんて、そんなのおかしい。女性のステータスだってそう。誰がいちゃもん付けようと、全ての女性が自分を美しいと思えるように、私も何か行動したいなと思っています。自分が提示したいことや学んだことを伝えていきたい、これは今の私がいちばん強く思っていることです。

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Credit


Photography TOKI.
Styling Risa Kato.
Hair and Make-up Yuko Nozaki.
Text Makoto Kikuchi.
Styling assistance Moto Ishizuka.