2018年を象徴するファッションモーメント20選

黒一色のゴールデングローブ賞から、メットガラで祈りを捧げてしまいそうになった教皇リアーナ、ヴァージルのLouis Vuittonまで。2018年を振り返るのにふさわしい20の瞬間(もちろんスキャンダルも!)。

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07 January 2019, 3:26am

2018年 — 英国ソールズベリーのレストラン〈Zizzi〉が、神経剤ノビチョクの痕跡が残っている、として休業に追い込まれた年。〈Yanny/Laurel〉問題があった年。リンジー・ローハンがミコノス島で踊っていた年。クロアチアがW杯で大健闘を見せ、ついに音楽フェス以外で注目を浴びた年。みんながみんな、勝手に他人の星占いをしまくっていた年。〈Gym Kardashian〉、そして踊るテレーザ・メイ首相のミームが流行った年。ミームといえば、蛾のミームも2018年。誰もが試したであろう〈Google Arts & Culture〉のセルフィーも2018年。オバマ夫妻が伝統を打ち破り、アフリカ系米国人画家2名の手による、鮮やかでカラフルな公式肖像画がお披露目されたのも、そのバラク・オバマの肖像画と植木のなかに埋もれるホーマー・シンプソンを比較するミームが登場したのも2018年だ。2018年を3ワードで表すとしたら、〈Big Dick Energy(巨根パワー)〉。2ワードなら〈Wakanda Forever(ワカンダ・フォーエバー)〉。1ワードなら〈Woke(ウォーク)〉。

そう、2018年は、世界が目を覚ました(woke up)年だった。メーガン妃が今年の英国ファッション・アワードで言及したように、今やファッションでも「優しいのがクール」。「冷たいのがクール」だったかつてとは違い、ランウェイにも思想が表れた。性暴力と人種差別が表面化し、ショーや広告キャンペーンには多様化が求められ、大手ラグジュアリーブランドはファーの廃止を進め、US版『Vogue』9月号では、史上初めて黒人カメラマンが表紙写真を担当した。ポップカルチャー好きのティーンエイジャーたちがSupremeのコラボに長蛇の列をつくった年でもあった。そしてヴァージル・アブローのLouis Vuitton。Balenciagaの人気ミーム。ロイヤルウエディングに参列したケイト・モス。エリザベス女王のファッションショー鑑賞!

今や、ファッションは衣服だけの話にとどまらない。2018年のファッションモーメントを総ざらいしよう。

黒一色のゴールデングローブ賞
〈#MeToo〉が登場したのは2017年だったが、それが世界にはっきりと認識されるようになったのは2018年だろう。第75回ゴールデングローブ賞の授賞式で、全ての女性参加者が黒を身に着け〈Time's Up(もう終わり)〉を叫んだのは今年の頭だった。そこでオプラ・ウィンフリーが述べたスピーチは全てを総括するもので、実に感動的。あの会場の様相は、世界のお歴々が集まる重要会談さながらだった。

エリザベス女王、ロンドン・ファッションウィークご鑑賞
女王がファッションショーを鑑賞するなんてそうあることではない。フロントロウに座る女王の姿には、誰もが驚いただろう。女王陛下は、ベルベットのクッションが敷かれた椅子に腰掛け、アナ・ウィンターの隣でRichard Quinnのショーをご覧になった。陛下の〈バルモラル・ルック〉にオマージュを捧げるヘッドスカーフと、〈God Save The Queen(女王陛下万歳)〉をもじった〈God Save The Quinn(クイン万歳)〉というスローガンが書かれたTシャツをまとったモデルが前を横切ると、陛下は笑顔を見せていた。陛下はただ気まぐれにショーに現れたわけではなく、デザイナー、リチャード・クインに〈英国デザイン・クイーンエリザベス2世賞〉を直々に授与するためのご鑑賞だった。ロンドンの新星デザイナーにとってはこの上ない栄誉である。

ビヨンセ、コーチェラ・フェスティバルに降臨
我らがビヨンセは4月のコーチェラで、自らが現在の地球上で最高のパフォーマーであることを証明した。それだけじゃない。彼女は、まさに2018年らしい〈Z世代イエロー〉の人気に火をつけた。ステージではDESTINY'S CHILDの再結成や、妹ソランジュとのほほえましい絡みを見られたが、みんなの注目を集めたのは、バスビー・バークレーも真っ青のド派手な、オールイエローのプロダクション。ビヨンセが着ていたBalmainのフーディから、200人を超えると思われるブラスバンド奏者、シンガー、ダンサーたちの衣装までが、2キロ先からも確認できるであろう鮮やかなイエローだったのだ。さらに彼女は、ネフェルティティにも扮していた。もうひとりの女王、ここにあり!

