Photos by Richie Davis and Olivia Malone.

オンラインでヘアカットをレクチャーするNYの人気美容師

使う道具はネイル用キューティクルシザー、カミソリ、ライター…… ディラン・チャブルズのビデオ・レクチャーを受ければ、誰でも自宅にいながらエッジの効いたヘアスタイルに挑戦できる。

by Paige Silveria
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29 May 2020, 5:58am

Photos by Richie Davis and Olivia Malone.

ニューヨークで外出制限が始まり約1ヶ月が過ぎた(もう半年経ったような気分的だが)。外出できなくても、暖かな日差しが降り注ぐインスタ映えするビーチに面した実家で、家庭料理に舌鼓を打ち、赤ワインのグラスを手渡してもらえる……。そんな生活を満喫できる、恵まれたひともいるかもしれない。いっぽうで、コミュニティのために自らの技術と時間を提供するひともいる。そのひとりが、人気ヘアスタイリストのディラン・チャブルズだ。

ロサンゼルスの有名ヘアサロン〈Salon Benjamin〉でキャリアをスタートしたチャブルズは、実験的なカットとスタイリング技術で輝かしい名声を獲得した。例えば、彼女はマレットヘアのリバイバルや、まっすぐに切り揃えた分厚いサイドバングの流行に貢献している。

「一般的なスタイルが全部魅力的じゃないとはいいませんし、そういうスタイルのほうがお金になるのは確かです。ただ、私自身は惹かれないというだけ」とチャブルズは説明する。

エクステのスペシャリストとしてSalon Benjaminに籍を置きながらも、彼女は現在ブルックリンを拠点として〈The Wall Group〉にも所属している。彼女のクライアントにはi-D、Nike、カレン・Oなどが名を連ねるが、今ならあなたもあなたのルームメイトも、とても手頃な値段でそこに加われるかもしれない。

チャブルズが前髪を整えたいひとやマレットヘアにイメチェンしたいひとのために、FaceTimeでカンパ制のヘアカットレクチャーのオファーを出すと、すぐに依頼が殺到した(ありがたいことに送金アプリVenmoで食費も送られてきたという)。

「最高ですよ」と彼女はいう。「実際にその場にいられないのがもどかしいこともあります。ビデオ電話であれこれ説明するのは難しいので。でも、その割にはみんな上手にできていますよ。正直、感心しています」

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在宅ヘアカットのレクチャーに使うツールはネイル用のキューティクルシザーやカミソリ、アートナイフ、ライターなど簡単に手に入るもので道具であることを踏まえれば、彼女の評価はかなり控えめなほうだろう。

しかし、チャブルズは高校時代から、セルフカットや友人のヘアカットにこれらの型破りな道具を使ってきた。「シザーやコームよりずっと扱いやすいんです」と彼女は説明する。

「このためにわざわざ高いお金を払って専用のシザーを買う必要はありません。二度と使うことはないでしょうから。それに専用のシザーは刃がとても鋭く、かなり深く指を切ってしまうこともあります」

今回i-Dはチャブルズに電話インタビューを敢行し、火を使ったセルフカットや自らの信念を守ることの大切さについて話を聞いた。

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Sasha Melnychuk.

──FaceTimeでヘアカットをやってみた感想は?

すごく楽しいです。インスタに載せたらかなり反響がありました。お金を寄付してもらえるのも最高です。1日に6〜8人の依頼を引き受ける日もありますし、カットに2時間半かかるひともいます。かなり長いですよね。でも、みんなすごく上手にカットしてますよ。ちなみに今日は1件も入れてません。ちょっと休みたかったので。

──アプローチ方法は?

時間かけて彼らの要望を探っていきます。ありがたいことに、「いつも担当の美容師に切ってもらってるくらいの仕上がりにしたい」なんていってきたのは、今ところひとりしかいません。「いや、それは無理ですよ」って答えましたけど。みんなすごく楽しんでくれています。前髪を整えるためのアドバイスがほしいとか、思い切って本格的なヘアカットに挑戦したいとか、そういう依頼なら大歓迎です。ぜひ挑戦してほしい。実際そんなひとばかりなので、めちゃくちゃ楽しいです。でも、今日ある美容師がストーリーに「自宅でのセルフカットのアドバイスをしているひとは、この業界を内側から崩壊させている」と投稿していました。

──まさか! こういう前例のない危機に、自分のスキルを提供しているのは素晴らしいことですよ。

確かに大変です。今は業界そのものがなくなってしまった。いつ復活するのかもわかりません。今、私たちにできることは何もない。だから、そのひととメッセージのやりとりをしました。「このままだと、誰もが家で髪を切るようになってしまうかもしれない」とそのひとは主張していましたが、サロンがもう一度オープンしたら、わざわざ家でキューティクルシザーを使って習ったとおりに前髪をカットしよう、なんていうひとはいないでしょう。お客さんは戻ってきます。それは心配していません。今みんながセルフカットをしているのは、どちらかといえば娯楽的な意味合いが強い。それに、人と人とのつながりを生み出している。

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──そのとおりですね。FaceTimeで見知らぬひとと知り合うのはどんな感じですか?

