食を軸としたクリエイティブクルー〈mcnai magazine〉へのインタビューと最新刊「Issue 02 “TOGO”」

東京を拠点に活動する食を軸としたクリエイティブクルー〈mcnai magazine〉が最新刊「Issue 02 “TOGO”」を12月11日に刊行。マガジンを定期的に刊行しながら、パーティーやポップアップイベントをオーガナイズするなど、様々なプラットフォームを用いて食文化をアウトプットする彼らのモチベーションは「無」への抵抗だった。

by i-D Japan
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12 December 2020, 10:00am

〈mcnai magazine〉との接触は今年5月ごろ。食を軸としたクリエイティブな活動はもとより、時期的にもコロナ鬱が蔓延していたなかで、アイデアマンの彼らならきっとステイホームでも”楽しむ”ことができるようなコンテンツをクリエイトしてくれるはずだと考えたからだ。

それまでウェブサイトをメインのプラットフォームとして活動してきた彼らは突如、方向転換し、2020年6月にインディペンデントマガジンとして〈mcnai magazine〉の刊行を発表した。すでに「Issue 00」と「01」は発売、ソールドアウト。そして、待ちに待った最新号「Issue 02 “TOGO”」が先日12月11日に発売されたのだ。

彼らのアウトプットについてはSNSを通しての活動やマガジン、そして定期的に開催されるイベントなどからも見ることができるが、彼らの全容を見せることはこれまでなかったように思える。〈mcnai magazine〉としての彼らがどのような意識や価値観を持って、「食」を軸としたクリエイティブクルーとして活動をしているのか。最新刊I「ssue 02 “TOGO”」の話も少し伺いつつ、彼ら〈mcnai magazine〉について話を聞いた。

—— 「Issue 02 “TOGO”」を発売おめでとうございます!まずはテーマと理由について教えてもらえますか?

タイトルにもあるように「TOGO」(テイクアウト) がテーマです。コロナが発生し、テイクアウトをする回数が自分たちの中でも増えたということもあり、コロナ以前に比べるとテイクアウトすることが人々にとって身近な存在となったように思えました。しかし、テイクアウトには「孤食」や「ぼっち飯」といったネガティブで少し悲しげなイメージがついてくるのも事実です。テイクアウトが身近となった今だからこそ、”テイクアウト”にポジティブなイメージを与えてみようということで、”テイクアウト”とは呼ばず、「TOGO」と新しく命名したらいいんじゃないかと思い、新たな意味づけに挑戦することにしました。

—— 〈mcnai magazine〉がイメージする「TOGO」とは?

ちょっとロマンチックでイデアルなテイクアウトをイメージしていて、映画のワンシーンであったり、ファンタジーを感じさせるような”テイクアウト”と言ってもいいと思います。「ビッグバンセオリー」とか「フレンズ」の主人公たちが、テイクアウトの中華をみんなで集まって家で食べるみたいな感じですかね。

—— 「Issue 02 “TOGO”」のコンテンツについて少し紹介してもらえますか?

まずは、僕らやみんなが憧れる人たちのTOGO事情が覗けるようなインタビューからスタートします。グラフィックアーティストのVerdyさんやフードエッセイストの平野紗季子さん、インディペンデントフードマガジン「Club Sandwhich」の編集長のAnnaさん、そして僕たちのファミリーでもあるLuna。あとは、韓国の人気グラフィックアーティスト・soon.easyに「TOGO」ストーリーをコミックに描いてもらいました。その他にも、「TOGO」フードを食べるときに使えるランチョンマットのページあって、そのランチョンマットではグローバルデジタルビデオチャンネル・NOWNESS ASIAともコラボをしています。他にも国内外で活躍するシェフたちの「TOGO」レシピだったり。豪華なゲストとのコラボコンテンツ多数、年齢性別問わず楽しめるコンテンツ内容になっていると思います。

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グラフィックアーティストのVERDYに彼のTOGO事情や食に関わるエピソードなどをインタビューしたページと”TOGO”のコンテンツメニュー

——〈mcnai magazine〉という組織について少しお話を聞いてみたいと思います。自分たちのことを自己紹介するとしたら何と言いますか?

