今こそ古着を選ぶべき理由

ファッション業界の新しさへの執着が、地球を破壊している。業界は過去との関わりを見直さなければならない。

by Osman Ahmed
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27 July 2022, 3:00am

この記事はi-D The Earthrise Issue, no. 368, Summer 2022に掲載されたものです。注文はこちら

新しもの好きのファッションは、斬新さと次に来るものがすべてだ。ファッションショー、新商品発表、コラボレーション、カプセルコレクションのサイクルの中で、風よりも速く移り変わる。私たちのタイムライン、フィード、ショップは、次から次へと新しい服で埋め尽くされる。トレンドは、それを記録するTikTokのアルゴリズムと同じ速さで現れては消えていく。それは一見無害で、とても楽しく思えるかもしれない。しかし、最新の〇〇コアなアイテムを瞬時に売り出す大手ファストファッションブランドは、地球に甚大な被害を与えている。

そろそろお気づきだろうが、ファッションの超音速のサイクルには犠牲が付き物だ。常に新しさを重視することは、この惑星、これらの大量生産を課せられた人びと、そしてクリエイティビティの概念そのものに壊滅的な打撃を与えかねない。

Vittoria Ceretti lifting her top wearing vintage clothing

どのデザイナーも、アイデアを使い回しているという点で有罪だ。しかし最近では、よりスローで思慮深くあるべきハイファッションですら、iPhoneの連写を見込んで作られた、大げさでセンセーショナルなギミックに頼っているように思える。

ファッションブランドは、気候危機を食い止めるために、新品の服の消費を根本的に変えなければならない世界でどう生きるべきか、というロードマップを示すための努力をほとんどしていない。現在、ファッションは世界中の二酸化炭素排出量の10%(国際連合環境計画によれば、飛行機の国際線と海外配送の排出量の合計よりも多い)を占めていて、全世界のプラスチック年間生産量3億トンの5分の1を占めている。

「つまり、ラグジュアリーという概念の核にあるのは希少性だ。ラグジュアリー業界がグローバリズムや過剰生産によって分裂し、薄められつつある今、私たちの記憶に残るのは、真の作家性が発揮された希少なアイテムだ」

さらに、服の生産量も今まで以上に増加している。マッキンゼー・アンド・カンパニーと世界経済フォーラムの見積もりによれば、服の年間生産量は2000年以降少なくとも倍増し、そのほんの一部しかリサイクルされていない(服に使用された布の87%は最終的に焼却処分されるか、埋め立て地に送られる)という。しかも、腹立たしいことに、そこでは〈美学のデジャヴ〉は考慮されない。あるとき、キャリアの最盛期に建築家として勉強し直した元ファッションエディターにその理由を尋ねると、彼女は簡潔にこう答えた。「あらゆるトレンドやアイデアが一周するのを見てきた。それを初めからもう一度見るなんて耐えられない」

現在のファッションはワンパターン化し、決まりきった型の中で行き詰まりを迎えている。結局、新しさの追求は古臭く感じられ、古いものこそが魅力的で斬新に感じられるのだ。過去のヴィンテージ、アップサイクル、デッドストック、中古(呼び方はなんでもいい)の服は、以前にも増してモダンなものとなり、本誌のページをめくれば気づくはずだが、私たちはそれらを祝福するためにここにいる。なぜならファッション──少なくとも偉大なファッション──は、真の意味でタイムレスだからだ。〈タイムレス〉とは、デザイナーたちがリトルブラックドレスやカシミアのセーターに言及するさいの決まり文句ではない。見事なアンティークの家具は、たとえ嗜好が変わったとしても決して手放すことはない、という意味だ。偉大なファッションは不朽で、時とともに価値を増していく。年代のわかるシーズンを無視することが今風なのだ。そもそも私たちはみんな、古いお気に入りのアイテムに新しくゲットしたものを組み合わせて、毎日服を着ているのだから。

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その上、デザインが改められたものよりも、中古品のムードボードから選び出されたオリジナル版のほうが優れている、ということもままある。犯罪捜査のような緻密なリサーチ能力であらゆるランウェイについて議論、記録するファッションマニアによるオンラインコミュニティ〈High Fashion Twitter〉のツイートをスクロールしてみると、特に熱烈なファッション愛好家の関心は、主に過去にあることがわかるはずだ。彼らは過去のレッドカーペットルックのレファレンスの出典を明らかにし、インターネット以前の時代のファッションの映像を最新の注意をもって分類している。ファッション誌の編集部より博物館のキュレーターとして働くほうが向いているかもしれない。

このコミュニティのメンバーはみんな、この記事執筆時点で5000点以上の貴重なデザイナーズアイテムを収蔵している〈アラジンの洞窟〉、ニューヨークのARTIFACT Galleryで働きたいはずだ。このアーカイブは、過去30年のファッション史を代表する重要なアイテムの出典を明らかにし、評価を付けたヒュー・モーとマックス・ツァイリングが考案したものだ。彼らは俳優から引退したモデル、アンダーグラウンドなテクノDJ、ベルギーのダイアモンド売買業者まで、いずれも服に自身の物語を織り込んだ多様な人びとからアイテムを買い集めた。そして、あらゆる優秀なスタイリストや有名デザイナーにそれらのアイテムを貸し出し、インスピレーションの連鎖を生み出している。

