テレビドラマ大好きな僕が考える、現代版『東京ラブストーリー』

リカはフェミニストで、さとみは"匂わせ”の達人? この春、恋愛ドラマの金字塔『東京ラブストーリー』が29年ぶりに復活する。4月末の配信開始に先がけ、90年代ドラマを愛する令和のテレビっ子、綿貫大介が「現代版」を仔細に、そして大胆に予想。『東京ラブストーリー』はこうでなくっちゃ!

by Daisuke Watanuki
|
07 April 2020, 12:00am

91年に大ヒットした恋愛ドラマの金字塔『東京ラブストーリー』が現代版として29年ぶりにこの春復活する。

“カンチ”こと永尾完治と赤名リカのせつないラブストーリーは、世代を超えて共感できる不朽の名作だ。ただ、時代設定が変われば、変化する部分もたくさんあることだろう。ブラウン管の中でキラキラした東京を見せてくれたあの頃と今は違う。

主要人物であるカンチ、リカ、三上、さとみは、現代の東京をどう生きるのか。そして東京は2020年でも、みんながあこがれた夢の場所であり続けているのか。FOD、Amazon Prime Videoで4月29日から配信される『東京ラブストーリー』に先がけ、もうひとつの現代版『東京ラブストーリー』を勝手に予想する。

時間・距離のすれ違いより心のすれ違い

世の中が便利になると、人の行く手を阻む障害はなくなる。スマホが普及した今、時間や距離が弊害となる恋愛のすれ違いは減ってしまった。「あの日あの時あの場所で君に会えなかったら」恋愛には進展しない、というのは平成までの話。今ではSNSで、いつでも誰とでも簡単に出会えてしまう。それでも恋愛ドラマにおいて「すれ違い」は絶対に不可欠だ。

そこでフィーチャーされるのが「心のすれ違い」だ。考え方や価値観の違い、お互いの立場や環境の違いなどから起きる、気持ちと理性のボタンの掛け違いによって、溝が大きくなっていき……。2020年版ではそんな心理変化をうまく見せてくれるはずだ。実はこれについては、オリジナル版も得意としていたところ。恋愛ドラマの醍醐味である「すれ違い」はいつの時代も失われない。

カンチは港区の広告代理店勤務

オリジナル版では「ハートスポーツ」というスポーツ用品メーカーに勤務していたカンチ。現代版では広告代理店勤務ということがすでに発表されている。どうせならよりキラキラした東京感を演出できるよう、港区の代理店設定を希望。社内の窓から見える、東京タワー込みの素敵な夜景にも期待したい。

ただリアルな大手代理店をそのまま再現してしまっては、企業のブラックぶりを露呈するだけ。終電ギリギリまで帰れない仕事量、土日も案件を抱えているようでは恋愛をしている時間はない。現代版では「働き方改革」がきちんとなされているのかにも注目したい。それでも忙しい現代人。なかなかみんなと会うタイミングが描けないなら、いっそのこと幼なじみの三上・さとみとともに、シェアハウスで暮らす「テラハ」的共同生活設定という飛躍もあり。住むなら、背景にばっちり東京スカイツリーが映り込む江東区エリアなんてのはどうだろう。「テラハ」要素があれば電話やLINEに頼ることなく、オフィスと家の往復だけでもしっかり恋愛の過程を描くことが可能だ。

リカは恋するフェミニストへと進化

「ねぇ、セックスしよう」というセリフが先行し、当時から新時代を象徴するような女性とされていたリカ。積極性と奔放さが際立つ彼女は、現代にこそぴったりとハマるタイプ。ストレートな性格で強い女性に見られがちだが、実はオリジナル版ではセクハラを受けるシーンも。取引先の主任からサシ飲みを強要されたり、男と寝ることで仕事を取っていると言われたりしながらも、その現状をさらりと受け流す描写があるのだ。

それをリカの強さだと評価しては、旧弊の女性像を支持することになってしまう。愛想や愛嬌で男性を気遣い、セクハラに耐えることは決して強さではない。女性蔑視の言動に対して、きちんと言葉で違和感を表明できることが本当の強さだ。現代版ではより自由に生き生きとした名言をくれる、新時代のリカの登場に期待したい。性差別やガラスの天井など、生きづらさを感じる現代の女性たちの救いになるような、まっすぐなセリフを切望する。

三上はオープン・リレーションシップを築けるか?

