【対談】清水尋也×板垣瑞生 ボーイ・ミーツ・ボーイ

山戸結希監督の最新作『ホットギミック ガールミーツボーイ』で二度目の共演を果たした清水尋也と板垣瑞生。ふたりが本作の革新性や、それぞれのヒーロー観を語る。

by Momo Nonaka; photos by Bungo Tsuchiya
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16 May 2019, 10:40am

この記事は『i-D Japan No.7』ヒーロー号から転載しました。

清水尋也と板垣瑞生。映画にテレビに活躍目覚ましいふたりの若きアクターは、現在それぞれ19歳と18歳。6月公開の映画『ホットギミック ガールミーツボーイ』で、共に中学生だった『ソロモンの偽証』(2015)以来の共演が実現した。監督・脚本を手がけたのは山戸結希。大学在学中に自主映画で注目を集め、監督に大抜擢された『溺れるナイフ』(2016)でその才能を広く知らしめたのに加え、15名の新進女性監督によるオムニバス映画『21世紀の女の子』のプロデュースを手がけるなど、前例のないスピード感で日本映画界に新風を吹き込んでいる目が離せない存在だ。原作は2000年代前半にヒットした相原実貴の少女漫画。堀未央奈(乃木坂46)演じるヒロインは、清水、板垣、加えて間宮祥太朗演じる3人の男性のあいだを揺れ動く。

清水は『渇き。』『ちはやふる』『ミスミソウ』など数々の映画でひとくせある存在感を示し、昨年は『インベスターZ』でテレビドラマ初主演も経験。『貞子』『パラレル ワールド・ラブストーリー』など待機作も続々だ。ボーカルダンスユニットM!LKのメンバーとしても活動している板垣は、これまでNHK大河ファンタジードラマ『精霊の守り人』や映画『響 -HIBIKI-』などに出演。秋には初主演映画『初恋ロスタイム』の公開も控えている。『ホットギミック』ではヒロインの相手役としてお互いに恋のライバル的な関係にあり、観客の女の子たちのあこがれのまなざしを受け止める場所に立つふたりに、撮影を終えての感想とヒーローについて思うところを聞いた。

——『ホットギミック ガールミーツボーイ』は久々の共演作ですね。

板垣瑞生(以下:板垣)尋也といっしょって聞いたとき、うれしかった。前に共演したのは14歳とか? めちゃめちゃ久しぶりに会って、大人になったなーって思えましたね。改めて尋也を見て、自分もおっきくなったんだなって。

清水尋也(以下:清水)僕は「ひさしぶりー」みたいな感じでしたね。また一緒に仕事できる!というような喜びというより、ふつうに友達として会えてうれしいなって気分でした。役者同士ではありますが、友達として、いち人間として仲良くしてるつもりなので、一緒に芝居ができてどうのとかいうのは先行して出てこなかったです。

—— 山戸監督は現場でどんどん脚本を変えていくとお聞きしました。そういう撮影をやってみて、いかがでしたか?

板垣 撮影の途中で何度か「死ぬんじゃないかな」って思ったけど、めちゃめちゃ刺激的だったし僕は好きでした。楽しかったですね、終わったいま思い返すと。

清水 ひとことふたこと増えるのは全然よくあることだと思うんですけど、台本で2ページぐらいあるお芝居が、はじまる30分ぐらい前に6ページとかになるんですよ。 役者としては地獄でしたね(笑)。

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—— 現場で監督にどんなことを言われたか覚えてますか?

板垣 何も覚えてない……。

清水 覚えてろよ(笑)。

板垣 詰め込みすぎて、終わった瞬間にスパーンとはじけて撮影中の記憶を全部忘れたんです。セリフとか文字のデータもそうですけど、気持ち的にもいろいろ詰め込みすぎてあんま覚えてない。役でオレンジ色の髪にしてたんですけど、撮影が終わって次の日ぐらいに黒にして、しかもパーマかけましたね。嫌だったわけじゃなくて、ただもうはやく変えたい!みたいな。

清水 はじけ飛んだっていうのはすごくわかる。山戸監督は役者と一対一で話す時間を作ってくれるんです。ふたりだけの空間を設けて演出をする。だから自分以 外に、誰がどう演出されてるかまったく知らない、って感じでした。

板垣 あとに残る言葉っていうよりも、その一瞬一瞬に集中していて。ワンカットワ ンカットこだわって撮ってくださるから、やっていて楽しかったです。

—— 特に印象に残っているシーンはありますか?