インディペンデントなフードマガジンであり、クリエイティブ集団です。メンバーは本当に多種多様で、普段メンバーのそれぞれは〈mcnai magazine〉以外の活動を主に行っています。DJ、デザイナー、映像監督や写真家として活動していたり、その他にも建築やマーケティングの分野で仕事をしているメンバーもいます。現在進行形で作られていくクリエイティブな集団です。〈mcnai magazine〉は名札的な存在で、人格や明確な実態はないと思います。どちらかといえば価値観や意識なのかなと思います。

—— mcnai(マカナイ)の由来は何ですか?

まだmcnai(マカナイ)という名前が存在していなかった頃に、メンバーのひとりがめっちゃ厳しいイタリアンで働いていた時期があって。そこの厨房の中でめっちゃ怒鳴られたりしてたらしいんですけど、彼がそのバイトでの唯一の楽しみが少し汚いバックヤードで食べた「まかない」だったって教えてくれたんですよ。そこから、バイト中の若者が楽しみにする、唯一の体験として存在する「まかない」、そんな集団になれたらいいなと思って「mcnai」という名前にしました。

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——〈mcnai magazine〉としてスタートしたきっかけは何ですか。

みんなが好きなモノ・コトの共通点として、音楽、映画、写真などがあって。僕らが上京したての頃、好きなことをなんでもいいから何かカタチにしたいという意識を潜在的に持っていたんですが、東京では、tokyovitaminCYKといった偉大な先輩方たちはじめ、すでに面白いアウトプットをしている人たちがいるなかで、彼らと同じことをしても面白くないなと思いました。そこで、もともと食に興味を持っていたメンバーが「食」を軸に僕らが好きなことを表現できたら面白いんじゃないかって提案してきて、そこから「食」を軸にクリエイティブな活動をしようということで〈mcnai〉がスタートしました。

—— なぜそもそも「食」がフィットしたのでしょうか?

まずは、「飢え」という概念を想起させるということと、あとは純粋にみんな食べることが好きだからですね。ごはんについて考えると、ニヤニヤしちゃうじゃないですか。ずっと食べることを考えていたらQOL(クオリティ・オブ・ライフ)ブチあがるなって思って、食を選びました。

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白金台LIKE RESTAURANTへのインタビューとTOGOレシピの紹介

—— いわゆる食雑誌とは違うように見受けられます。

まず、大前提として〈mcnai magazine〉におけるコンテンツは「食」を中心としています。そして、僕たちは「食」が「料理」、「音」、「空間」、「人」という4つの要素で構成されていると認識していて、それら4つの要素を踏まえながらコンテンツを制作しています。僕らは料理のプロでもなければ、美味しくて高価な店をめちゃくちゃいっぱい知ってるわけでもない。それらをお求めの方は世の中にある何万冊と存在する素晴らしいグルメ本やレシピ本をディグってもらいたい。〈mcnai magazine〉は既存の食雑誌にはない「食」のコンテンツで満たされた食雑誌です。だからこそ、皆が面白がってくれるような今まで見たこともないような化学反応が起こりうる可能性を秘めているんじゃないかなと思います。

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—— 先ほど「飢え」という概念を想起させたいとありましたが、なぜでしょうか?

今までの文化的ムーブメントには共に共有する”敵”がいたと僕たちは考えています。例えば、ベトナム戦争や形式化された社会を若者が敵と見なして生まれたヒッピーカルチャーや、権威を敵とし、若者が反抗して生まれたパンクなどがあったと思います。なぜそれが若者の間で共有され、集中が一点化したのかというと「見える化されていた敵や問題が限られていたから」かもしれないと考えています。大きなテーマが世代ごとで共有され、共通認識としての敵が存在した。ですが、現代では情報のシェアが加速化し、メディアも増え、あらゆる問題が浮き彫りとなり、各人がそれぞれの問題を持つようになりました。環境問題や人種問題など、人類が一丸となり立ち向かう問題はもちろん現在もあります。しかし、多種多様な問題が大量の情報として押し寄せる中、プラスマイナス、どちらの感情も動かされるものがないという事自体が僕たちにとってのパーソナルな問題でした。感情を向ける対象が「何もない」ということに不安と怒りを覚えているとも言えます。なので、mcnaiは「無」に対する反抗、「無」から発生する空腹によるフラストレーションの顕れです。夜中腹減って冷蔵庫見ても何もない、F●●K!みたいな。

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—— 「無」への苛立ちがモチベーションとなっているということでしょうか?

