DJシャドウの人生を変えた楽曲

初めてレコードを買った1980年から、ヒップホップとの出会い、そして自ら音楽を作る立場となった現在まで——DJシャドウの音楽的軌跡を、本人とのインタビューを通して辿る。

by Francesca Dunn
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26 August 2016, 3:56am

過去四半世紀にわたり音楽キャリアを築いてきた、DJシャドウ(DJ Shadow)ことジョッシュ・デイヴィス(Josh Davis)は、実験的ヒップホップの世界において、これまで一貫して重要な役割を担ってきた。デビューLP『Endtroducing......』でそのサンプリングが話題となり、後のシングル「In/Flux」ではジャンルを超えたサウンドがジャーナリストたちを困惑させ、「トリップホップ」という言葉まで生んだ。実験的音作りの姿勢を貫き続ける彼がつい先日リリースしたLP『The Mountain Will Fall』には、ラン・ザ・ジュエルズやニルス・フラームなどがフィーチャーされており、またしても聴く者を圧倒する内容となっている。他の追随を許さない素晴らしいディスコグラフィーと膨大な量のレコードコレクションを持つ彼。i-Dは今回、DJシャドウの人生を変えたレコードの数々について、本人に話を聞いた。

最初に買ったレコードは?
Devoが1980年にリリースしたアルバム『Freedom of Choice』。どこかのモールで両親に、「誕生日プレゼントを買ってあげるから、好きなものを選びなさい」って言われたんだ。当時の俺は、未来的な響きの音楽が好きでね。ラジオで『Whip It』を聴いて、こういう音が好きだって思ってたんだ。8歳くらいだったから、まだシングルっていう概念を知らず、音楽はアルバムで買うものだと思ってた。当時、うちにはまだターンテーブルがなかったから、カセットで買ったんだ。

最初に行ったギグは?
オークランド・コリシアムで開催されたDef Jam 88だったね。ランDMCやDJ・ジャジー・ジェフ&ザ・フレッシュ・プリンス、EPMD、それと俺のヒーロー、パブリック・エネミーら、ラッセル・シモンズが立ち上げたRushの所属アーティストたちが参加するパッケージツアーだった。当時は15歳で、俺が師匠と仰ぐDJ、オラス・ワシントン(Oras Washington)に連れて行ってもらった。バックステージでアーティストたちに会えるってオラスは言ってたけど、結局実現しなかった。なんとか全員のサインを直接もらうチャンスは得たけどね。

子供時代を思い出させてくれる曲は?
70年代アメリカでは『セサミ・ストリート』がとにかく大人気だった。あの番組で有名になった音楽のほとんどは、ジョー・ラポソっていうミュージシャン/作詞家によるものなんだけど、ラポソがここまで過小評価されているのは犯罪に近いことだと思うよ。ラポソと、映画音楽の巨匠ジョン・ウィリアムズが俺の子供時代のサントラを作った人たちだと思うね。

青春時代に、音楽の素晴らしさを気づかせてくれた曲は?
夢中になりつつ、これこそが俺の目指す音楽性だと思った曲は、リップス・インクの「Funkytown」。ヴォコーダーを使ったロボットみたいな声が、俺の大好きな『GALACTICA/ギャラクティカ』やなんかのSF番組を彷彿とさせて、好きだったんだ。それ以前にも好きだった曲はあったけど、どちらかというと「親父が好きなんだからいい曲なんだろ」って感じで、自分の趣味ってわけじゃなかったんだと思う。「Funkytown」には、新しい何かを感じたんだ。

あなたにDJを志させたレコードやイベントは?
俺がラップとヒップホップに傾倒し始めたのは1982年だったんだけど、グランドマスター・フラッシュの『The Adventures Of Grandmaster Flash On The Wheels Of Steel』は俺の人生において大きな意味を持つレコードになったね。その後、「DJもドラマーやベーシストと同様、れっきとしたミュージシャンなんだ」と感じさせてくれたのは、UTFOの「Roxanne, Roxanne」だった。ランDMCのジャム・マスター・ジェイみたいなDJは、グループにおける影の存在でありながらも最終秘密兵器みたいでかっこいいと思った。敬意を要求するような絶対的な、あの存在感がね。

