Charlee wears all clothing Chanel. Makeup Rouge Allure 'Rouge Ingénue'. Crayon Lèvres 'Natural'. Rouge Allure Ink 'Amoureux'.

色と感情の研究:シャネルのルチア・ピカ Interview

1年半の試行錯誤を経て完成した、ルチア・ピカのCHANELデビューコレクションLe Rouge Collection N°1は、赤という色に向けたモダンなラブレターである。

by Holly Shackleton; translated by Aya Takatsu
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maj 9 2018, 6:27am

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Makeup Stylo Yeux Waterproof 'Eros'. Les 4 Ombres 'Candeur et Expérience'. Rouge Allure 'Ingénue'. Crayon Levres 'Seduction'. Crayon Lèvres 'Natural'

Makeup Les 4 Ombres 'Candeur et Expérience'. Joues Contraste 'Rouge Profond'. Rouge Allure 'Rouge Ingénue'. Dimensions de CHANEL Mascara 'Subversif'.

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2014年にCHANELがルチア・ピカをグローバル・クリエイティブ・メークアップ&カラー・デザイナーに指名したとき、ファッション界は歓喜に包まれた。優れた人にこそ奇跡が起きることの好例だったからだ。指名から1年半を経て、ルチアはCHANELでの待望のデビューコレクションLe Rouge Collection N°1を発表。赤という色を賞賛するこのコレクションは、スイカやバラ、サフランからテラコッタまで、それぞれの色が持つあらゆる色調と感情を余すところなく表現している。「赤という色にとりつかれています」とルチアは話す。「ずっとよ。女性らしさ、愛の活力、欲望、健康、熱情、若さ……、そういったものにとても強く結びついている色。私にとって赤はとても強い色だし、CHANELの世界にも息づいている色ですから」。1924年に最初のメイクアップラインを立ち上げて以来、赤はCHNAELのDNAの象徴する色となってきた。「ココ・シャネルはこう言っています。『ルージュをまとって、挑みなさい』」とルチアは話す。「彼女は赤を愛していました。赤は生命、血、そして情熱の色だし、内なる感情を呼び起こす色なのです」

黒のリネンシャツにブルージーンズ、そして足元にはCHANELのパンプスを合わせ、そのダークブラウンヘアをブラッドレッドのリップで締めたルチアは、温かく、活力に満ち、そして美しい。1976年にネパールで生まれた彼女は、メイクアップアーティストとして1999年にロンドンに移住。その地でシャーロット・ティルバリー(Charlotte Tilbury)に師事し、2008年に独立した。強い色調に対するその情熱と、時代の潮流をとらえる資質が、彼女を美容業界の最前線へと押し上げた。そして今もCHANELのビジョンを追求しながら、メイクの未来を創出し続けているのである。

CHANELでのデビューコレクションでは、ネイルやリップ、チーク、そしてアイシャドウやアイペンシルなどを通して、赤の概念を変えようと試みた。「目の周りに赤を配すると、病的になったり疲れて見えるんじゃないかと思われている。でもそうじゃないんです」とルチアは言う。「より明るく見せてくれるのです」。Le Rouge Collection N°1のカラーパレットには、地中海風の淡い色合いもふんだんに含まれている。頰全体にチークを入れたり、リップを塗ると、赤みがさしたり火照ったりしているように見えるので、顔の印象を一瞬のうちに変えることができるのだ。ビーチで1日過ごしたあとの火照った体や、運動したあとの健康的な熱、初恋の温かな赤みをさしたかのように。「対比はCHANELにとってとても大きなものです」とルチアは説明する。「たとえば、対局にある質感。マットなアイシャドウと光沢の強いもの、モダンとクラシック、昼と夜……といったようにです」

デビューコレクションに着手するにあたり、ルチアは親しい友人でもある写真家マックス・ファラーゴ(Max Farago)と共に、A3サイズのムードブックを作成した。この火のような色の持つ詩的でエモーショナルな力を探求したのである。血のように赤いシャクヤク、素肌、朽ちかけた花びら、水中でのインクの広がり、絵の具の飛び散りなどを通して、ルチアの創作過程やコレクションの裏側で行われた入念なリサーチをつまびらかにする一冊だ。「CHANELの美容研究室は、大人の遊び場みたいなんです」とルチアは青い目を輝かせて話す。「あの人たちはクリエイティビティを本当に信じている。こんなふうに色の実験ができるなんて、すごく名誉なことです」。タンクいっぱいの水に浸けた真っ赤なユリを通して光を屈折させたり、虹色をつくるためにキャンドルを溶かして混ぜたり。その研究手法は、マジカルで刺激的なものだった。そして「色についてだけじゃなく、感情も研究しました」とルチアは続けた。

