Climax 

『クライマックス』:ギャスパー・ノエ監督 インタビュー

カンヌでの最終上映会を終え、夜通しパーティに出かけた翌日、彼に話を聞いた。

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jun 5 2018, 11:53am

Climax 

ギャスパー・ノエにインタビューをする準備を整えている。しかし、当の本人はまだ寝ているようだ。もう朝も10時に近いというのに、『アレックス』や『エンター・ザ・ボイド』で知られるこの挑発的な映画監督は、まだ電話に出ない。

まあ、驚くには当たらない。昨晩は彼の最新作『クライマックス』の最終上映会が、ここカンヌで行なわれたのだから。はじめこの映画が紹介されたときは、すべてが謎に包まれていた。ほとんどの人は、彼が新作に取りかかっていることすら知らなかったのだ。映画関係者たちが予想していたのは、4年前に同映画祭で賛否が分かれた『LOVE 3D』の続編的な作品だった。しかし、私たちが目にしたのは、パリ郊外のビルでリハーサルやパーティをするダンサーたちの熱狂的なダンスホラー映画だった。しかし、ダンサーたちは、LSDが入ったサングリアをリハーサル中に誤って飲んでしまい、そこから物語はあらぬ方向へと進んでいく。そして、それは想像を超える暴力へと発展していくのだった。

キャストには『アトミック・ブロンド』でも話題となったソフィア・ブテラを起用。しかし、今回彼女が演じたのは、アンダーグラウンド・シーンでヴォーグダンスとストリートダンスを踊る若いパリのダンサーだ。ノエは、撮影を終えた段階で、作品の情報を決して口外しないよう念を押したという。かつて絶賛と酷評を分けた彼の映画に対する評価が、今回はどのようなものになるかという推測が飛び交っている。だが、これからみる作品がどのようなものなのか全く知らない状態で映画館に行くことは、最近ではほとんどできなくなっている。そんな昨今にあって『クライマックス』は、突如として観客の前に届けられたのである。

予定より15分遅れて、ギャスパーが謝罪をしながら現れた。ノエは夜通しのパーティに出かけており、今ほどホテルに戻ってきたところだった。「普通ならずっと起きていたほうが調子がいいんです」と彼は言う。だが、今日は20分の仮眠をとったのため、今何が起こっているのかまだちょっと判然としていないらしい。エスプレッソのダブルを1杯飲んだところで、インタビューの用意が整った。

——実際に観るまで『クライマックス』がどんな映画なのか、誰も知りませんでした。みんな『LOVE 3D』の続編的なものと予想していましたが、本作は超特大の変化球で……。

タイトルからして、みんな前作よりどきつい性描写を思い描いていたでしょうね! 誰も何も知らない状態で映画を解禁したかったので、できるかぎりすべてを隠そうとしたんです。映画をつくるうえで問題となるのがインターネットの存在です。発表前にすべてのことがリークしてしまう。

——9か月前の時点で、本作の構想はあたまの片隅にもなかったとか。この短期間でどうやって映画を形にしたのでしょうか?

2017年の末に、この映画に出ているダンサーの1人リア・ヴラモス(Lea Vlamos)に招待されて、初めてヴォーグダンスのパーティに行ったんです。そこで発されるエネルギーは、私が映画で描きたいと思うものでした。演目によってだけではなく、そこに出演していたダンサーからも制作意欲を掻き立てられました。そのときはまったく予算がなかったので、『LOVE 3D』のプロデューサーであるエドワール・ヴァイルにつくりたいと頼み込みました。ダンサーについてのドキュメンタリーフィクション映画だと伝えてね。低予算で、15日で撮影できると話したんです。振り付けを担当したニナ・マクニーリー(Nina McNeely)は撮影の5日前に到着し、それから22人のダンサーを撮影の前日まで大急ぎでキャスティングしていきました。

——映画の舞台はネットや携帯が登場する前の時代に設定されています。それがダンサーたちの状況をより恐ろしく見せていると感じました。

もし設定が現代だったら、携帯電話で助けを求めるでしょうね。しかし、それでは映画として成立しません。昨年カンヌを訪れた際、すべての映画で、携帯電話を使いすぎたことによる神経症を患った登場人物が取り上げられていました。私ですか? 私が育ったのは70~80年代ですから、そういうものはありませんでした。

——監督の作品はよく評価が分かれますが、本作に関しては称賛がほとんどだったと思います。批評家の発言は気になりますか?

満足しています。ですが、いちばんうれしいのは「こんな視点は今まで見たことがなかった」と言われるときですね。より象徴的な視点だと。批判的な評価も大歓迎ですよ。正直なところ、これまで受けた評価のなかで気に入っているのは、批判的なものです。クレイジーで意地悪な人たちは、私の作品を「クソ映画!」と評します。フランス人のあるライターが『クライマックス』を「見るに堪えない」と酷評したレビューを読んだばかりなんです。あれはとても辛かった!

——主人公たちを見ていると、監督はユース文化に魅力を感じているように思えます。それはなぜですか?

おそらく同年代の人よりも、若い人たちと付き合ったりパーティをしているからでしょう。それに、誰もが若者たちに共感できますよね。みんなかつては若かったのですから! 実のところ、子どもの出てくる映画をつくってもいいのです。子どもはさらに脆い存在です。ですから、危険にさらされた子どもを見るとより緊張感が高まるのです。

——今回は、素早い制作が大きな成果をもたらしたように感じます。またこうしたやり方で映画を撮ろうと思いますか?

もちろん。楽しかったですよ。今回のような成果をまた出せるかどうかは、わかりませんが! 『クライマックス』は共同作品ですから。スターが結集したのです。

——完成版を観たとき、運命の作品だと思いましたか?

ええ。だって、1月に準備を始めたとき、私はみんなに「これをカンヌに間に合わせなければいけない、さもなければ誰も制作費を出してくれないだろう」と伝えなければならなかったのですから。信じられないですよね。そんなことは不可能だと思いましたが——でもこうなったのです!

This article originally appeared on i-D UK.