カリフォルニア出身のあなたですが、故郷を思い起こさせる曲とは?
ドクター・ドレーの「Let Me Ride」か、ザ・ルーニーズの「I Got 5 On It」かな。どっちも好きだから、どっちを選んで書いてもらってもかまわないよ。「Let Me Ride」は、どちらかというとロサンゼルスの雰囲気で、「5」は完全なベイエリアの音——俺の故郷の音だね。以前、長いツアーを終えてひどいホームシックになったときがあった。ツアーの最終地はブルガリアだったんだけど、地元への飛行機に乗ったら「5」が流れてきた。早く家に帰りたいって思ったよ。

In/Flux』を制作していた時期にはどんな音楽を聴いていたのでしょう?
いろんなものをまんべんなく聴いてたよ。いま思えば、リリースされるラップレコードを全部聴かなきゃっていうこだわりみたいなものが無くなり始めたのがあの頃だった。ラップの黄金期が終わろうとしているように感じられて、サンプル探しで古いソウルやロック、ジャズなんかを聴き始めていたね。

レーベルMo'Waxからリリースされた曲で一番好きな曲は?
R.P.M.の『2000』と、ザ・プルーンズの『The Plot』が同点でトップだね。Mo'Wax創立者のジェームス・ラヴェル(James Lavelle)が選ぶ曲すべてを良いとは思わないんだけど、あの2曲に関してはレーベルのビジョンと可能性を大きく打ち出した傑作だと思うよ。

他のアーティストが作ったレコードで、「これは自分が作りたかった」と思わせられた作品は?
そんなのたくさんあるよ。毎日新しいレコードを聴くからね。俺はまず音楽ファンであって、それが高じてDJになりたいと思った。だから、「こんなレコードを自分で作りたかった」と唸らされた曲なんて、並べ始めたらきりがない。1曲選ぶなんてムリだね。

最後に買った曲は?
新しい音楽に関しては、BBC1のために作った最近の『Essential Mix』に使った曲かな。どの曲だったかは思い出せない。今や新しい曲はほとんどタダで手に入るわけだけど、その曲はBandcampで「お好きな額をお支払いください」的なシステムでダウンロード可能になってた。そういうところでは、必ず幾らかはお金を払うようにしてるよ。デジタルで最後に買ったフルアルバムは、ケンドリック・ラマーの『Untitled, Unmastered』。

ニルス・フラームと『TMWF』をコラボレーション制作することになった経緯について教えてください。彼のどのトラックが特に気に入っていますか?
アルバムにボーカルじゃなくて、楽器演奏者をフィーチャーしたら面白いと思ったんだよね。特に、音楽的に俺たちとは違う空間に属してるようなミュージシャンを。ニルスの作品で最初に俺が気になったのは、「Hammers」だったよ。

あなたが「好き」と言ったらリスナーがきっと驚くに違いないトラックは?
実は密かに、よく書けたポップソングが大好きなんだ。ニコレット・ラーソンの「Lotta Love」はそれの好例。それが実はニール・ヤングの曲だと知ったのは、最初に聴いてからずいぶん後のことだった。もう1曲、色褪せないポップスの名曲だと思うのは、スピナーズの「I'll Be Around」。70年代は、作曲とミュージシャンのこだわりが最高潮に達した時代だったと断言できるよ。

ヒップホップの未来を担うのは誰だと思いますか?
オリジナリティ、クリエイティビティ、そしてスタイルをいかんなく発揮しているアーティスト。そんなアーティストは、現れては消えるわけだけど、そのルールだけは変わらない。

これまでサンプリングした曲で一番のお気に入りは?
これまたひとつだけ選ぶというのは難しいね。でも、フィンランドのジャズアーティスト、ペッカ・ポーヨラの「The Madness Subsides」かな。「Midnight In A Perfect World」でメインのメロディに使ったサンプルだよ。

Credits


Text Francesca Dunn
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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