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吉岡里帆:彼女に挑戦状が届き続ける理由

いまもっともオファーの絶えない女優、吉岡里帆。つい心を許してしまいたくなる“隣の女の子”的な表情を見せながら、同時に見る人の精神をえぐるようなセリフが吐ける稀有な女優だ。ひとクセもふたクセもある脚本家たちの挑戦欲に火をつけるパワーは、一体、彼女の中のどこにあるのか。

by Wakako Shudo
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09 April 2018, 6:42am

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「今日は久しぶりに街を歩いてすごく楽しかった」と撮影を終えた吉岡里帆は笑顔を見せた。いま日本で生活をしていたら、映像や写真で彼女の顔を見かけない日はないだろう。そんな彼女に自身のブレイクをどう捉えているか聞いてみた。「私は自分の中で何かを達成した実感が持てたら、作品を見てくださった方々に別世界の感動を届けることができたなら、それがブレイクしたってことだと思っていて。いまの私は勉強して吸収しなきゃいけない時期で、ブレイクとは程遠い。メディアに出ていくことと、人に感動してもらうことは、まったく別次元だと思っています」今年1月で25歳になり、デビュー5年目。女優としては決して早咲きというわけではない。2、3年前までは、オーディションで最終選考までは残るものの役を逃す、というシビアな時期が続いた。そんなときは、5年後、10年後の自分を想像して耐えていたという。

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「“まだまだ始まったばっかり、先は長い”と自分に言い聞かせてました。いまもそう。すぐに答えを出しちゃいけないことだらけだと思うので。でもやっぱり、私がやりたかった役を他の人が演じているのを見るのは悔しいですね。負け惜しみなんですけど、“ あー、私だったらこう捉えるのに……この役となんで巡り会えなかったんだろう”とか、色々考えちゃう(笑)。私、小さい頃から思い込む力の可能性を信じていて。現実で嫌なことがあっても好きな本や作品の世界に浸って、絶対こういう面白い世界がある!って思い込むことで、世界が美しいものに見える。その思い込む力こそ私の柱だと思うので、強い気持ちを持って素敵な物語を手繰り寄せたいです」

クリエイターだった父親のコレクションである、本棚に溢れる多彩な写真集やクローゼットの中のデザイナーズ服に囲まれて、妄想に耽るのが得意だった少女時代。「日本有数の仲良し家族」と言い切るほど愛情に恵まれた環境だったという。「ケンカしてても必ずハグして“大好きだよ”ってお互い言い合って一日を終えるんです。京都から東京に出てきて、街も人も仕事のペースもすごく早くてビックリして、いまだに慣れないんですけど、父親に『どんなことでも理解するのに5年はかかる。5年は黙って働くこと』って言われて。その言葉がデビューして5年経ったいま、力になってるかもしれないです。お芝居する上で、心を剥き出しにしておく、というのを心がけていて、辛いことや悲しいことも人一倍感じやすくなっちゃうんですけど。その分喜びや感謝の思いも人一倍湧き出てきます。私には私の出演作の正直な感想を教えてくれる友人たちがいて、ショック受けることもあるけど、ちゃんと理由を言ってくれたり、こっちも“でもあれはこうだったんだよ”って話したり、そういう会話がすごく嬉しくて。嘘のない言葉をくれる人がそばにいる、って大事だな、と」

子どもの頃から書の道を目指し、大学でも書道を専攻。自分も家族も将来はその道へ進むと疑わずにいたところ、演劇と出会って運命が変わった。「友達に誘われて観に行った学生が演じるつかこうへい作品の舞台に感動して、女優になりたいと思うようになりました。初めて主演で舞台に立った作品は唐十郎作の『吸血姫』。セリフを発するたび“生きてるー!”と実感できたあの日々がいまも原動力です。当時の自分の感覚を大事にしたい。実は、その頃に出演したインディーズ映画『星を継ぐ者/Inherit The Stars』がいま海外の映画祭を回っていて、賞を獲れるようになってきたんです。私が行ったことのない国で、携わった作品が“ 面白い”って観てもらえるってすごくロマンがありますよね」

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悪女を演じたドラマ『カルテット』では「人生チョロかった」と強烈なセリフで印象を残し、ドラマ『きみが心に棲みついた』ではモラハラ男の言いなりになる自己肯定感の低い主人公になりきった。ともすると目を背けたくなるような、観る側も疲弊するような女性像だが、つい役と演者を同一視してしまう視聴者も少なくない中でリスクを負ってでも果敢に役柄に挑む彼女の姿勢が、作り手の表現欲を刺激し続けるのだろう。

「綺麗に見られたい、好かれたい、という気持ちより、“チャンスだ!”と思って、人間のダメな部分や歪んだ一面を出すよう取り組んでいます。私は異物感のある人間くさい役をもらえることが多いのでありがたいです(笑)。だって綺麗な人は沢山いるし、そこで戦える気がしないから。伝わる人には伝わるし、面白いって言ってくれる人がいるはずだから、そこをもっと根詰めてやっていけば絶対どこかの誰かに届く、と思ってます。いまはオリジナルを出していかなきゃ残れないけど、オリジナルを出すのも難しい時代で。みんなと同じような格好して同じような発言をしてないと排除されちゃう怖さもある。うちの親は好みがハッキリしていて、当時みんなが着てた流行りの子ども服は買ってくれなくて。仲間外れにされたくないからみんなが持ってるものを自分のお小遣いで買ってました。大人になって、どっちも正しいと思うんですよ。こだわりを持つのも流されるのも。でも自分のポリシーを追求して戦ってる人はやっぱりかっこいい。与えられた役に対して真剣に挑むスタンスは変えずに、10年後、20年後のストーリーをちゃんと自分で作らないといけない。それがいまの私の課題ですね」

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Credit


Text Wakako Shudo.
Photography Chikashi Suzuki.
Styling Mana Yamamoto.
Hair and Make-up Katsuya Kamo at Kamohead.
Photography assistance Reiko Touyama.
Styling assistance Kotomi Shibahara.