美術家・安野谷昌穂​「イメージを絶やすな」【離れても連帯Q&A】

美術家の安野谷昌穂​は、コロナ危機によって浮き彫りになった社会の歪みや個人的な気づきを忘れなければ、「それが必ずこの先役に立つ」と話す。〈離れても連帯〉シリーズ第30弾。

by Masaho Anotani
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30 April 2020, 10:00pm

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大によって、日本ではいま、多くの文化施設が休業を強いられ、感染防止対策として、あるいは政府による“自粛の要請”によって。また「ステイ・ホーム」や「ソーシャル・ディスタンシング(距離をとること)」が求められ、人と人とのコミュニケーションはいまだかつてなく制限されています。

こうした中でわたしたちには何ができるのでしょうか。文化を維持するために、好きな人や場所を守るためには何が? 離ればなれであっても連帯するには? この"非日常"を忘れないためには? さまざまなジャンルの第一線で活躍している方々にアンケートを実施し、そのヒントを探ります。

今回は美術家の安野谷昌穂が登場。

離れても連帯, KEEP-DISTANCE-IN-SOLODARITY

──新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、今あなたが属している業界や産業はどんな打撃を受けていますか? 応援・支援するにはわたしたちに何ができるでしょう?

安野谷:僕がどこか限定された業界に属しているわけではありませんが、展覧会をギャラリーで開催させて頂く場合が多いです。そうやって目前の生の作品を介しながら生身の人間が互いに接し合うことができる貴重な空間が現在そういった状況下にあるのは悩ましいです。

その状況に対して何をすべきなのだろう。単純に対処療法的なお金だけがあれば良いのだろうか? 確かにそれで少しは首の皮がくっつくだろう。それと同時にたくさんの疑問がちらつく。本来表現ってお金とは一番離れたところにあるものじゃないのか? いくら金を積んでも命は買えないよ。

そもそも、国が両腕大きくもっと大切に守らなくちゃだめじゃないのか。個人がすぐにお金どうこう火の車になってしまうのはおかしい。表現者たちとその場所がなくなる事は人間として死の匂いがする。と、不平不満を撒くだけでも良くない。助け合わなくちゃ! そして生み出さなくては。

今お金の流通が少なくても、僕らの血は絶えずにある。表現者たちは何があっても創造を止めない。それを享受する側は、絶えず欲すること。そしてその世界が自分にどれだけ必要で、どれだけ愛していたかを知る。グッと堪えて、きたるべきタイミングに準備しよう。今が厳しい状況にあったとしても、必ず思いえがくようになる。イメージを絶やすな!

──自宅待機以降に新しく始めたこと、もしくはポジティブな影響・変化がありますか?

安野谷:自宅待機が続くとどうしても心身的なストレスが生まれてくる。それをどう理解して緩和するか、想像力を働かせた。思いつく事はなんでもやってみる。

いつも以上に凝ったご飯を作ってみたり、お風呂で足つぼに時間をかけたり、酒量も調節、栄養バランス、部屋と心の掃除と整理、久しぶりに開く本、久しぶりに電話するひと、バルコニーで日向ぼっこ、庭で戴くおにぎり、朝日が綺麗、夕日が切ない、大好きな家族がいる、大切な友人たちよ、歓喜の雨、緑が恋しい、太陽が美味しい……。

結果、今まで以上に日々の発見が多くて忙しくなっている気もするし、むしろある面ではポジティブで健康的になっている。これは現在進行形だ。あらゆる可能性への探求は底なしで、この限られた家のスペースに始まり、時にインターネットの空きスペースにも広がったり、そのまた遥かに広い自分の脳内スペースへと繋がっていく。超絶トリップをしている。バッドなしだ。

──コロナのビフォー/アフターで、変化した自分の考え方や、社会への認識があれば教えてください。

安野谷:新型ウイルスの感染症が確認され始めた頃から、世界はその犯人探しとそれらすべてにおける事象への全面戦争にエネルギーが注がれた。

ほらまた人のせいにしてぇ! もぉーすぐに悪者をつくっちゃうんだから!

子供の頃よく喧嘩でカッとなって、頭の中は相手が憎いって事でいっぱいになってた。けど一呼吸置くと、あれ? 何にこんなに怒ってたんだっけ、そもそもの理由すら思い出せない。なんて事もあったか。

一呼吸おいて、うん、考えよう。そしたら色んな事が浮かんできた。コロナも昔から同じ地球上に住む生き物、ついさっきまでそれほど知られてなかったのに、なぜ今僕らの所に来たのだろうか。必ず理由があるはずだ。

今まで見かけなかった動物が人前に現れるという出来事は、鹿や猪などの野生動物が貧しくなった自然から人間界に食料を求めてきてしまう事にも似てるじゃないか。コロナも生き延びようと必死なんだ。居場所が必要なんだ。誰が自然を奪ったの? そのほとんどが人間の仕業だとすれば……。

