過去のヴィジョンと未来への展望:Isabel Marant 2021年秋冬コレクション

ジミ・ヘンドリックスとガバシーンを着想源に、このパリ生まれのブランドは、さまざまな年代の音楽のサブカルチャーやカウンターカルチャーに目を向けた。

by i-D Staff
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13 September 2021, 3:13am

つい先日、店頭に並んだばかりのIsabel Marant 2021年秋冬コレクションが初めて公開されたのは、今年2月、2度目のロックダウンのまっただ中だった。寒々とした日が続くなか、誰もが現実逃避、もっと明るい未来、生きることの楽観的な意味を求めていた。コレクションの発表の場としてIsabel Marantが選んだのは、パリ郊外の巨大な無機質な駐車場。テクノミュージックを会場いっぱいに響かせ、選りすぐりのスーパーモデルを集結し、この絶えず変化する恐ろしい現代を反映するコレクションを提示した。困難と不確かさに満ちた時代にこそ、独創的な作品が生まれる。Isabel Marantの最新コレクションは、その最たる例だ。

ファッション業界での30年に及ぶキャリアを通して、あらゆるひとに認められ、愛されるブランドを築き上げたデザイナー、イザベル・マラン。彼女の象徴的なデザインは、ただ芸術として美しいというより、むしろ哲学的だ。その根底にあるのは、気楽さ、現実、誠意、快適さ、高揚。それらの要素が、この時代の不確かさに呑まれることなくデザインされたコレクションに滲み出ていた。自由と制限のはざまで、イザベルは今という時代の慰めを、過去と未来の両方に求めた。

今回のコレクションで、この大変な時代における小さな喜びや一時的な救済、そして美しさとして参照されたのは、音楽による現実逃避、過去のカウンターカルチャーとサブカルチャー、そして人の手による技術だった。未来への期待に満ちたコレクションだが、同時に、単なる現実逃避としてのファッションだけでなく、私たちが身につけるものに喜びを見出す手段を提示していた。つまり、ささやかな喜びこそが重要であり、イザベル自身もそれをよく理解しているのだ。レザーパンツやカウボーイブーツ、ドラマチックなショルダー、ピンク色、着心地の良さそうなジャージ素材が存在感を放っていた。

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特に目を引いたのは、プリントやきらびやかな装飾。ペイズリー柄や花柄は、活気あふれる60年代の華やかな自由を呼び起こすと同時に、90年代のテクノやガバシーンのダークなエネルギーも感じさせる。このような異なる要素の混合も、常に相反する要素のバランスを探り続けてきたIsabel Marantの中心にあるものだ。ハイ&ロー、ミニマリズムと豪華絢爛、昼と夜、男性らしさと女性らしさ……。イザベルはいつでも、完璧なワードローブ、タイムレスな服、一度着て終わりではなく一生に寄り添う服の必要性を理解している。

これぞまさに、ロックダウンと規制緩和、絶望と希望のあいだで揺れる今の私たちに必要なものだ。刺繍入りのボレロ、カウボーイブーツ、着心地の良いセーターは、どんなときも活用できるアイテムなのだから。

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