整形大国・韓国とヨーロピアンな美の関係

西洋の美の基準をベースに成り立っている韓国の美の理想。シリーズ作品『Live Your Dream』で、ファン・ウイジプは、そんな“美”の虚構を問う。

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sep 8 2017, 4:41am

This article was originally published by i-D UK.

国際美容形成学会(ISAPS)の報告によると、韓国では女性の2割が美容整形を利用した経験を持つという。驚愕の数字だ。アメリカでは、『Nip/Tuck マイアミ整形外科医』や『Botched』、『Dr. 90210』などのテレビドラマが人気を博し、またカイリー・ジェンナーの唇を真似て女の子たちがぷっくりとした唇を再現する"リップ・チャレンジ"が流行するなど、整形手術が日常風景の一部となっているにもかかわらず、美容整形手術を利用した経験を持つ女性の割合は5%にとどまっている。韓国は「整形大国」と呼ばれており、高校の卒業祝いとして鼻の整形手術がプレゼントされるのも一般的だという。

ニューヨークを拠点に活動するビジュアル・アーティストのファン・ウイジプ(Eui-Jip Hwang)は、シリーズ作品『Live Your Dreams』で、自身の出生の地である韓国に蔓延する美容整形手術の現状を描いている。彼はグラフィックデザインや、広告からの画像借用、ビフォーアフターのイメージを用い、極端に理想化されたシュールな作風を作り上げることで、韓国人の容姿に対する執着に問いを投げかけようとしている。そこには、韓国の美容整形業界が国民に発信している極端に概念化された "完璧な容姿"が打ち出されている。

「アーティストとして、写真やイメージがどのように社会へ影響を及ぼすかについて探りたいのです」と、NYのアート学校スクール・オブ・ビジュアル・アーツを卒業したばかりのファンは話す。たしかに韓国のビューティ業界は、社会とそこに暮らす国民に対して圧倒的な影響力を持っている。他の国では見られない傾向として、韓国では男性も美容への関心が高く、男性用メイク市場もある程度の規模で存在している。実際、男性を対象としたホワイトニング・クリームも売れているという。「韓国の男性ビューティ市場は数年前から広がりだしたばかりで、当初は需要がなかったのですが、企業が巧妙な広告戦略を打ち出し、市場を確立させたのです」と、ファンは説明する。「現在では、男性セレブが女性用ビューティ製品の広告に起用され、両ジェンダーがお互いを高め合い、ビューティにおけるジェンダー観が薄れてきています」
ファンのコラージュ作品は、西洋人の美の基準を模した"透き通るような白い肌"からカラーコンタクト、そして国民全体が年間に50兆USドルを費やすという韓国美容整形手術の現状まで、すべては「幸せであるため」に容姿に手を加える韓国について探っている。

『Live Your Dream(夢を実現する)』というタイトルにはどのような意味が込められているのでしょうか?
韓国にある美容整形外科クリニックが掲げているモットーをそのまま使いました。「容姿が社会的地位を左右する」という現代の韓国社会が、そこに如実に現れていると思うんです。韓国では、履歴書に顔写真を添付して提出することを求められます。容姿はスキルのひとつとして考えられている——「美しい」「可愛い」といった容姿を作れる能力として捉えられているのです。韓国は、集団的に美容整形と"美のためのお手入れ"を通して若く美しくあろうと懸命になっています。

これらの作品で、韓国における美の理想について何を訴えているのでしょうか?
韓国人の美に対する執着は、西洋の美の基準が生んだ産物です。しかし、西洋を基準とした理想の美は、韓国人の顔に合わせて絶妙に作り上げられているので、国民はそれが西洋を基準としたものだとは気づいていません。西洋を基準とした理想の美は、いまや韓国人にとって標準となっています。誰も白人のような容姿を目指しているわけではありません。それでもやはり、この概念は韓国社会が白人のステレオタイプをどう見ているかを如実に物語っています。白い肌に大きな目、筋の通った鼻、薄い瞳の色、髪の色、エラの張っていない小さな顔といった具合に、やはり白人の典型を追い求めているわけです。Kポップのセレブに憧れ、同じような容姿を手に入れたいと、肌の白さやカラーコンタクトを使った瞳の色を真似るようになる子どもが韓国にはたくさんいます。政府はKポップを一大グローバル市場にしようと世界展開に巨額の投資をしてきました。結果として、政府は作られた韓国人のイメージを世界に発信するのに、国民に一役買わせているわけです。

具体的に、西洋の影響がどう韓国の美のあり方を変化させたのでしょうか?
歴史的にみて、西洋の影響が及ぶ以前にも、韓国の女性たちは色白を好む傾向にありました。それが社会的地位を示すものだったからです。色黒は、照りつける太陽の光の下で肉体労働をする貧困層を示すものと考えられていました。しかし、現在の韓国では、男性用のホワイトニング・クリームがあったりして、白人モデルや、ヨーロッパの美の価値観を体現したような韓国人セレブを起用した広告に感化され、男性までもが美白を好む傾向にあります。

作品の基調となっている桃色はどのよう意味があるのでしょうか?
現代の韓国人を表現するには、その肌の色を桃色で物語るしかありません。元は黄色味がかった韓国人の肌に、白人の肌の桃色を足して作った色です。白人の肌に比べて、アジア人の肌は"黄色い"とされます。それを逆の視点から見て、肌を"桃色"としたわけです。韓国のビューティ業界は、東アジアの美の理想を新たに作り変えることができるだけの力を持っています。

作中で用いている広告写真やモデル、その他の被写体は、どのように見つけたのですか?
現代韓国を象徴するような画像を集めています。美容整形外科医が持つ過去の術例サンプル画像だったり、美容広告だったり——商業写真が持つ魅惑的な力を作品で扱っているということもあり、韓国での作品発表は避けています。これが美容整形外科医にサンプルとして使われてしまってはなりませんからね。わたしには責任があります。だから、作品がどこで発表されるかは、わたしが責任を持って決めなければならないと考えています。韓国以外でなら、屋外広告のビルボードなどにこの作品群を掲げてみたいです。

Euijip.com

Credits


Text André-Naquian Wheeler
Photography Eui-Jip Hwang
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.