Photography by Gina Nero

若いムスリム女性でありながら、ボクサーであるということ

ショートフィルム『Solibet』で、16歳の女学生でボクサーのラフマが自らのアイデンティティを定義する。

by Julie Fenwick; translated by Ai Nakayama
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24 October 2018, 8:54am

Photography by Gina Nero

若いムスリム女性のラフマ(Rahma)は、周りから自分のアイデンティティを定義されることに慣れている。「ムスリム女性は自分の行動を自分で決められない、というイメージがメディアで拡散されているけど、それは完全に間違ってます」。メルボルンを拠点とする映像作家ティグ・テレーラ監督の最新ショートフィルム『Solibet』の主人公として、16歳の女学生でボクサーのラフマは、自分で自分を定義するチャンスを得た。

「『Solibet』で実現したかったのは、他者への攻撃を明らかにすること、攻撃への対抗手段を、しかも美しい手段を構築すること」と監督は説明する。今回、撮影監督ジェシー・レーンと組んだテレーラ監督は、Instagramでボクシングをするラフマのショートビデオを観て彼女を抜擢した。監督はラフマについて、ムスリム女性をエンパワーし、世間から押しつけられる期待に逆らうことのできる、完璧な主人公だと太鼓判を押す。ラフマも、同じ理由でこの話に惹かれたという。「私はこの社会で見くびられていますし、そもそもムスリムは忌み嫌われています。だけどこのプロジェクトに参加すれば、私が強い存在だとみなされていない社会において、この〈強い〉スポーツと私は一体化する。監督と話をしながらそう考えました」

オーストラリアのエジプト系ムスリムの家庭に生まれ育ったラフマは、西洋と中東の影響下で暮らす自分にとって、アイデンティティは重要な問題だと主張する。しかし狭間を行くことは、ときに複雑だ。「私はエジプト人でもあるし、オーストラリア人でもあると感じています。でも、私の深いところにあるエジプト人のルーツは、絶対に隠さなければならないと思ってました。だって、誰も理解、共感してくれませんから。でも、今はエジプトに暮らしていないし、出自のせいで意見も考えかたも違うから、私はエジプトにいたって生粋のエジプト人にはなれないんです」

ジンバブエに生まれオーストラリアで育ったテレーラ監督自身、アイデンティティと折り合いをつけることに関心をもっており、つまりふたりは同じようなバックグラウンドを共有している。「人種的なアイデンティティにまつわる自分の経験は、自分の映像作品でキャスティングする人、すなわち自分の映像作品でエンパワーする人の選びかたに大きく影響しています」

ラフマは作品の主人公として、この多文化社会の新しい見方を教えてくれる。彼女の存在は、自分のアイデンティティがデメリットではなくエンパワーメントをもたらすことを示す、ひとつの好例だ。「私のアイデンティティは一筋縄ではいきませんが、結局、私はエジプト人でオーストラリア人、それだけなんです。私は、育った場所については恵まれていると思っています。自分はよそ者だと思うのではなく、自分の文化を大切にしていい、と教えてくれた場所です。確かにいまだに差別は経験しますが、それが私に影響したことはこれまでないですし、これからもないでしょう」

ショートフィルム『Solibet』は以下で視聴可能。

This article originally appeared on i-D AU.