フランク・オーシャンのファッション変遷

メッセージ性の強いTシャツからメットガラまで、フランク・オーシャンのアイコニックなルックを振り返る。

by Douglas Greenwood, and Hannah Ongley; translated by Nozomi Otaki
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19 July 2022, 5:34am

フランク・オーシャンの超越的な装いは、一見シンプルに思えるかもしれない。しかし、よく見てみると、どのルックにもファッションに対する深い理解が感じられる。彼はこの10年、ソロ楽曲をリリースするたびに、批評家に満場一致で絶賛されてきた数少ないアーティストのひとりだ。ミュージシャン/デザイナーとして、現代のレジェンドの座を確固たるものにしたフランク。それを踏まえれば、彼のファッションが同じく人びとを魅了するのは当然だろう。

 キャリア初期のヒップホップクルー〈Odd Future〉での活動から、今年10周年を迎えるデビューアルバム『Channel Orange』まで、フランクのスタイルとサウンドは、ファンと同業者の両方に多大な影響を与えてきた。他の多くのアイコンと同様に、彼の選択は幅広く、絶えず変化し続けている。10年間の公の場、誕生日パーティー、ステージでのルックを振り返りながら、フランク・オーシャンのスタイルの進化を分析する。

frank ocean singing in camo jacket

旭日旗のバンダナ(2012年)

カラフルなバズカットに挑戦する前、フランクはほぼ毎日同じバンダナをねじって頭に巻いていた。このバンダナに描かれているのは、右翼国粋主義者がこぞって使用し、ナチスのかぎ十字やアメリカ連合国の国旗とも同等にみなされる日本の旭日旗だ。フランクがなぜこの柄を選んだのかはよくわかっていない。ねじって巻くと、特に害のないキャンディ柄のようにも見える。いずれにしろ、フランクはかなり前にこのバンダナの使用をやめたようだ。(Hannah Ongley)

 クリス・ブラウンTシャツ(2013年9月)

おそらくフランクが着用してきたTシャツのなかで最も大胆なのが、クリス・ブラウンの当時の恋人リアーナに対する暴行を告発するものだ。シャツにはクリスの顔の白黒写真とともに、〈指名手配! 家庭内暴力の罪で〉と書かれている。クリスの暴力的な傾向は、この事件の数ヶ月前にクリスが駐車スペースを奪おうとして飛びかかってきたと主張したフランクを含め、多くのひとに指摘されていた。当時、クリスはリアーナに対する暴行で保護観察中だった。(Hannah Ongley)

frank ocean wearing vans at the white house
NURPHOTO VIA GETTY IMAGES

ホワイトハウスのVANS(2016年10月)

フランクによれば、チェック柄のVANSを履いてバラク・オバマ前大統領の最後のホワイトハウス公式晩餐会に参加した理由は、特にないという。「考えてなんかいられない。いろいろやらなくちゃいけないから」とフランクは、記者たちに初めてのホワイトハウス公式晩餐会にVANSを履いてきた理由を尋ねられたあと、淡々と答えた。ちなみに、この自然発生的な質問タイムがフランクの3年ぶりのインタビューとなった。(Hannah Ongley)

frank ocean why be racist t-shirt
ANGELA WEISS/AFP via Getty Images

〈なぜレイシストになるの?〉Tシャツ(2017年7月)

フランクが『Blonde』リリース後に米国とヨーロッパのフェスのステージに立ったとき、一体誰が彼のTシャツ(〈黙っていればいいのに、なぜレイシスト、性差別主義者、同性愛嫌悪、トランスフォビアになるの?〉というスローガン入り)を作ったのか、という話題がインターネットを席巻した。結局、それは18歳のケイラ・ロビンソンであることが明らかになった。前述の4年前のクリス・ブラウンのTシャツと同様、このTシャツも、フランクが世界により広くステートメントを伝える手段として積極的にファッションを活用していることを証明している。(Douglas Greenwood)

