Left: Jazzelle wears jacket and choker Junya Watanabe. T-shirt Cyberdog. Earrings and grill (worn throughout) model's own. Right: Coat Burberry. Shoes Rick Owens.  

美の基準を覆すモデル:ジャゼル interview

ジャゼルはモデル以上の存在だ。ムーヴメントを起こし、規範を打ち破り、ファッション業界を変える者。オルタナティブな美のアイコンであり、すべてのルールを覆す彼女にi-Dが迫った。

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apr 24 2018, 10:48am

Left: Jazzelle wears jacket and choker Junya Watanabe. T-shirt Cyberdog. Earrings and grill (worn throughout) model's own. Right: Coat Burberry. Shoes Rick Owens.  

This article originally appeared in i-D's The New Fashion Rebels Issue, no. 352, Summer 2018.

ジャゼル・ザノーティ(Jazzelle Zanaughtti)のInstagramアカウント名は、私たちの世代が自らの不安定さを大事にしなければならないという事実を表現したものだ。22歳の彼女が選んだ名前は@uglyworldwide。彼女の中性的な魅力とは相いれないが、みんなの中の弱さに触れるその独自のアプローチにはぴったりだ。私たちは自分の欠点を皮肉る冗談を投稿して、InstagramやTwitterを悩みを打ち明ける安全地帯としているのである。

ジャゼルはこのムーヴメントにおいて大きな役割を果たしている。彼女は型にはまらぬ美しさ(顔に何かを貼りつけたり、蛍光色のショーガール用ウィッグを着用したり、眉毛を剃り落としたりなど)をとらえた自撮りを40万人のフォロワーにシェアしているのだ。その性別を超えた型破りなスタイルは、既存の美の基準を否定しているようにも見える。なぜなら、著名なフォトグラファーであるニック・ナイトのミューズとなったり、Gypsy Sportや Ashishといったブランドのショーに登場したりしていても、彼女は自分が「場違いなもの」を発信していると考えているから。

Jazzelle wears jacket and choker Junya Watanabe. T-shirt Cyberdog. Earrings and grill (worn throughout) model's own.

「モデルが自分に合ってるかどうか、よくわからない」。オーバーサイズのパーカーの襟もとに流行の超ミニサイズのマトリックス風サングラスをひっかけ、くつろいでいるジャゼルは、そう話した。「自分がやってるパフォーマンスアートのせいで、最初の事務所はクビになっちゃったし」

デトロイト出身のこのモデルをつかまえたのは、所属する〈New York Models〉のフラットアイアン地区オフィス。NYコレクションが終わり、次なるショー会場のロンドンへ発つ直前のことだ。どのブランドのショーに出るのか訊くと、彼女は冗談めかして目を回した。「ねえ、知ってる? それすら話せないの。なにしろ2日前まで、ロンドンに行くことすら知らなかったんだから」

All clothing Rick Owens.

ネット上での彼女がそうであるように、現実世界で弱い存在でいることが、ジャゼルの特徴的かつ現実感あるキャラクターをつくり上げている。彼女はすぐに心を開き、シカゴからニューヨークへ移る直前、その人生がいかに「最低」だったかを話し始めた。すべてが間違った方向に進んでいるようだったという。3つも仕事を掛け持ちし、「態度の悪い年上の男」との関係にどっぷりはまり込み、各所への支払いに苦慮しながら、同時に母親の面倒までみていたのだ。「そういうことを経験して、常にパーティすることで傷をいやしてた」。テーブルに目を落とし、辛い時期に思いをはせながら、彼女はそう話した。「味方なんていなかった。彼氏もほかのたくさんの人たちも、私に目を向けるやつなんて絶対にいないと言ってた。彼らがいなきゃ、私は人生で何も達成できないだろうって」。ジャゼルは自分自身をコントロールする術を求め、2007年に自らの髪を切ることにそれを見出した。「ある日目を覚ますと、『ああしろこうしろ言うやつらにはうんざり。もう疲れた』って言ったの」。そして長い癖っ毛を、今やトレードマークとなったブロンドの坊主に変えたのだった。「そのことが、後に大きな意味を持つようになった」。ブリトニー2007年バージョンと冗談めかしながら、ジャゼルはそう言った。「乗り越えたの。前に進んで、新しい人生をスタートさせる準備が整ったわけ」。そのときジャゼルはほとんど気づいていなかったが、その断髪がそうする手助けをしたのだった。

Dress Melitta Baumeister.