Prada復活
Pradaというブランドと、その母、ミウッチャの不朽の魅力は、今更語らずとも誰もが知っているだろう。しかし2016年、ちぐはぐな値付け構造と、2000年代中頃以来続いていた高級化の方針の立て直しに奮闘していたPradaの業績は悪化し、売上高は前年比10%減。そんなPradaを救ったのもやはりミウッチャだった。時代の流れに敏感な彼女は、懐かしさもありながら、現代のストリートウェア人気にも目くばせしたアイテムを発表。2月、Pradaを象徴する赤いラインが印象的な〈リネア・ロッサ〉再ローンチに始まり、Pradaの三角プレートが付いたブラックナイロンの復活、カルト的人気を誇る過去コレクションの炎、バナナ、リップスティックの再登場が続いた。そしてPradaは見事に復活し、Pradaグループの2018年度上半期の売上高は15億ユーロ(約1900億円)。昨年同時期の売上高と比較すると9%アップし、経済アナリストの予想を覆した。

多様性がランウェイの必須条件に
2019年春夏コレクションのショーは、ファッション史上もっとも多様なショーとなった。〈The Fashion Spot〉のシーズンレポートによると、人種の多様性レベルはこれまでで最高を記録し、各都市のショーにキャスティングされたモデルのうち36.1%が有色人種だった。2018年秋冬コレクションと比べると3.6%増だ。今や、アドゥ・アケチ、ヒュンチ・シン、ヒー・コン、ソラ・チョイなど、トップモデルの半数が有色人種だし、2月にはスーダン出身のアノック・ヤイが、黒人モデルとしては1991年のナオミ・キャンベル以来初となるPradaのオープニングモデルを務めた。Comme des Garçonsは、20年以上の歴史のなかで初めて黒人モデルを起用。Balenciagaは、ジャマイカのSaint Internationalに所属する8名のジャマイカ人新星モデルを起用した。身体やジェンダーについても、かつてないほどの多様性が表れていた。

メーガン妃、Givenchyオートクチュールのウェディングドレスを着用
メーガン・マークルは、英国王室の歴史を様々な点で更新した花嫁だ。彼女は混血であり、女優であり、離婚歴がある。しかも米国人だ。そんな彼女が、型破りなウェディングドレスを選ぼうとも驚きではない。そして実際、彼女が選んだのは、クレア・ワイト・ケラーが手がけるGivenchyのオートクチュールだった。確かにワイト・ケラーは英国人だが、Givenchyは英国ブランドではない。まさかのチョイスだった。

ヴァージル・アブローのLouis Vuitton
ヴァージル・アブローがLouis Vuittonのアーティスティックディレクターに就任し、世間は沸いた。Off-Whiteのストリートウェアを愛するファンは喜んだし、次々と繰り出されるコラボレーションもすばらしかった。黒人男性が世界的に名声を博し、LVMHグループを代表するブランドの責任者に任命されたことは、多くの有色人種にとって歓びだった。彼は今年6月、〈The Vocabulary According To Virgil Abloh(ヴァージル・アブロー的語彙集)〉と題されたショーでLouis Vuittonデビューを果たした。ショーを締めくくったのは、彼と親友のカニエ・ウエストが抱き合って涙する、感動的なシーンだった。

