越境する2人: 高橋盾×Mars89 interview 前編
〈UNDERCOVER〉デザイナー・高橋盾とアーティストのMars89。世代も生業も違うが抜群の相性でジョイントワークを行うふたり。前編と後編に分けて、彼らの出会いと音楽性、そしてふたりの創作の工程について話を聞いた。
Courtesy of UNDERCOVER.
デザイナー・高橋盾本人からのオファーによって今まで足を踏み入れたことのないパリコレへ、〈UNDERCOVER〉2019年秋冬コレクションの音楽を担当することになったMars89。そんなキカッケを通じて架空のレコードレーベル〈UNDERCOVER RECORDS〉より、12インチ『THE DROOGS』をリリースしたのが昨年2019年12月。そして、2020年2月23日、待ちに待ったリリースパーティ「UNDERCOVER RECORDS presents MARS89 “THE DROOGS"」が、MARS89キュレートによって開催。会場では、共同によるアパレルコレクションの展開など、カテゴライズという言葉を嫌う2人の異才たちは「やりたいことをやる」その濁り無きピュアな共通の才能を遺憾無く発揮し、次々と魅惑のコラボレーションを生み出していく。前編では、彼らの出会いのキッカケと自然な流れによって創られたワールドワイドなチームアップについて話を聞いた。
── まずはお二人が出会った経緯を。そもそも高橋さんがMarsさん(Mars89)のことを知ったきっかけは?
高橋盾(以下、J):たまたま音楽を色々掘っていたら、彼のアルバムを見つけて。これは結構やばいなと思っていたら、日本人だと分かって。〈UNDERCOVER〉のインスタグラムで音楽を紹介したりすることがあるんですけど、そこで一回アルバムを紹介して。そこから渋谷のContactでMarsがDJをするイベントがあったから、じゃあ遊びに行ってこようと。そこで初めて。
Mars89(以下、M):そうですね。2018年の夏終わりとかぐらいですね。
── 高橋さんからMarsさんに話し掛けたんですか?
M:CYKのKotsu君かな。ジョニオ(高橋盾の愛称)さんがいるからと引っ張って行ってくれて(笑)。僕も文化服装学院出身で同じ学科だった話をして。映画や音楽の話なんかも。
J:そう、それで連絡先を交換して。
── その頃はまだコレクションの準備は?
J:もう準備はしていて。それで、この音をMarsがやったら面白いだろうなと。コレクションのテーマにしていた「A Clockwork Orange(時計じかけのオレンジ)」をMarsがやったらどうなるんだろうと。それで「ショーの音とか興味ある?」って連絡したら、「やってみたいです」という反応だったから、すぐに打ち合わせしてという流れで。
── 出会ってすぐにショー音楽の話になったんですね。
J:割とすぐに。
── 普段クラブでプレイするのとショー音楽では、違う感覚な気もしますが。
M :個人的にはそんなに違いはなくて。空間を演出するという意味で、自分の中では全部一緒になってる。
J:こういうのって経験とかじゃなく、音を聴けば面白そうだなというのが分かるから。
M :僕もキューブリックが好きだったので、これは絶対やりたいなと。
── なるほど。お二人は映画だったり、趣味も合いそうですよね。
M:ちょうどその頃、映画『サスペリア』が公開されて、その話でも盛り上がりました。
J:そうそう。すごい好きだったから。しかも、今回の2020年秋冬のショーの振り付けは『サスペリア』の振り付けをやっていたDamien Jaletだし。そういう風に、いつも流れに沿っていて、その中にMarsもいるという。点と点がずっと繋がり続けている人生。だから、なるべくそういう面白い人がいたらキャッチしつつ。でも、最近あまり見付けれていなかった。ワールドワイドに聴かれるような音となると、バンドは言葉があるからなかなか難しい部分もあったりする。Marsはそうじゃないところで通ずるものを作っているなと感じていた。
M:だから、海外のショーで、服と一緒に聴かせても絶対に問題ないというか。実際にみんなからの反応もあり、パリコレのアフター、ヴァージル(VirgilAbloh)主催のパーティ〈SOUND DESIGN〉にも繋がったし、自然で無理がない流れがありましたね。
── Marsさんは高橋さんと出会う前は氏に対してどんな印象を抱いていましたか?