板垣 電話のシーンがあるんです。そこすごくこだわったところだから見てほしいな。映画の撮影ってマイクが音を拾うように声を出さなきゃいけないんだけど、今回はそれをやりつつ本当に若い男女が電話をしている感じを目指して、トーンとか口調をすごくリアルに寄せたんです。

清水 技術的にもビデオ電話の画面をそのまま映したりとか、面白い手法が盛り込まれています。

板垣 劇場で観てほしいですね。大画面で。

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—— 今回の映画では言ってみれば少女漫画のヒーロー役を演じたわけですよね。

清水 夢物語にあこがれている女の子たちはキラキラしているものを見て興奮すると思うんですけど、それって自分の生活にないからこそ自分を投影して楽しめるものであって。でもこの『ホットギミック』っていう映画は、男の子の心情も女の子の心情も身近なものとして描かれているんです。キラキラというよりもギラギラしてる。原作も性的表現だったりちょっとバイオレンスな部分だったり、本当の恋愛ってこういうことなんじゃないの、みたいな人間の生々しい部分がわりと描かれてる作品なんですけど、それが映画になってよりリアリティを増してる。これまでの流行りだったキラキラした恋愛映画に一石を投じるような、新しい青春映画になったんじゃないかなと思います。

板垣 俺が言いたいこと全部言ってもうたやん……。

清水 嘘だ!何も考えてなかったでしょ(笑)。

板垣 じゃあ言ったろか! そうだなあ、恋愛映画だけど、そこで恋愛している人たちの日常を描いたように見えてしまってもいいのかな、って思いがぶっちゃけあります。

—— 現実離れしたファンタジーというより、生活と共にある恋愛なんですね。

板垣 映画のなかで言ってることとかやってることって非日常的に見えるかもしれないけど、非日常的なことって日常でも実際に起こり得るじゃないですか。すごくリアルを追求した作品になっていると思います。そういう人間模様や人の生活を描いた作品に、恋愛の要素が組み込まれているというか。キラキラした恋愛映画が物足りなくなった女性たちにも観てほしいです。というか、俺は女性になってこの映画を観てみたい!

清水 キラキラ映画が現実から目をそらすためにあるとしたら、『ホットギミック』は傷にはる絆創膏のような映画。いくら夢見ても実現しないことを映画で観て、そういった自分の葛藤を一時的に忘れることで日々しのげている女の子たちもたくさんいると思うんです。それでもいいと思うし、それで純粋に楽しめるなら、それはそれで価値がある。でもこれは、現段階で自分たちが持っている恋愛においての傷だったり欠陥だったりトラウマだったりを、忘れるんじゃなくて逆に同じことを摂取して自分のトラ ウマを噛み砕くことによって克服していくような映画なんだと思います。こういった映画を観て一回思いっきりくらうことによってふっきれるものがあるし、見つかるものは絶対あるはず。

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—— 公開が楽しみです。今号のテーマが「ヒーロー」なんですけど、自分にとってヒーロー的な存在はいますか?

板垣 ヒーローの定義って何だろう。救ってもらう象徴ってことですよね……僕、あんまりヒーローが好きじゃないんです。でもだからこそ、すごくリアルなとこにそういう存在がいるというか。今までに出会って、僕のことを手助けしてくれた人たちのこと絶対忘れないし。自分が今仕事してるのもそうだし、生きてるのもそうだけど、僕が頑張る糧になってる人たち。今という時間を一生懸命に生きているすべての人が僕にとってはヒーローですね。その人たちがいるから僕は頑張れている。頑張って稼いだお金で映画を観てくれる人もそうだし、お金が無い立場で頑張ってる難民の人もそう。きれいごと言うわけじゃないけど、それがあるだけで自分もちょっとでも頑張りたいと思うし。だから僕はそういう人たちのためにお金を稼ぎたいんです。

—— ゆくゆくは学校や病院を作ったり?

板垣 そう、俺、学校とか建てたいもん(笑)!

—— では、みんなのリーダーとなるような一般的なヒーローというものに疑念を抱くようになったのはどうしてですか?