「いつも『自分ならこれをつけるか?』『これをつけるとどんな感じがするか?』と考えています」とルチアは言う。最終的なプロダクトは常にリアルなものであるべきと認識しているのだ。「頭の中にあるコンセプトを、実生活に変換していくのはすごく楽しい。でも女性の顔にのせるものだということは、いつも念頭に置いています」。商品化できそうなものは自ら試したり、仲の良い友人にテスターを頼むのだという。「クロエ(・ケーマン 治療師となった元ファッションエディター)はミューズのひとりです。彼女のメイクはいつもすごく上品なんです。メイクの濃さに関わらず、常に美しい。フラン(・バーンズ スタイリストで『VOGUE』誌に寄稿するファッションエディターでもある)もそのひとり。毎日話をしています。彼女たちはとても直感的で知的なんです。すごく刺激を受けますね。私はいつだって女友だちが言うことや、物事に対する彼女たちの反応に耳を傾けています」。ルチアとCHANELがLe Rouge Collection N°1の顔として選んだのは、クリステン・スチュワート。それは彼女がパンクな精神を持つ女性だったからだ。「クリステンはとても知的です。自分らしくいることを恐れないし、それが魅力的だと思います」とルチアは語る。「キャンペーンで個性や強さのある女性を立てることはCHANELにとっても大事なことだと思います」

グローバル・クリエイティブ・メークアップ&カラー・デザイナーとして、ルチアは月に2回パリを訪れている。年に4回のシーズンコレクションを含めたCHANELの美容プロダクトをすべてデザインしなければならないからだ。しかもプロダクトには広告も関わってくる。「CHANELがそのポジションに次世代の人間を選ぶところが大好きです」と彼女は言う。「それに女性を選ぶところも。意味のあることだし、ワクワクするでしょう」。そのポジションの重責が彼女を変えることはなかった。ルチアは地に足をつけていたいと心を決めている。「自分の後ろにあるすごい肩書きのことは考えないようにしています。自分が感じていることに集中したいので」

CHANELの2018年春夏コレクションに向けて多忙を極めるルチアだが、空いた時間を『i-D』や『AnOther』、各国の『VOGUE』のエディトリアルに費やしている。そうした場で、アラスデア・マクレランやウィリー・ヴァンダーピエール(Willy Vanderperre)、アンジェロ・ペネッタといった友人や、長きにわたるコラボレーターと一緒に仕事をするのだ。「最高の作品は、自分が個人的なつながりを持つ人たちとしたものです」と彼女は言う。「アラスデアと仕事するのは大好きです。彼は女性の強さと美しさを引き出してくれるから」。強さと美しさは、ルチアの作品の特徴でもある。「どう見せるべきかを女性がほかの女性に教えるのにはもううんざり。『輪郭をはっきりさせてハイライトを入れなきゃ、メイクは完成しない』とセレブは言って、女性たちの不安を煽ります。私は自分のコレクションにリアルな目的意識を持たせたいんです。メイクには遊び心がないと。誰だってはっきりしないことをするときには怖気づく。そして同じことを繰り返してしまう。輪郭をとって、ハイライトを入れたりして……。でも、そんな垣根や恐れを振り払って、実験しませんか? どうせ落としてしまうものですし」

Credits


Photography Zoe Ghertner
Styling Marie Chaix
Make-up Lucia Pica
Make-up Lucia Pica, Global Creative Designer for Make-up and Colour at Chanel, at Art Partner using Chanel Fall 2016, Le Rouge - Collection No.1. Hair Yannick D'Is at Management + Artists. Nail technician Alexandra Janowski at AIM Artlists using Chanel Le Gel Coat. Set design Nicolas Mur. Photography assistance Corentin Thevenet and Alexis Parrenin. Styling assistance Florie Vitse. Hair assistance Sadek L. Make-up assistance Camilla Romagnoli. Production Judith Bazin at Art Partner. Model Charlee Fraser at IMG.

Transration Aya Takatsu.

This article originally appeared on i-D US.