キム・ジョーンズのDior
ヴァージル・アブローがLouis Vuittonに、クリス・ヴァン・アッシュがDior HommeからBerlutiに、そして椅子取りゲームのようにLouis VuittonからDiorに移籍したのがキム・ジョーンズ(そして彼はDior Hommeの〈Homme〉を取った)だ。彼もヴァージル同様、今年6月にDiorにおけるデビューコレクションを発表した。花でつくった巨大なKAWSのテディベアを中心に据えたショーでは、エレガントなテーラリング、デニムのモノグラム、男性用の実用的なサドルバッグ、AMBUSHのYOONがデザインしたジュエリー、ALYXのマシュー・ウィリアムスがデザインしたバックルが登場。パリのアトリエ、Lemariéのフェザーが全体に刺繍されたシャツもあった。まさにDiorの新たな夜明けを宣言したショーだった。キム・ジョーンズはDiorを変えていく。

プラダを着た教皇、リアーナ
「罪深きゴージャスさ!」「ファッショニスタの聖人や罪人!」「オー・マイ・ガリアーノ!」。今年のメット・ガラに関連したジョークや見出しは数え切れない。メトロポリタン美術館のコスチューム・インスティテュートで開催された企画展〈Heavenly Bodies(天国の肉体)〉。アンドリュー・ボルトンがキュレートし、カトリックに影響されたファッションをテーマにしたこの展覧会のオープニングを飾ったのが、今年のメット・ガラだ。アナ・ウィンターが主宰を務める、年に一度の資金集めイベントは、ハリウッドと上流社会、ファッションと舞台芸術、音楽と美術館の後援者が交差するファッションの祭典であり、セレブにとっては、ヘッドピースや長さ3メートルのケープを身に着けるための最高の言い訳だ。今年のメット・ガラを制したのはやはりリアーナ。Maison Margiela 〈アーティザナル〉のアイテムを着用し、展覧会でフィーチャーされたジョン・ガリアーノの豪華絢爛なルックにオマージュを捧げた。

メラニア・トランプは〈どうでもいい〉らしい
メラニア・トランプはファーストレディでありながら、実はコメディアンなんじゃないだろうか。奇妙なファッションセンスで炎上を誘発しているのも、冷ややかな皮肉(の不思議な一形態)なのでは。それとも、あのZARAのジャケットの背中に書いてあったとおり、まさに〈私はどうでもいいんだけど?〉という感じなのだろうか。トランプ夫人のファッションが話題になった場面は今年だけで何度もあるが、どれも褒められたものではない。前述のZARAのジャケットなんて、移民収容所に向かうさいに着用していたものだ。また、テキサス州のハリケーン・ハービー被災地を訪問したさいのスティレットヒール、ケニアでかぶった植民地時代のピスヘルメット、エジプトでの名探偵ポワロ風ファッションにも批判が浴びせられた。さらに彼女は、中国でDolce & Gabbanaの人種差別問題が話題になった直後にDolce & Gabbanaを着用していた。

ファッションのおとぎ話、映画『クレイジー・リッチ!』
今年成功した大作映画のなかでも大穴だった『クレイジー・リッチ!』。主要キャストがアジア系で占められた作品で、大手スタジオ製作のラブコメ映画としては、この9年で最高収入を叩きだした。衣装もDiorやらMissoniやら、高級ブランドのオンパレードで最高。散財をこの上なくきらびやかに賛美する作品だった。

Balenciagaミーム
もはや説明不要だろう。ファッションミーム・マスターの@hey_reillyの才能が生み出した最高のミームだ。

クチュールを寿ぐValentino
ファッションモーメントというものは、眼前に繰り広げられるその瞬間からわかるものだ。
今年7月のValentinoのクチュールショーは、私の人生のなかでも最高のファッションショーだった。ショーのあと、私はこう記した。「終わりのない否定的な言説や、大物から新人まで、デザイナーたちの目に余る剽窃、そして全体的に心のこもっていない、なんの刺激にもならないストーリーが溢れ、ハイファッションが輝きを失いつつあるこの時代。そんな今の時代が、まさに必要としていたショー」。あのショー以来、Valentinoのアイテムはレッドカーペットを席捲しており、今年12月の英国ファッションアワードでは、ピエールパオロ・ピッチョーリがデザイナー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。

ジョン・ガリアーノのポッドキャスト
伝説のデザイナー、ジョン・ガリアーノがラジオのパーソナリティとしても優秀だとは、予想だにしなかった。Maison Martin Margiela〈アーティザナル〉初のメンズラインの発表に合わせ(ちなみに彼は〈アーティザナル〉を〈アーティス・アナル〉と発音する)、ガリアーノは今年6月に自らのポッドキャスト『The Memory of… With John Galliano』をスタート。彼がゆったりした口調でささやく〈mercurial oil〉や〈noblesse〉などといった単語の響きは官能的で、まさにファッション界のASMR!

