デザイナーYOONが語る、感情的でリアルなものづくり「ハイファッションのシステムが時代に合わなくなってきた」

i-D Japan no.6 フィメール・ゲイズ号に掲載された、デザイナーYOONのインタビューを公開。「世界で起きている事象は対岸の火事ではなく、それらはすべて日本にも影響する」

by yuka sone sato; photos by Fumi Nagasaka
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25 January 2021, 11:17am

この記事は『i-D Japan No.6』フィメール・ゲイズ号から転載しました。

6月23日にパリで行われたDIORのメンズ2019サマーコレクションのファッションショー。KAWS作品のシグネチャーでもある大きなBFFのモニュメントをしたがえてブランドが新しい航海に乗り出した記念すべき瞬間、新アーティスティック ディレクターのキム・ジョーンズに手を取られてYOONはランウェイを走り抜けた。

自分としては何も変わらない反面、周りの反応が大仰になることに戸惑いつつも、「でも冷静に考えるとわかるんですよね。アジア人の女がそんなポジションになるとは誰も予想していなかったと思うから。でもそれは私だからということじゃなくて、頑張れば誰でもできること」と冷静に話す。

同じシーズン、キムの古巣であるLouis Vuittonではストリートシーンを背景に持つヴァージル・アブローをメンズ アーティスティック・ディレクターに迎え、新たなる船出を祝った。ビッグメゾンが大きく旋回し、パリ・メンズコレクションにとって歴史的なシーズンとなった2019年春夏。昨今の文化的変容が多方面において顕著にあらわれ、ビッグメゾンもその流れに迎合せざるを得なかったと彼女は捉えている。

「ハイファッションのシステムが時代に合わなくなってきたと思うんですよね。ブランドが人びとの欲する魅力に欠くことはないけれども、ものづくりそのものがコネクトしていないと消費者がほしいとは思わない。現代は、感情的なつながりがモノに反映されていて初めて動く時代だと感じています。リアリティが必要なんです」

韓国人でありながらアメリカで育ち、日本をベースとして活躍するYOONは多様性のなかで自己を確立すべく自らを鼓舞し続けてきた。彼女にとって、昨今のファッション界の流れは「ある意味、自分は間違っていなかった」と答え合わせをしているような感覚だと言う。

「以前、他人にもっと私と真剣に向き合ってほしいといつも願っていたんです。だけど、誰かに受け入れられるためとか、誰かを喜ばせるために何かをやるのが馬鹿馬鹿しいと感じるようになりました。私がやりたいようにやればいい、口紅をつけてデザインをしたかったら口紅をつけようと。ショーのフィナーレでさえ、5インチのヒールにTシャツという、バックステージ作業姿のまま走った。大切なのはどう見られているかではない。私は自分のやるべきことをする、それまでです」

そのスタイルの強さから注目を浴びてきたYOON。カニエ・ウェストをはじめ多くの著名人と国際的な交友を独自に広げ続け、2015年にはBOFが発表する「ファッション界を変える世界の500人」への選出、17年にはLVMHプライズのファイナリストに、そして19年夏シーズン、DIORのメンズアクセサリーデザイナーとしてその位置を揺るぎないものとした。女性が抱える問題にも疑問を投げかける。

「女性は偉大な業績を成し遂げたとしても「でも彼女は見た目がよくない」などと一蹴される場面をよく目にします。成功している男性はその見た目にかかわらず、シンプルに業績を評価されますよね。見た目重視の価値観が根づいた社会が根底に抱えている問題でもあると思います。しかし、女性でよかったと思うのは男性よりEQ(感情指数)が高いこと。他の人がどう感じるかに目を向け、相手の立場で考えられるということは、デザイナーとして仕事をするうえで非常に有益だと感じています」

猛スピードで変化を続けるこの社会において、いま最も必要とされるのはなんだろうか。「オープンマインドでいること」だとYOONは話す。

「成長するためには勉強し続けるのみです。自分を過信せず、他人や異文化から学び、彼らの生徒であるという意識を持つことが必要です。気づき、周りの状況がわかって初めて、少しかもしれないけど身の回りを変えることができ、やがて自分が社会に何ができるかを見いだせるようになる。仕事をするなかで、中国人を雇用している日本の工場をよく見かけます。それは決して悪いことではなくて、むしろ彼らはこの国の成長を助けている。彼らを受け入れこの国を元気づけるために一緒に頑張ることが必要です」

「もっとオープンマインドにならないと、この国は現実的に衰退してしまう。そして、これからの戦力になるのは、今の10代・20代であるということに気づいてほしい。20年後に家族を持ってビジネスを動かすのは彼らなんです。心を開いて多様性を受け入れ、世の中を動かす自覚を持つべき。今や世界はどんどん小さくなっていて、大阪への日帰り出張もパリで会った人にNYで再会することも当たり前です。世界で起きている事象は対岸の火事ではなく、それらはすべて日本にも影響すること。それに気づくために、もっと目を開いて人とつながってほしい。SNSの30分をニュースに変えて勉強をしてほしい。彼らにはそのパワーがあるから」

私たちは現在、価値観の大きな転換期を生きている。固定観念を取り払い、新たな考え方や審美眼を獲得することが求められている。そのなかにあって、YOONは私たちにインスピレーションを与え、力強いロールモデルとして進むべき道を示してくれている。

「私たちは女性の平等な立場のために闘っています。でも女性であることは、私たちの選択ではなく与えられたもの。自分が自分であることを祝福して受け入れ、自分がベストでいられるように頑張る、ただそれだけです」

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Credit


Photography Fumi Nagasaka
Styling Masako Ogura
Hair and Make-up Itsuki
Styling assistance Chisaki Goya, Kana Hashimoto

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