Gucciのグリッター・バースデーレギンス(2017年10月)

『パリ、夜は眠らない。』をテーマにしたフランクの30歳の誕生日パーティーは、まさに贅の限りを尽くしていた。彼のパンツも同じだ。20代を卒業する彼が履いていた目の眩むようなクリスタルメッシュのGucciのレギンスは、アレッサンドロ・ミケーレの2017年秋冬コレクションのアイテム。リアーナもコーチェラで同素材のボディスーツを着用した。リアーナがデニムパンツとタンクトップを合わせたのに対し、フランクはこのバースデーパンツにびっちりとした赤のトップス、ふくらはぎまでのブーツ、ドラマチックなGucciのパイナップルサングラスを組み合わせ、ランウェイに上がってドラァグクイーンのジア・ガンと対峙した。普段はほぼ人前に現れないバースデーボーイは、長らくボールルームカルチャーに魅了されてきた。この前年にリリースされたヴィジュアルアルバム『Endless』では、彼はボールルームのレジェンド、クリスタル・ラベイジャをサンプリングし、エイサップ・ロッキーの「Raf」でも名前を挙げている。(Hannah Ongley)

virgil abloh and frank ocean together at the louis vuitton launch
Photo by David M. Benett/Dave Benett/Getty Images for Louis Vuitton

ヴァージルとともに(2018年10月)

2018年になる頃には、フランクは再び行方をくらまし、事実上地球から姿を消して、いま現在もまだ作業中の何かに打ち込んでいた。その年、彼が唯一人前に姿を表したのは、友人のヴァージル・アブローがLouis Vuittonメンズウェアのデビューコレクションを発表した記念すべき瞬間だ。このイベントで、彼はVuittonではなく、Raf Simonsの有名な〈DRUGS〉コレクションのジーンズと、入手困難なアイコニックな『トレインスポッティング』Tシャツを着用した。(Douglas Greenwood)

frank ocean met gala fashion 2019
Photo by John Shearer/Getty Images for THR

メットガラ(2019年5月)

2019年のメットガラのテーマが、スーザン・ソンタグのエッセイ『キャンプについてのノート』だったことは誰もが知っているだろう。テーマに従い、スターたちゴテゴテ飾り立てたきらびやかな衣装でこれ見よがしにカーペットを闊歩した。しかし、その後に到着したフランク・オーシャンは、カメラを片手に、あらゆる角度からこのテーマに異を唱えるような全身Pradaのルックで登場した。ネット上では、黒のジャケット、シャツ、タイを着用した彼を、ホテルのボーイのようだと評する声もあった。つまり、数年前の30歳の誕生日の彼のファッションを踏まえれば、完全にテーマから外れることが〈キャンプ〉に向き合うベストな方法ということなのだろう。言うまでもなく、彼は数々のベストドレッサー賞を総なめにした。(Douglas Greenwood)

frank ocean met gala 2021 homer baby
Photo by Dimitrios Kambouris/Getty Images for The Met Museum/Vogue

Homerの赤ちゃん(2021年9月)

そして、パンデミックが始まった。フランクは、私たちの多くがそうであったように、この2年間のほとんどを俗世から離れて過ごした。しかし、彼のレッドカーペットでの沈黙を破ったのは、またしてもメットガラだった。コロナによって2021年5月から9月に延期になった同イベントで、フランクは再びPradaを身にまとい、立ち上げたばかりのラグジュアリージュエリーブランド〈Homer〉のマスコットである、奇妙な緑色の赤ちゃんロボットを抱えて登場した。この年のテーマは〈イン・アメリカ:ファッションの辞書〉。自身のラグジュアリーブランドとともに、最先端の革新的なテクノロジーを提示することで、フランクは、私たちが次に生身の彼を目にする前に今一度常識を覆し、注目を集めた。(Douglas Greenwood)

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