M:元々、文化(服装学院)の学生なのでレジェンドな存在(笑)。その学生の頃に見た「UNDERMAN」(〈UNDERCOVER〉が2011年春夏コレクションで発表した特撮ヒーローへのオマージュ)とか、すごく好きでした。あの”真面目に遊んでる”感じが、かなり印象に残っていた。
J:すごい真剣にやってるからね(笑)。文化を出て、NIGO®といて裏原宿だからどうのとか…色々と言われてきたし、未だにそういう部分もあって。だから、Marsに頼む際に何かしらの悪影響がなければいいなとすごく考えた(笑)。
M:いや、悪影響どころか(笑)。でも、カテゴライズしたい人って多いですよね。
J:自分で楽しんでやっている部分と世の中の見え方って時に異なることがある、自分が始めた当初はそれがあった。
M:特に文脈はあまり気にしたことがなかった。それに、たまに「自分は権威だ」みたいな人もいるけど、ジョニオさんご本人に会ってみて、いわゆるそういう感じの人とは全く違って、好きな音楽や映画だったり、好きなものの話を楽しくできる人って意外とそんなにいなくて。すごい気持ちが良かった。
J:いそうでいないよね、そういう人。趣味が100%合うわけじゃないけど、お互い教え合ったり。自分の好きなものの柱が確立している、そういう人じゃないと一緒に物ってつくれないし、ブレてしまう。
M:他からの評価で語っている人ってどうしても分かってしまう。自分の「好き」が強い人がやっぱり良いですよね。
J:とことん自分にしかできないやり方でやっている人とじゃないと、一緒にやっていても面白くないし。でも、いまの若い世代にはそういう人増えてきているよね?
M:そうですね。レビューや星の数で判断したりしないし。
J:時代的にそういうブランクがあったのか、つまんないなと思っていた
矢先、少しづつ出てきていているよね。
── そういった次世代のアーティストに対して、フックアップする立場という意識は少なからずありますか?
J:引き上げてあげようとか上から目線はまったく無い。面白いなと思えば自分で行くし、そういう人たちと知り合いたし、話も聞きたいし、一緒に遊びたいと思う。それがたまたまフックアップというカタチにに見えちゃうこともある。それが結果キッカケになったのであれば、それで良い。若けりゃ良いって訳じゃないし、引っ掛かる人は引っ掛かってくるから。
M:知り合った結果、年齢の差があったというだけ。クラブとかでパーティをやってると、”若い”DJやプレイヤーを呼ぼうという提案あって、それは大切なことの一つではあったりするけど、そもそもやってることを面白いと思える人じゃないと全然意味がないなと感じる。
後編では、『THE DROOGS』の制作の工程や、自然と繋がっていったふたりのワールドワイドなチームアップの話へ。後編インタビューはこちらから。
祝日前夜の2020年2月23日、リリースパーティ「UNDERCOVER RECORDS presents MARS89 “THE DROOGS"」がMARS89キュレートによって開催。来日するのは近年のブリストル・サウンドの核であるPINCH、東京のローカルからの参戦は、LIL MOFO、解体新書のRomy Mats、¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U、小林うてなとのコラボも話題となったDIANA CHIAKIにデザイナー・JUN TAKAHASHIがラインナップ。開催ごとに大入満員、長蛇の列となる「UNDERCOVER」のパーティ。その架空のレーベル「UNDERCOVER RECORDS」によるリリースパーティも2020年東京の盛大なナイトパーティとなること間違いなし。
UNDERCOVER RECORDS PRESENTS
MARS89 “THE DROOGS” RELEASE PARTY
DATES: Sunday, February 23rd 2020 at WWW X
OPEN / START: 23:00 / 23:00(*未成年者の入場不可・要顔写真付きID / You must be 20 or over with Photo ID to enter. *23歳以下は当日料金の1,000円オフ。受付にて年齢の確認出来る写真付きのIDをご提示下さい。*1,000 yen off the door price for Under 23. Please show your photo ID at door to prove your age.)
ADV: ¥2,500 / DOOR ¥3,000 / U23 ¥2,000 (*一般前売りチケットを発売中)
TICKET: https://jp.residentadvisor.net , https://www-shibuya.jp/
INFORMATION: UNDERCOVER青山 03-3407-1232
〈LINE UP〉
MARS89
PINCH [Bristol / UK]
LIL MOFO
脳BRAIN - A/V set -
ROMY MATS [解体新書]
4TH:
JUN TAKAHASHI [UNDERCOVER]
¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U
DIANA CHIAKI
PICNICS
NOBUHIKO KITAMURA [HYSTERIC GLAMOUR]