新しい髪型は、そのシャープな姿を中性的に見せ、ある人物の目に留まるきっかけとなった。ニック・ナイトである。Instagramで新しい髪型の彼女の写真を見たあと、ニックはジャゼルにDMを送ったのだ。「ロンドンで私の写真を撮りたいって」とジャゼルは当時を思い出していう。「私はこう返したの。『行きたいのはやまやまだけど、私は汚れた貧乏人。だから……あなたたちがもしそこに行かせてくれるなら』って」。そのときばかりは、ことがうまく運んだ(イギリスの税関で数時間足止めされたことを除けば)。まるで彫刻のようなComme Des Garçonsの服をに身を包み、ニックに写真を撮られた彼女。人生を変えるその撮影の写真を目にしたとき、ジャゼルは「平穏と静けさ」を自分の瞳に見たという。自分のパーカーの袖で涙をぬぐいながら彼女は話した。「人生で最高の瞬間だった。その前にも人生はあったけど、ほんとにクソみたいなものだったから」

ニックとの撮影から2年が過ぎ、ジャゼルは業界でもっとも注目されるモデルのひとりとなった。誰も自分を信頼していないと感じた日々は、もう遠い過去のこと。彼女のInstagramには、自分のアートを送ってきたり、自尊心についてからメイクまでありとあらゆる質問を投げかけてくるフォロワーが世界中にいる。これほど多くの人がジャゼルをフォローしている理由は明白だ。彼女は「適合しなくていい」と世界に示しているから。Instagramのキャプションは、彼女からのメッセージになっている。その中でも秀逸なのが、自身が経験したいじめについて赤裸々に語ったもの。「最終的に私が強くなって、ほとんどのやつらは私を放っておくようになった」。人生についての彼女のアドバイスは、オプラ・ウィンフリーとカーディ・Bを合わせたようなものだ。その正直さを通して、撮影やランウェイショーでは癒されない傷もあることを、ジャゼルは世界に伝えているのである。発信されるインスピレーションとは裏腹に、自身のInstagramは誰よりも自分に向けたものだと彼女は話す。「Instagramは日記のようなものだと思ってる。私の投稿にあるアドバイスは、誰かに向けているものじゃない。私が立ち戻り、それを見て、こう言うためのもの。『オッケー、あの日、私はこう言ってる。そんな前向きな自分を取り戻さなきゃ』って」

ただ知っていることを共有しているだけだからと言い、自分がロールモデルであることを認めようとしないジャゼル。「私はクィアで、長いあいだそれが原因で辱めを受けていた。だから、そういう話が話題に上っても、私にとっては既知のこと」。シカゴで出会ったクィアの友人たちのことを彼女は思い出す。一緒に古着屋にに出かけ、ビーサンを貼り重ねて、厚底のサンダルをつくったりした。「誰もお金は持ってないからさ(笑)。でもすごくクリエイティブな空気があって、みんな持ってるもので何とかしてた」。インタビューも終わりに近づいていき、話はアドバイスに関するものに変わった。読むべき本や観るべき動画、参加すべき団体などではなく、彼女が伝えてくれたのは、シンプルな哲学だった。「あなたがこの世界に住むべきで、世界があなたの周りに住むべきじゃない」。夜はじきに明ける。ジャゼルの人生がそうであったように。

Dress Saint Laurent by Anthony Vaccarello.
Shirt, trousers and shoes Vetements.
Shirt, trousers and shoes Vetements.
Top and belt Louis Vuitton. Briefs stylist's studio.
Coat and shoes Raf Simons.
Coat Céline. T-shirt AG Jeans. T-shirt stylist's studio. Trousers Palm Angels.
Coat Burberry. Shoes Rick Owens.
Jazelle wears jacket and choker Junya Watanabe. T-shirt Cyberdog. Earrings and grill model’s own.

Credits


Photography Daniel Jackson
Fashion director Alastair McKimm

Make-up Hannah Murray at Art + Commerce. Nail technician Rica Romain at LMC Worldwide using Chanel Le Vernis. Photography assistance Mitch Stafford and Tim Hoffman. Digital manager Karen Goss. Styling assistance Maggie Holladay and Desiree Adedje. Make-up assistance Colby Smith. Casting director Samuel Ellis Scheinman for DMCasting. Model Jazzelle at New York Model Management.

Translation Aya Takatsu.

This article originally appeared on i-D UK.