人間は長年この星を痛め続けている。環境問題エコ推進を合言葉に今日も明日も新商品。莫大な時間を費やして地球に穴を作り続けている。

ダメ、ゼッタイ。ダメだと分かっていてもやってしまう重度の中毒らしい。

近未来を題材にした映画のほとんどでは、未来の地球は悪に支配され自然は無く人類も退廃的な生活を余儀無くされていて……そしたらある日そこに現る正義のヒーロー!的な……。しかし、それを単なるフィクションとして片付けることはできない。目下の状況とさほど変わりがないからだ。この場合のヒーローは最強の軍隊? 科学者? それとも僕や君? どれも成り得るけど、もしかするとコロナがヒーローなのかもしれない。

地球上に人類というウイルスが蔓延し、海や空や森の命あるものを次々と喰い漁る。おまけに臭いオナラをこくときた。現れたのはヒーローコロナ!っと展開して、そのまま映画で行くなら人類はやっつけられて消滅して一件落着となるだろう。

そんなの嫌だ。じゃあどうしようか? まず悪役じゃなくなりたい。どうすればいいの、だれか教えて? 隣のオバちゃん、コンビニ店長さん、おまわりさん!

一呼吸おいて、胸に手を当てて考えてみよう。聞こえてくる、それが答えの入り口。新型コロナウイルスによって生み出された人類のための特別な時間。地球規模で人類が同じ事を願い、創造するときが来ている。素晴らしい!

既存の社会の仕組み(それもなかなかのヴィンテージ!)に生かされるのは終わり。今この瞬間からみんなそれぞれが始める事こそが、これからの社会をうちたてる。今まで気づかなかった事だらけ。悪かった事も良い事も。宿題もたくさん見つかった。

僕は、僕の道を進むためのヒントをたくさんもらった。過去や今の不自由に未来の自由を奪われたくない! ありがとうと情熱を持っていこう。

──自宅隔離中の人に試してほしい、オススメの行動やコンテンツを教えてください。

安野谷:>朝日のある時間に余裕をもって目覚める。仕事がお休みでもある程度の起床時間を決めておく。
>窓際でもバルコニーでも太陽に会いに行こう! 太陽の光は体の細胞の免疫システムが働くのに必須です。
>1日の中に瞑想やヨガの時間を作る。ただ目を瞑って深く呼吸をするだけでも良いです。慣れてきたら幾つかのポーズを取り入れるとさらに楽しいです。
>やった事のない事をどんどんやってみる。失敗だらけでも家の中だし何の恥じらいもありません!
>同じ事をくりかえし続ける。継続は力なり!
>SNSやメディアに費やす時間をコントロールする。有益なものもありますが、その多くには無責任な誹謗中傷、中毒性の強いエログロナンセンスが含まれています。それらを過剰に摂取し続けると心的障害、免疫低下はもちろんですが、何といっても一人一人の超プライベートな特別な時間が台無しになっちゃう!
>ごはんは自炊、名作アルモンデ! 今ある材料で工夫して作ってみる、もしくは同居人に作ってあげると意外な名料理が生まれます。
>自分自身、同居人、観葉植物などに毎日うんと感謝してお話ししましょう。新しい発見が必ずあります。
>歌を歌うのもいいですね。声を出すと気持ちが良いです。

──2020年2月の自分に伝えたい・教えてあげたいことは?

安野谷:「その2ヶ月後の僕は、君よりうんと大きく逞しく元気になってるよ」

──コロナ禍で人間の「良い面」も「悪い面」も浮き彫りになりました。あなたが見聞きしたなかで、忘れたくないと思う、印象的な出来事やエピソードがあれば教えてください。

安野谷:マスクマンの無表情。白い目で見られるマスクしない子悪い子。マスク2枚と30万円の狭き門。アルコール除菌スプレーの価格VS高級なお酒。トイレットペーパー、なくても何とかなるぜ。テレビニュース驚きの発表、「日光浴と適度な運動はなんと免疫をあげるんです!」。学校休校、旅行を強行。コロナ流行、免疫力アップの流行、スーパーへ直行。
毎日いっぱい遊んでお喋りな親子最高。長年連れ添うカップルがいつも歩くその小道、脇の公園と遊具の存在に気づく、そして手をつなぐ。楽しい美味しいおうち時間とおうちご飯。人間が遅く、地球環境汚染も遅く。幸せの黄色い声援と共に庭のタンポポは大量の綿箒を飛ばした。人気の無い桜並木、美しくも儚い桜吹雪は僕の涙。これからも僕は、その瞬間瞬間を大切にとっていきたい。

──コロナ禍が落ち着いた後、日本の社会にはどう変わっていってほしいですか?

安野谷:以前と同じ事を、同じ方法で再びやろうなんて思わないでほしい。いろんなことが間違いだらけだったって知れたんだ。未だAIに引き渡していない自らの脳みそが叩き出したんだ。
今この与えられた瞬間に気づいたこと、見つけたことを忘れずポッケにしまっておこう。それが必ずこの先役に立つ。”落ち着く時”がいつかも定かではないけど、それは僕ら次第なのかもしれない。僕たちが変わることができた頃、コロナ禍の目も変わっているだろう。その時が来たとしたら、それは前よりずっと良くなっている。

@masahoanotani

離れても連帯,

Special Thank Kisshomaru Shimamura

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