イヴ・サンローラン社設立者 ピエール・ベルジェ氏が9月8日に永眠

イヴ・サン=ローランの公私におけるパートナーとして、最上の理解者であり続けたピエール・ベルジェ。激動の人生を歩んだファッション界の重鎮がまたひとり、静かに眠りについた。

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sep 13 2017, 11:45am

すべてを投げ打ってまで一人の才能を信じ、生涯守り続けた人がいるのだろうか。

ピエール・ベルジェの動向が顕著となったのは、2008年に最愛の人イヴ・サン=ローランを失ってから3年後。サン=ローランと共に収集してきた美術品を、この世を去る前に整理しておきたいという想いから、彼はサン=ローランとの思い出を回顧録として収めたドキュメンタリーへの出演を承諾したという。思い出をひとつひとつ、美術品とともに語ったその姿は、豪華カタログ『イヴ・サンローラン&ピエールベルジェ・コレクション世紀のオークション』収められている。イヴへの愛が綴られた手紙として、2011年に出版された『イヴ・サンローランへの手紙』では、赤裸々にふたりの愛の真実が語られた。その後、立て続けに公開された、サン=ローランの伝記映画は2本。異なった視点ながらも、サンローランの成功とその裏に隠された精神的苦悩は、スキャンダラスに痛々しく映し出されていた。世紀のデザイナーがこの世を去ってからのこの数年間の回想劇は、あたかもベルジェが先を急ぐように着々と進めていた準備であるかのようにも思える。しかし、私たちがサン=ローランを介してピエール・ベルジェという人物を改めて認識したのは、もしかしたらそのときが初めてだったかもしれない。

クリエイティビティの持続とプレッシャーから次第にその情緒を崩していったサン=ローラン。彼に振り回され、別離を悩みながらも、そばを離れなれることのなかったベルジェにとって、サン=ローランはどんな存在だったのだろうか。映画のなかでもベルジェはあまり自身について語らない。ただ、彼がカタチにしてきたものは、ファッションを超えて文化の歴史に残るものであり、彼なしにはそれは存在しえなかったということを忘れてはいけない。

イヴ・サン=ローランという世紀のデザイナーの功績を次の世代に残すべく、最後まで現役で活躍し続けたベルジェについて、現在Saint Laurentでクリエイティブ ディレクターを務めるアンソニー・ヴァカレロは次のように語る。「ベルジェ氏は、パリとマラケシュにオープンするサンローラン美術館を大変気にかけておられました。そのオープンを彼とともに迎えられないことを、大変残念に思います。私たちは、フランス文化にとって非常に大きな存在をなくしてしまいました」

「彼は最後までクリエイティビティの力を信じ、アートやファッションそしてカルチャーによって、私たちの生活や生き方を変えることができると信じていました」と、Saint LaurentのプレジデントでありCEOのフランチェスカ・ベレッティーニは、ベルジェの信念をサンローラン社の真髄として語っている。

イヴ・サン=ローラン帝国を創り上げた手腕はもちろんのこと、精神衰弱がちだったサン=ローランを最後まで支え続けてきたベルジュの愛は計り知れない。彼はクリエイティビティによって幾度となく時代の壁を乗り越えてきたのだろう。現在、パリとマラケシュに完成予定のサンローラン美術館は着々と開館の準備を進めている。完成した暁には、芸術を愛し、愛を信じて疑わなかったベルジュの功績はより高く、世界中から祝福されることだろう。