そうですね。〈mcnai magazine〉は、敵が見つからない世の中でも僕たちにはアイデンティティがあるはずだと伝える場なのかもしれません。立ちはだかる何かが僕らの前にプロヴォークしたなら、僕たちはそれに立ち向かっていくと思うんです。

—— いまの何かを変えたいと思うことはりますか?

何かを救ったり、何かを変えることができるかはわかりませんし、そんなすごいことはまだできないのかもしれないとも思っています。唯一僕らが分かっていることは、〈mcnai magazine〉は「無」に対するフラストレーションだということ。僕たちが周りを見回したときに感情的にさせるものが何も見つからなかったから〈mcnai magazine〉を始めたという感じなんです。

—— やっていくなかで意識や考え方の変化はありますか?

考えは変わっていませんが、気づきや新たな興味が出てきたと思っています。ひとつ挙げるとするなら、いわゆる”食育” 的なところに興味が出てきました。色々な人たちにインタビューをすることで食産業の闇が見えたり、食産業が抱える問題が僕らの中でも見えてきて、将来的には何らかの形で、僕たちのスタイルでそういうところにも踏み込んで行けたらいいなって思います。

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“TOGO”で行われた飲食企業のドン「Killer K」への飲食業界の闇や希望についてのインタビュー。

—— 〈mcnai magazine〉の雑誌以外の活動についても。パーティーやイベントも多くオーガナイズしていますよね。

みんなと集まりたいっていうのが基本にあって、一番は同世代の若者たちが食を楽しむチャンスを作るため。例えば、この前やったHuman Natureでのイベントは若者がなかなか関わることのないナチュラルワインを楽しむ場所を作りたいということで開催しました。僕ら〈mcnai magazine〉のDJたちのサウンドをバックに、 Human Natureがサーブするワインをみんなで初体験したんですが、遊びに来てくれた人全員が「おいしかった!」とか「面白い経験ができた!」って言ってくれて嬉しかった。食体験ってライブな空間でしかできないのでやっぱり楽しいですよね。

—— Tシャツとかマーチもイベントで販売していたりしますよね。マーチを作りはじめたきっかけは?

一番のきっかけは僕たちが超お世話になっているNYのフードクルー・LOST IN THE SAUCEのYumiさんが作ればいいじゃん!ってアドバイスしてくれたから。(笑) ニューヨークでレップしたいって言ってくれた聡明で視野の広い彼女からのアドバイスは無視できませんでした。

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新しく発売される予定のフーディー

—— クリエイティブインスピレーションの源は?

メンバーのみんな国内外のカルチャーがとにかく大好き。今はSNSですぐディグレるような時代なので、常日頃からいろんなジャンルの面白い人達を年齢性別国内外問わずディグりまくってます。あと東京では、tokyovitaminやCYK、今回コントリビューターとして参加してくれたVerdyさんなどから凄まじいほどのエネルギーをもらっています。僕たちがずっと憧れていた人たちと今一緒にコラボできて光栄だし、本当に夢のようです。

—— 食育にも興味を持たれているとのことでした。〈mcnai magazine〉として環境問題や社会問題に対して議論が交わされることも?

僕たちの納得できるアウトプットで解決できるなら是非したいですね。食の背景には喜怒哀楽のストーリーが常にあります。決して喜と楽だけではありません。でも、解決を押し付けたくはないんです。僕たちが考える解決方法はエレガントで、僕ら自身もその行いがクールだと思えること、消費したくてたまらないと思うような解決方法であることだと思っています。今の若者は社会問題や環境問題に対し非常に興味がある世代、いわゆるアクティビストが流行化してしまった世代だとも考えています。本当の意味で良い解決方法を僕たちが将来的に生み出せたら超面白いですよね。

—— 最後に〈mcnai magazine〉が考えるより良い社会とは?

スケールが大きいですね。(笑)んー、しっかり受信することができる社会じゃないですかね。SNSやメディアの興隆によって発信者が大量に増えてしまった現状があります。でも、重要なこととしてあるのは、発信すると同時にそれ以上の受信力だと思います。あと受信するという行為は相手の行為を気にして、思いやり、気遣い、考えるということでもあるので「愛」のある行動だと思います。そんな愛ある行為が増えたらよりより良い社会になるのではないでしょうか。もちろん、明日、明後日で意見が変わる可能性はも十二分にありますけどね。


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