独占先行公開! ゴーシャ・ラブチンスキー最後のルックブック

「ときには自分自身をチェックするべきですし、メディアから得る他人の意見を鵜呑みにするのではなく、自分自身の考えを持つべきです」

by Steve Salter; translated by Aya Takatsu; photos by Gosha Rubchinskiy
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jul 3 2018, 2:47pm

2008年のデビューコレクション以来、Gosha Rubchinskiyは、ロシアの若者の姿を明らかにすべく、ソ連後の現実を見据え、現代ファッションの様相を変革し続けてきた。ここ10年、21世紀における新たな未来をつくり出すために、自分の国の過去を振り返ることを恐れなくなった1991年以降の世代による改革をリードしてきたのが、彼なのだ。ゴーシャの写真や動画、そしてデザインは、母国ロシアを離れ、以前は目にすることができなかった世界への扉をその外側にいる者たちへと開いたのである。ただ素晴らしい服をつくるだけではない。そこにはいつも、政治やメディアによって引き裂かれた若者たちを結びつけるという狙いがあった。

ここ数シーズン、彼はロシア3部作(それぞれカーリングラード、サンクトペテルブルク、エカテリンブルクで発表された)をファッション界に届けることで、その提案をより広げている。進化を続ける彼の世界の現実を見せるためだ。この3部作から2ヶ月後、ゴーシャはInstagramに不可解なメッセージを投稿した。「これまで知られてきたようなGosha Rubchinskiyは休止する。シーズンごとのコレクションをやめ、そのかわりに、何か新しいものがやってくる」。2019年春夏コレクションにゴーシャ型の穴がぽっかりと空いたそれからの数ヶ月、次のGosha Rubchinskiyはどうなるのだろうと誰もが考えていた。未来について、ゴーシャがもっともワクワクするものとは? 「未知のもの。なぜなら、それが可能性に火をつけるから」。そう彼はメールで答えた。

「現代の若者は独自の思考を持ち、世界に開かれている」

しかし、私たちがその未知のものに飛びつく前に、ゴーシャは特ダネを教えてくれた。最後のルックブックだ。秋冬のショー会場となったエリツィンセンター博物館は、1991〜1999年まで就任したロシア連邦初代大統領の大統領府。この期間は、ロシアにとってもゴーシャにとっても成長の10年だった。モデルたちは、ロシアの過去における極めて重要な時代の象徴主義を開拓しながら、歴史のあいだを縫うかのように博物館の部屋を歩く。最近のコレクションの中核をなしてきた90年代へのノスタルジアへ別れを告げるには、エカテリンブルクが最適の土地だったのだ。

adidas Footballとつくったテクニカルなスポーツウェアから、英国屈指のラグジュアリーブランドBurberryのアイコン的アウターを際立たせる13種のアイテム、Levi’sのハイブリッドデニムやミリタリーのエッセンスを宿したDr. Martensまで、このコレクションにおけるコラボアイテムは、国境を超えた“現代版ユニフォーム”を表現している。「現代の若者は独自の思考を持ち、世界に開かれている」と、プレスリリースには記されていた。アウトサイダーからグローバルな軍隊までを行き来する、このブランドの旅の総まとめだ。

「このコレクションは、僕にとって終わりを意味するものではありませんでした。ブランドとしてのGosha Rubchinskiyが経験することのひとつの章なのです」と、メールで彼は語った。「僕はつねに新しいことをしたいので、コラボレーションはそのひとつの機会であり、ユーモアです。それは一歩であって、終わりではありません。このルックブックに取り組むとき、ノスタルジアや悲しい気持ちは微塵もありませんでした。ただプライドだけがあったのです。何かを成し遂げたという気持ちですね」。多くが謎に包まれ、世界中から誤解されているロシア。その国に対して、私たちの目を開かせてくれたのがゴーシャなのだ。「それが僕の目標でした。チャンスを得て、心を開き、私の目で見てもらうために、“東側”へ着目させるのです。僕の母国、僕たちの文化を発見してもらうために」と、彼は話す。「そして、僕は続けるでしょう」。ただ、異なる方法で。

「ときには自分自身をチェックするべきですし、メディアから得る他人の意見を鵜呑みにするのではなく、自分自身の考えを持つべきです」

ワールドカップのおかげで世界の目がロシアに向けられている時期とタイミングを同じくして公開されたゴーシャの撮影によるルックブックは、この重要な変革期を強調するものだった。「すべての国がともに戦う中心に、ロシアがあります」と彼は話した。「それがロシアに世界的な影響力を付与し、人々に興奮を与えるのです。スポーツのおかげで、団結力が生まれます」。試合を実際に観に行く人も、遠くでTV観戦をする人も同じように、ロシアを見ているのだ。それが政治的な罠にはめられた空想の日常なのかという議論もあるかもしれないが、ゴーシャはつねに扉を開けて、結論に至る前にまず自分自身で経験するようにと、私たちを誘い入れてきた。「ワールドカップというのは、ロシアに来て、何がこの国で起こっているかを自分の目で見るためのユニークな理由です。僕が最近数回のショーをロシアで開催したのも、同じ理由からです。ときには自分自身をチェックするべきですし、メディアから得る他人の意見を鵜呑みにするのではなく、自分自身の考えを持つべきです」。ゴーシャが次に何をしようとも、彼が新生ロシアを触発し、国境を超えて偏見のない現代の若者を応援し続けるであろうことは間違いない。

このコレクションは間もなくストアで購入可能。

This article originally appeared on i-D UK.