タイラー・ミッチェルがUS版『Vogue』9月号で表紙撮影を担当
今年8月、タイラー・ミッチェルは、『Vogue』の125年の歴史で初めて表紙を手がけた黒人フォトグラファーとなった。ビヨンセをモデルに、弱冠23歳の彼が歴史に名を刻んだ。i-Dでは長らくコントリビューターとして活躍してきたフォトグラファーだ。

Chanel、Versace、Micheal Kors、Burberry、Gucciがファー廃止
2018年はリアルファーがファッション界から消えた年として記憶されることだろう。総額3000万ポンド(約45億円)相当の在庫を焼却処分していたことが判明したBurberryや、Chanelを含む複数の大手ラグジュアリーブランドが、ファー使用の廃止を約束した。全てのブランドがリアルファー廃止の道を進むべきなのか、フェイクファーは実は環境に優しくないのではないか、などという重要な疑問も提起された。議論は続いている。

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広告にコリン・キャパニックを起用し〈Just do it〉を体現したNike
かつてサンフランシスコ・49ersに所属していた人気NFLプレーヤーのコリン・キャパニックは、2016年、警察による人種差別に抗議して国歌斉唱中に起立を拒否し問題視された。警察によるアフリカ系米国人の殺害を世間に訴えるための彼のこの行動を、チームメイトは支持したが、ドナルド・トランプは批判。49ersとの契約も更新されず、彼は実質的にリーグを追放された。今年、そんな彼がNikeの広告キャンペーンに起用され、世間を驚かせた。広告では、彼の顔にかぶせてこんな言葉が記されている。「Believe in something. Even if it means sacrificing everything.(何かを信じろ。たとえ全てを犠牲にするとしても)」。レブロン・ジェームズやセレーナ・ウィリアムズなど有名アスリートもこの広告を支持し、Nike社の収益は増加した。

故人たち
今年はジュディ・ブレイム、ユベール・ド・ジバンシィ、マイケル・ハウエルズ、アナベル・ニールソン、アンナ・ハーヴェイを始めとするファッション界のレジェンドたちが多数鬼籍に入った。お悔やみ申し上げます。

フィリップ・グリーンと〈#MeToo〉
Topshopのオーナー、フィリップ・グリーンがセクハラ/性的いじめ疑惑で非難の的となった。しかしいまだに何も解決しないままだ。〈Time's Up〉の実現を祈ろう。

Dolce & Gabbana、苦境に陥る
ステファノ・ガッバーナは嵐を呼ぶ習性があるようだが、今回の嵐は致命的だった。始まりは、ブランドの上海でのショーの宣伝動画。中国人モデルが苦労しながら箸でスパゲッティやピザを食べる、というその動画は、Instagramアカウント〈@diet_prada〉の指摘をきっかけに、人種差別だと批判された。その批判意見に対し、ステファノのInstagramアカウント(本人はアカウントが乗っ取られていたと主張)からこんなDMが届く。「今後は、世界のどこで受けるインタビューでも、💩な国は中国だ、って答えるよ」。さらに彼のアカウントはDMで、犬を食べる中国人を糾弾し、中国人を「無知で汚く、臭いマフィア」と侮辱した。このメッセージはすぐに拡散され、特に中国国内から批判が殺到。Dolce & Gabbanaの商品を燃やしたり、トイレ掃除に使う動画が広まるなどした。ブランド側は上海のショーを中止。この騒動をきっかけに世界的な取引先をいくつか失うなど損失も大きい。2019年ブランドはいったいどうなるか、注目を集めている。

This article originally appeared on i-D UK.