「三上の人生にベッドシーンはあってもラブシーンはない」。当時かなりの女たらしの浮気者として描かれていた三上の人物像だが、本当にただの遊び人だったのだろうか。三上はさとみのことも、同級生の尚子のことも、遊びの対象にはしていなかった。しっかりとそれぞれに対し、それぞれの形で愛していたはずだ。さとみとは恋人という関係性を結んだがゆえに、破滅してしまったのだと思う。

人間関係は本来「私とあなた」というだけで成立するはずのもの。他人や社会に支配され、「恋人」や「夫婦」といった名称で人間同士を縛る必要はないのだ。三上にはきっと、パートナーの合意のもとで相手がほかの人と恋愛関係や性的関係を結ぶことをよしする「オープン・リレーションシップ」という価値観が向いている。

主要メンバーのなかで唯一、運命の人と出会い、結婚し、子供を産み育てることが正しいとされる価値観「ロマンチック・ラブ・イデオロギー」を否定できるキャラクターなのだ。恋愛ドラマにおいては、そんなキャラクターはいらないかもしれない。しかし、恋人とはこうあるべき、という関係性の理想を押し付けることは前時代的であるともいえる。価値観が多様化する現代、さまざまな愛の関係性や新しいロールモデルを示す存在であってほしい。

"おでん女"さとみの「匂わせ」に期待

ここぞというタイミングでおでんを持ってきて、カンチをリカに会いに行かせない"おでん女"として、当時世の中の女性から非難の対象となったさとみ。今それと同様の炎上騒ぎとなるのが、SNSでの「匂わせ」投稿だ。核心を書かないまま、意味深な写り込みのある写真を使い、「言えないけど気づいてほしい感」を出すアレ。ぜひカンチの手や愛用の小物など、一緒にいる痕跡を写り込ませた写真をインスタにアップしてほしい。リカに「彼はわたしのもの!」だというというメッセージをさりげなく送る行為は、カンチとリカに「心のすれ違い」を起こさせる要素としては十分だ。

かなしいことがあるとすぐ
んー……って頭を抱えちゃう。
ちょっと休むことも大事だね。
大きく深呼吸して、
好きなマンガを読んでさ。
きょうは自分を甘やかそう。

出ました、こちらは「かまってちゃんからの自分がんばってます」アピール投稿!かと思いきや、なんと縦読みの直匂わせ!という高度なテクニックにも期待。本来さとみは、いい奥さんを夢見る良妻賢母タイプ。そういうと聞こえがいいかもしれないが、その姿は理想の女性像でなく男性社会に媚びた処世術でしかないともいえる。どうか自己犠牲をすることなく、自分の幸せを優先できる女性になっていてほしい。

東京では誰もがラブストーリーの主人公になる?

今の東京で、キラキラしたラブストーリーの主人公でいることは容易はない。この街は以前のように私たちがあこがれる「偶像」を見せてくれる場所ではきっとないだろう。地震リスク、高すぎる家賃と人口密度、汚い空気や満員電車……。疲弊したイメージがどうしても目立ちすぎる。それでも、恋のときめきと愛の華やぎを伝えるには十分な舞台だ。29年前のオリジナル版では最終回のラストシーンをはじめ、ことあるごとに(旧)国立競技場が東京の象徴として映し出されてきた。そして奇しくもオリンピックを控える現代の東京を象徴する場所もまた、(新)国立競技場だ。ともすれば『東京ラブストーリー』は、今だからこそ改めて描く価値がある作品になりうる。

万葉の歌人から平成の赤名リカ、令和のあいみょんまで、恋する者はみんな詩人だ。どんなに時代や街が変わっても、ラブストーリーは普遍的なものとして紡がれ続ける。時代を超えても定番のベタな展開と、現代の東京との融合が織りなす新たな『東京ラブストーリー』を楽しみに待ちたい。

Tagged:
feminist
Tokyo Love Story