板垣 二歩前に出て「なんだと!?」っていう、あれがちょっとかっこ悪いなと思うんです。あれは僕のなかでヒーローじゃないんですよね。僕にとってのヒーローって、一緒に頑張ってくれてる人とか、自分が苦しいときに救ってくれる人なので。それって結局、僕がその人のために頑張りたいと思えるすべての人。すべての人たちが僕にとってヒーローなの。なんて言えばいいのかな、自分より弱い存在でありながら一生懸命やってる人って本当にすばらしいじゃないですか。自分より強い存在でもいいんですけど。一瞬でも一生懸命何かに打ち込んでいる人を見るだけでも僕は救われた気持ちになるので、そういう人がヒーローだと思います。

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—— 映画やマンガで好きなヒーローキャラはいないですか?

板垣 好きなヒーローキャラ? なんだろ……。

清水 俺、『ダークナイト』のジョーカーが出ちゃった。

板垣 俺もジョーカー出た! 超かっこいいよね!

清水 あれヒーローじゃないから。あれはヴィランだから(笑)。

板垣 でも超かっこいいんだよね〜。あと俺、ウルヴァリン好きですよ。人生で過酷な境遇もあり、名前を失い、それでも死ねないから生きるしかないっていう、あの残酷さにリアリティがある。フィクションなんだけど、そのなかのリアリティラインがすごくしっかりしているから好きですね。ウルヴァリンは好き。信じられる。なんかいる? 好きなヒーロー。

清水 思い浮かばないな……。

—— あこがれた人もいませんか?

清水 あこがれた人……。基本的に僕、人にあまり影響を受けないんですよね。良くも悪くも頑固なのか。

板垣 親は?

清水 あ、俺が人生のうちで唯一影響を受けるなって思うのは、母親と兄貴と好きになった子だけですね。家族は僕を弱い部分も含めていちばんよく知ってる人たちであって、だから僕に言うこともたいてい正しいんですよね。あんまり他人の前では泣かないんですけど、家族に僕のイメージを聞くとすぐ泣き虫って言うんですよ。それぐらい家族の前ではよく泣いてます(笑)。

板垣 俺、逆だわ。家族の話は聞かないし、家族の前では泣かない。

清水 でも、なんかそうやって人に影響を受けたりしても、結局意思決定をするのは絶対自分。最終的には自分でないといけないと思っています。僕はいつも自分自身がヒーローだと思ってる、というかヒーローでいたいです。

板垣 名前が尋也だし。

清水 そうだね(笑)。

—— そうやって自分の道を自分で選んできた結果、今があるんですね。

清水 AとBの選択肢があって自分はBかなって思っていても人にAにしたほうがいいよって言われてAを選んで、成功したらまあいいけど、その選択が失敗したら絶対に人のせいにするじゃないですか、人間って。僕も絶対そうしちゃうし。だから、どうせ後悔するんだったら、自分で選んで後悔したほうがいい。自分を過信してるわけじゃなくて、失敗するにしてもしないにしても自分を決めていくのは自分自身だから。もし僕が自分のやりたいように進んでいったときに、その結果として食べていけなくなったら、それは僕が負けただけであって。負けるっていうのは誰かに負けるとかじゃなくて、人生というフィールドにおいて自分の選択がどこかで間違ってただけ。僕は自分で選んでいるからそうなっても後悔しないし、喜んでのたれ死にます、みたいな感じです(笑)。そうやって自分で決めて成功していけば自信もつくし、これから先何かを選択するうえでの大きな裏付けにもなっていく。誰かの背中を見て歩いてるわけじゃなくて、自分の目で前を見て歩いていく。だから絶対、自分が自分のお手本でありたいですね。

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『ホットギミック ガールミーツボーイ』
公開日: 2019年6月28日(金)公開
キャスト: 堀未央奈、清水尋也、板垣瑞生、間宮祥太朗 他
原作: 相原実貴「ホットギミック」(小学館「ベツコミ フラワーコミックス」刊)
監督・脚本:山戸結希(『21世紀の女の子』『溺れるナイフ』他)

Credits


TEXT MOMO NONAKA

PHOTOGRAPHY BUNGO TSUCHIYA
STYLING MASATAKA HATTORI
Hair and Make-up Yoshikazu Miyamoto at Be natural.
Photography assistance Masaki Nagahama and Toshiki Fukunaga.
Styling assistance Shohei Miura and Midori Namekata.
HIROYA AND MIZUKI WEAR ALL CLOTHING GUCCI.

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Mizuki Itagaki