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世界滅亡後に遺るもの:ディオール 2020春夏 メンズ

「未来について考え、未来のDIORのショーについて想像してみた。自分のつくってきたもので、未来に遺るものは何か、と」——キム・ジョーンズ

by Steve Salter
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28 June 2019, 4:41am

Photography @mitchell_sams

DIORメンズウェア部門のアーティスティック ディレクター就任以来、わずか8カ月で3シーズンの見事なコレクションを発表してきたキム・ジョーンズ。就任1周年を祝うコレクションでキムは、DIORの未来における自らの立ち位置を想像した。

「未来について考え、今から50年後のDIORのショーについて頭に描いてみたんです」と、彼は6月21日に行われた2020年春夏コレクションのショープレビューで語った。「そこからおのずと、未来に遺る自分の作品は何か、という問いに繋がりました」。

シルエット、技術、素材、美学など、DIORクチュールのレガシーに見いだせるブランドの姿勢や〈らしさ〉を立脚点とし、現代に合わせてそれらを再提示したコレクションは、当然未来に遺るアイテムばかりだ。

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気候変動の問題が深刻化し、人類滅亡が現実味を帯び始めた今、多くの人気デザイナーのコレクションの根底に、実存的不安や終末の日を目前にした無力感が流れているのも無理はない。くすんだピンク色の、ディストピア的な不毛の地を思わせるDIORのショーの会場にも、まさにそんな雰囲気が漂っていた。

またロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)で開催され、ロンドンの美術館の来場者記録を更新した「Christian Dior : Designer of Dreams (クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ)」展の期間中にデザインされたという事実も、今回のコレクションと無縁ではない。会場では、過去と現在と未来がダリの〈記憶の固執〉のように融け合う。キムは、分野を横断する活動を行い、〈現在の考古学〉を思考するアーキテクチュラルな歪んだデザインやインスタレーションで知られる米国人アーティスト、ダニエル・アーシャムとコラボレーションし、自らのレガシーをキュレーションした。

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今回のショーでキムとダニエルは〈遺されたもの〉という概念を掘り下げると同時に、全てのクチュールメゾンが受け継いできた、もはや人格をもつともいえる〈命〉を探究した。ショー会場の外に飾られた巨大ロゴから、クリスチャン ディオールのオフィスに飾られた印刷物まで(すべて幾何学的な素材を用いて再構成されている)、ふたりは数千年後のDIORの姿を想像した。今回のショーは、DIORは人類が滅びても遺り続ける、と表明するかのよう。

DIORは常に進化を続け、さりげなく、しかし抜本的な変化をファッションにもたらし、ファッションを未来へと前進させるブランドであると同時に、常に過去にも目配せしている。今回、そのブランドの精神から外れることなく、キムは過去のDIORの〈亡霊〉たちを丁重に扱った。パリにあるクリスチャン ディオールのアトリエで、歴代のデザイナーたちの頭上で時を刻んでいた時計。その針は取り去られ、時計本体がダニエルによってクリスタライズされた。そこには、過去と現在と未来が共存している。

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しかし、キムにとってそれは、今回に限ったことではない。「僕はDIORのデザイナーだけど、何よりもDIORのために働いているんです」。去年、デビューコレクションのアトリエでのプレビューで、彼はそう説明した。「まずDIORありき。僕はそれを、僕なりに解釈する。エレガントで洗練されていてロマンティック。それがDIORです」

「結局、みんなが見ているのはDIORというブランドなんです。DIORを率いてきたデザイナーたちではない」マリア・グラツィア・キウリはV&AのDIOR展でそう謙遜した。「イヴ・サン=ローランからラフ・シモンズまで、すべてのデザイナーたちが、創設者や、ブランドの作法を自らのやりかたで参照しつつ、それでいてなお自分の味を加えたデザインを考案してきました。でもそれを見いだすことができるのって、ファッション史家やファッションマニアくらいですよね」

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2020年春夏メンズコレクションでキムが披露した進化は、いつの日か考古学的遺物になるだろう。サテンサッシュがボディをクロスするようにあしらわれたテーラリング、再解釈された〈サドル〉バッグ。また、2000年秋冬コレクションでジョン・ガリアーノが発表したアイコニックなニュースペーパー プリントを蘇らせたり、ボンバージャケットやジャンプスーツにトワル ドゥ ジュイを用いたり。キムは常にクチュールの過去作品に戻っては、さながら『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のごとき自身のヴィジョンをかたちにしている。

また今シーズン、ドイツのラグジュアリー トラベル ラゲージ メゾン、RIMOWAとの初のコラボが実現(最近キムが同社のキャンペーンに抜擢されたばかりだ)。RIMOWAを象徴するアルミニウムボディ、そしてDIORのアイコニックな〈ディオール オブリーク〉と技術力が融合したユニークなカプセルコレクションとなっている。特にバックパックとシャンパーニュケースは、ランウェイで圧倒的な魅力を放っていた。

地球滅亡に直面するときには、クーラーボックスにシャンパーニュを入れて、外で乾杯したっていいはずだ。火の海に包まれた世界で、キム・ジョーンズとDIORにグラスを捧げよう。現在の、そして未来の偉人と、偉大なるブランドに。

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Credits

Photography Mitchell Sams.

This article originally appeared on i-D UK.

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