少し変な感じです。私はちょっと人見知りしてしまいます……。みんなの動きを見ていると面白いです。ほとんどのひとには髪を切ってくれるパートナー、つまり何週間もいっしょに家にこもっている相手がいます。彼らがお互いにイライラをぶつけないようにしたり、どうしたらいいか指示を出したりするのをよく目にします。

──何か面白いエピソードはありますか?

数日前、ハサミがなくてライターを使ってカットした女の子がいましたね。

──ライターで髪をカットするとどうなるんでしょう?

レザーカットのような無造作な感じになります。毛先にまとまりを出したり、まっすぐに切りそろえることはできません。まずは授業中退屈したときみたいに、髪を少しだけ手にとってねじります。燃やしたくない部分は布を使って湿らせておきます。それから髪の乾いた部分にライターで火をつけます。そうすれば、湿らせたところは燃えません。大きな炎ではありませんが、シュッとカメラのフラッシュのような音が出ます。彼女が火をつけた瞬間は、ヤバい、と思ったんですが、火はちゃんと止まるべきところで止まりました。私自身も、前はそうやってカットしていました。くさいですが、ちゃんとカットできます。

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Dani Miller.

──セルフカットのために専用のシザーを買うべきでしょうか?

むしろ、買わないようにすすめています。私も自分でカットしていますが、気をつけていてもどうしても避けられないことがある。例えば、指のすぐ近くをカットしていて、気づかないうちに先っぽを切ってしまったり。刃がすごく鋭いので、痛みも感じないんです。でも血が出たらびっくりしますよね。

──他には自宅待機中の時間をどのように過ごしていますか?

やることリストにあるのは、オンラインZINEづくり。おかゆとか、安い材料で簡単につくれる、飽きのこないレシピを載せるつもりです。例えばご飯を炊いて、次の日に冷蔵庫で固くなってしまったら、同じ量の水といっしょに鍋に入れておかゆにします。この前はムラサキイモを切って入れました。紫色だからキュートな仕上がりになりました。仕上げに薄くスライスしたフライドガーリック、醤油、柚子、グリルしたコラードグリーンとケールを加えて、見た目もすごくきれいにできました。食品は無駄にしません。しばらく使わないものは冷凍庫で保存しています。今も定期的に買っているのはナチュラルワインくらい。(エセックスクロッシングにある)People's Wineは、私が今住んでいるベッドフォード=スタイベサントまで配達してくれます。この店で働いているテオという男性が、FaceTimeで好みのワインを探すのを手伝ってくれました。それ以外は、みんなと同じように『あつまれ どうぶつの森』とか、ビデオゲームをしています。こんなときなので、ファンタジーの島をつくるのは楽しいです。

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──自分の髪は誰に任せていますか?

いろんなひとに髪を触られるのは好きじゃありません。これまで髪を切ってもらったひとは、(Salon Benjaminのオーナーの)ベンジャミン・モハピを含めて片手で数えられるくらいしかいません。気に入らないカットをされると、このひとは思ったほど私のことを理解してくれてないんだ、と勝手に被害者意識をもってしまうんです。ひどい話ですが、騙されたような気にすらなってしまう。「ほんとに私がこんな髪型にしたいと思ったの? マジで?」って。

──「私たちの関係ってうわべだけだったの? 私のこと何もわかってないんだね」って?

変ですよね。

──クライアントの目当てはあなたの実験的なカットやスタイリングだと思いますか?

もっと長時間サロンで働いていたときは、そんなカットを受け入れてくれるひとをどうやって見つけるの、とよく訊かれました。たぶん自然と引き寄せてるんでしょうね。大切なのは、私が面白いと思わない髪型はインスタに載せないこと。だいぶ前の話ですが、あるときサロンのPRチームから、私のSNSをもっと〈わかりやすく〉してほしいと頼まれました。つまり、もっと万人受けするようなアカウントにしてほしい、と。でも、私は最後まで抵抗して、絶対に折れませんでした。それから何年も経って、今のクライアントは私が接客したいと思うひとばかりになりました。職場の同僚も、仕事が終わったらいっしょに遊びにいきたいと思うひとばかりです。この小さな世界をつくりあげることができて幸せです。これまでずっと自分の信念、自分らしさを貫いてきました。それがついに報われたんです。

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Dylan Chavles. Photo by Jerry Buttles.
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This article originally appeared on i-D UK.

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