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      film Sogo Hiraiwa 26 January, 2017

      『テラスにて』:山内ケンジ監督インタビュー

      口コミによって公開規模を次々拡大している映画『テラスにて』。ある邸宅のテラスだけを舞台に繰り広げられるこの90分間のセリフ劇には、今の日本社会の「ほとんど」が詰まっている……。脚本・監督を務めた山内ケンジにインタビューを行った。

      『テラスにて』:山内ケンジ監督インタビュー 『テラスにて』:山内ケンジ監督インタビュー 『テラスにて』:山内ケンジ監督インタビュー
      © 2016 GEEK PICTURES

      2016年末、一本の映画が新宿武蔵野館のレイトショーを一週間満席にして話題を呼んだ。『At the terrace テラスにて』は、映画好きたちの口コミによって異例の観客動員を記録した。原作は、2014年に"演劇界の芥川賞"と呼ばれる岸田國士戯曲賞を受賞した戯曲『トロワグロ』。監督は、同作の作者・山内ケンジが務める。

      「映画を愛する人の多くが、舞台作品の映画化に対してアレルギーを持っていることを私も知っています」と、山内はこの映画にコメントを寄せている。「場所がいつまでも変わらなかったり、会話が長いと飽きてしまう。『演劇を見に来たんじゃない』と思う。パーティーだけ? テラスだけ? そんな、何も起こらないじゃないか。退屈な話だ、と。ところが、なにも起きないどころか、ここでは、この90分の間に全てが起きるのです」。からかい、嫉妬、欲望……。そう、このテラスを舞台に繰り広げられる会話劇には、今の日本社会の「ほとんど」が詰まっている。

      ソフトバンクモバイル「白戸家」などのCMを手がけるCMディレクターでもあり、劇作家や映画監督としてジャンルを越えて活躍する鬼才・山内ケンジに、映画/演劇でしかできないこと、そして脚本を書き終える前にキャストを選ぶ理由について訊いた。

      舞台だったこの作品を映画化しようと思ったキッカケを教えてください。
      これまで演劇は19本ほどやっていて。そのまま映画にしても面白いと思ったのは、この『トロワグロ』が初めてだったんですよ。

      どの段階でそう思われたんですか?
      脚本ができてから……公演の直前くらいですかね。通しの稽古でだいたい流れができてきて。それでこのまま映画化しても面白いな、と思ったんです。

      「映画化できそう」というのは?
      僕の作品は、不条理というか、演劇ならではのシュールな場面があって、映画にはあまり向いてないのが多いんですよね。でも『トロワグロ』は、そういう説明のつかないシュールなところがなくて、全部リアル。リアルな90分間の話だった。それとワン・シュチュエーション(一幕物)でもあって。演劇の一幕物って、暗転があったり、時間が経過したりすることが多いけど、それがない。そういうものすごくシンプルなものだからこそ、あえて映画にすると面白いかなと。そもそもあんまりこういう映画、観たことないし。

      表現形式を演劇から映画にかえても成立する脚本だったということですか?
      そうですね。逆に、シーンがいくつもあって、暗転が多くて、場所も時間も飛んでいく、映画っぽい演劇もあるんですよ。それって、たしかに映画っぽいんだけれども……。僕も演劇ではそういうのも書いています。ただ、そのまま映画にできると思ったことはなくて。

      "映画っぽい演劇""映画化できるもの"は違う?
      違うっていうか、自分でもよくわからないんですけどね。逆にそういうワンシーン・ワンカットの演劇だったので面白いと思ったのかもしれないです。

      『トロワグロ』のキャスト全員が『テラスにて』にも出演されていますね。
      完全に同じです。

      そこはこだわりがあったんでしょうか?
      ええ。そこが一番こだわったところだと思います。完全に宛て書きなので。あと、その次のこだわりとして、すぐ撮りたかったというのもあります。『トロワグロ』は2014年12月に公演していたんですけど、翌年の夏には撮影していました。もう1回キャスティングや稽古をやり直していると、何年かかるかわからない。

      台本は『トロワグロ』と同じものを使ったんですか?
      まったく同じなんですよ。直していないです。

      だから、すぐ映画化に移行できた。
      そうです。『シナリオ』っていう雑誌があるじゃないですか。掲載を頼まれたんですけど、シナリオじゃないから(笑)。

      そのまんまだから(笑)。
      完全な戯曲。それに岸田國士戯曲賞をとって、書籍にもなっているからちょっと無理だなって、丁重にお断りしました。

      © 2016 GEEK PICTURES

      この物語は、パーティという"社交場"だけで展開していきますね。パーティを舞台にしたのは何故ですか?
      あまり覚えてないですね。僕のやっている「城山羊(しろやぎ)の会」は劇団ではないので、劇団員はいないんです。石橋けいさんや岡部たかしさんみたいにレギュラーみたいに出てくれる人はいますけど、いつも何人かは新しい人なんですよ。だから、最初に(台本じゃなくて)キャスティングなんですよね。キャスティング&タイトル。

      タイトルもですか?
      そうそう、演劇はいつもそうです。折り込みチラシを先に作るから。

      先に告知しないといけないから……
      だから、一文字も脚本を書いてなくても、チラシを作ります。

      チラシにも内容の説明テキストが書かれていますよね?
      すごく適当に書いています。だから、舞台の内容と全然違うものになることもある。よくあります。『トロワグロ』では、オーディションみたいなこともしたんですけどね。内容はわかってなくても。