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「私たちのアーカイブは、ふたりの創設者の個人的なコレクションに根ざしています。ですから、非常に長い歴史のあるアイテムがたくさんあります」とArtifactのショールームのコーディネーター、ディラン・バーグーンは説明する。このアーカイブの最初のアイテムは、着るひとの顔をほぼ覆い隠すドラマチックなベルクロファスナーで知られる、Helmut Lang 1998年春夏コレクションの純白のダウンジャケットだった。それから25年近くが過ぎ、私たちが体を覆い、マスクをする時代が訪れたことを踏まえると、これほど未来を予見していたアイテムはないだろう。

すばらしい芸術作品と同じで、このコートには値段がつけられない。しかし、つい最近までは、古い服には決して新品と同じ金銭的価値はつかなかった。そこにこそ、ここ数年でのファッション界における価値観の最大の変化がある。今やあらゆるスタイリスト、セレブ、デザインスタジオがヴィンテージアイテムを求め、Artifactからレンタルしている。なぜなら、既成品を使うよりも歴史あるアイテムを使うほうがずっとクールで、さらに環境にも遥かに優しいからだ。しかも、前述のような情報通のファッション探偵があらゆるレファレンスや過去のスタイルの模造品を指摘しようと待ち構えているならなおさらだ。ファッションの未来を読み解くうえで、過去は今までになく存在感を増している。

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Artifactのようなアーカイブは、さまざまな点で、ファッション史を代表する傑作のあらゆる縫い目やパターンから学ぶ機会を提供するだけでなく、同時に現代のデザイナーアイテムを獲得し、新品がヴィンテージに到達する基準を設けることで、デザイナーをより良い方向へと導いている。その基準とは何だろうか。「新しいデザインについては、僕たちはその持続性に注目し、トレンドの追求や誇大広告を避けるようにしています」と創設者のヒューは説明する。「シンプルでベーシックなアイテムが良いということではなく、そのアイテムを何十年も持続させられる魅力となりうる特性を求めているのです」

つまり、ラグジュアリーという概念の核にあるのは希少性だ。ラグジュアリー業界がグローバリズムや過剰生産によって分裂し、薄められつつある今、私たちの記憶に残り、繰り返し着たいと思うのは、熱狂的なファッション愛好家同士を結びつける、真の作家性が発揮された希少なアイテムだ。「アーカイブファッションは、一般的にファッションの核となるふたつの振る舞いを象徴しています。それは、個性とコミュニティを求める気持ちです」とディランは指摘する。「貴重でユニークなアイテムで注目を浴びると同時に、そのアイテムを、広く共有され、愛されてきた歴史の中に位置付けることには、人の心に強く訴える何かがあるのです」

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だからこそ、私たちは本誌に掲載されているような、ジュリア・ノビス、セレーナ・フォレスト、ミカ・アルガナラズが着用しているアイテムを切望する(同時にもう二度と手に入れられないことを心底後悔する)のだ。これらのアイテムはすべて、Artifactのパスワード付きのデジタル保管室に収められている。これはファッション界の忘れ去られた名作に捧げるオマージュだ。例えば、表紙でウィンクするヴィットリア・チェレッティが脱いでいる、デッドストックの迷彩柄の生地をつなぎ合わせたMaison Martin MargielaのTシャツ。まさにこのベルギー人デザイナーのローファイなアップサイクルの美学を象徴するアイテムだ。それから、ジュリア・ノビスが着用した、国内で染色されたComme des Garçons 1997年秋冬コレクションのギンガムチェック。ギンガムチェックの可憐なフェミニニティに、デコボコしたグロテスクな膨らみを組み合わせ、当時巷にあふれていた綺麗に整えられたボディや豪華絢爛への憧れをはねのけるようなコレクションのアイテムだ。どの写真のクレジットも、過去30年のファッションの記念すべき瞬間を記録したロードマップのようだ。

 これらのアイテムは文化的にも歴史的にも重要なだけでなく、まさに今この時代にふさわしいものに思える。人間と同様、偉大な服は美しく年を重ね、その風格──擦り切れた裾、いつかの夜遊びでついたシミ──は、知恵と品格がにじみ出た優雅なしわを思わせる。大切なのは、何を着るかではなく、どう着こなすかだ。大半の雑誌は正反対のことを主張するが、ここでひとつ秘密を教えよう。頭からつま先まで最新シーズンのアイテムを着用することは、深刻なアイデンティティ・クライシスをほのめかす。

最近、私のタイムラインに、バーブラ・ストライサンドが出演した1965年のテレビ番組の映像が流れてきた。その中で、彼女は古着への愛を語っている。「よくリサイクルショップで買い物するんです」と彼女はいう。「私が中古品が好きなのは、個性があるから。値段は重要ではありません。そのアイテムがどんな体験をしてきたかが重要なんです」ここで、ひとつ提案したい。自分の服を思い出の品、すなわち自分の人生を綴った伝記の脚注のようなものとして捉えてみてはどうだろうか。そうすればその服たちは、私たちがこの世を去ったあとも、未来のファッション好きな若者たちに、何世代にもわたってインスピレーションを与え続けるだろう。

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