      脚本ができる前にキャスティングするんですか?
      そうなんです。脚本がない状態でオーディションするのは珍しいと思うんですけど、その時はやりましたね。どういう話にするかは、出演者が全員決まってからです。もちろん、親子とかそれぞれの関係性はなんとなく決めてあるんですけど。だから、舞台設定をパーティにしたのもそれが決まってからでした。

      ストーリーの前に役者の存在があって、それぞれの個性を生かすような作り方なんですか?
      そうです、そうです。物語先行ではないので、「このキャストならどういう会話をしたら面白いか」を考えながらポツポツ書いていきますね。

      この映画では、はる子(平岩紙)がめちゃくちゃ踊りますがそれも……
      踊りは紙さんだから、っていう程ではないんだけど、色白っていうのは完全にそうですね。

      はる子の"肌の白さ"は、この話を展開させていく大きな要素ですよね。
      色の白い女性が出てくるから、紙さんに頼んだのではなくて、紙さんがキャスティングされていて、それから脚本を書いていったんです。大人計画も何本か観ているんだけど、紙さんの色白さに触れているお芝居はあんまり観たことがなくて。名前は「紙のように白いから、平岩紙」って、松尾(スズキ)さんがつけたって聞いているんですけど。だからちゃんと今回、ちゃんと言おうっていうのがありました。

      © 2016 GEEK PICTURES

      『テラスにて』では、会話の連鎖によって物語が思わぬ方向に進んでいきますよね。会話はどうやって組み立てていくんですか? 前から順々に?
      全くそうですね。ある発言に対して、「こう言うと面白いな」とか「興味をもって聞こうとするな」って考えながら書いていきます。全部そうですね。会話が転んでいかなかったり、ただ進んでいるだけでつまらないと(話が)止まっちゃう。それでも会話でなんとか転がしていくんだけど……。
      それで半分以上進んでいくと、流れというか目的地が見てくるじゃないですか。そうなると目的地に進むための会話になってくるんですよ。そうすると、そこに無理が出てくる。目的地にいくために人が喋っているようになる。

      強引に誘導していくような流れになってしまう。
      そうそう。それが見えるのが良くなくて。だから、そのあたりが一番苦しいですよね。『トロワグロ』はそれがうまくいっている感じがします。

      『テラスにて』は、クラウドファンディングをされていますよね。動機としては、地方の劇場に監督とキャストで挨拶に行きたいというのが大きいですか?
      自主映画なので、「100%富裕層向け映画」と謳っているわりにはお金がなくて。地方の映画館に舞台挨拶にいったりする宣伝費がないから、クラウドファンディングで募ろうということになりました。

      結構集まっていますね。
      最初は知り合いに無理矢理頼んだりしましたが、だんだん他の方からも。本当にありがたいことです。うれしい。

      自分の映画が地方の映画館でもかかるというのはどんな気分ですか。
      地方だけじゃなくて、インディーズの、あまりたくさんの人が観られない映画をあえてかけてくれるというのはありがたいです。ありがたいですし、実際救われる思いだし、「うちから発信したい」っていう映画館の人たちのプライドみたいなものも感じますよね。

      今は映画用のオリジナル脚本を書かれているんですよね?
      そう。たぶん、舞台の作品を映画でやるのは『テラスにて』が最初で最後だと思います。

      演劇と映画をまたにかけていると「演劇らしさ」や「映画らしさ」、それぞれの表現形式でしかできないことも見えてくると思いますが。
      見えてくるというより、"違いを作る"というのが最近のテーマですね。この前、城山羊の会でやった『自己紹介読本』なんかは「映画ではできないこと、舞台でなきゃできないことってなんだろう」っていうことから作ったものです。だから、最近舞台を作るときはそのことをすごく強く意識してますね。
      映画のシナリオはまだ、僕としては研究中というか。結局、『テラスにて』は舞台のまんまだから(笑)、まだ映画のシナリオは2本しか書いてないわけですよ。いやー、映画の脚本は難しいですね。自主映画だと締め切りがないし……。

      ダラダラできてしまう(笑)。
      そうそう。

      映画の脚本に関してはまだ、工夫のしがいがある?
      まあ、そうですよね……。例えば、『友だちのパパが好き』(2015)は映画でなきゃできないことを書いたつもりです。けど、初めて見た人は「舞台っぽい」って言いますよね。ただ、僕としては、映画では映画でなきゃできないことをやりたいわけです。と言っても、別に『マッドマックス』みたいなのをやりたいわけじゃない。やっぱりセリフ劇になると思うんだけど、それでも映画でしかできないものを書いていきたいなと。そういうことでございます。

      At the terrace テラスにて
      脚本・監督山内ケンジ
      出演石橋けい 平岩紙 古屋隆太 岩谷健司 師岡広明 岡部たかし 橋本淳
      2月18日(土)、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

      Credits

      Portrait Photography Yuhei Taichi
      Text Sogo Hiraiwa

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      Topics:film, culture, at the terrace, kenji yamauchi, theater, shiroyagi no kai, kami hiraiwa, kei ishibashi

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