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オカモトレイジの案内で振り返る、24時間限定エキシビジョン「YAGI」

ByTatsuya Yamaguchiphotos byRiku Ikeya

月曜日の夜。中目黒駅からほど近く、目黒川沿いに位置するWK galleryには、会場から溢れかえるほどの人が集っていた。オカモトレイジがキュレーションを手がけた24時間限定開催のエキシビジョンマッチ「YAGI」にユースたちが駆けつけたのだ。

2017年11月27日(月)19時半。その頃には既にレジに並ぶ人で長蛇の列ができていた。静かな熱量がWK galleryを包み、作品を眺める人、談笑を楽しむ人、あるいは偶然かつ久々の再会に興奮する人たちの声が四方から聞こえてくる。その晩から開かれたのは、OKAMOTO’Sのドラマーであるオカモトレイジがキュレーションを手がけた合同展「YAGI」だ。彼の案内のもと、人混みを縫うようにしながらすべての作家を紹介してもらった。

あえて一貫したテーマを設けず、まさに「自由放牧」のようにそれぞれが思い思いの作品を展開・販売しているのも「YAGI」のメインコンセプトだ。が、参加プレイヤーたちがセレクトした音楽とともに、不思議な一体感が会場に発生していたのはオカモトレイジのキュレーションの才覚以外のなにものでもないだろう。

会場入口すぐに展示されている、写真や書類、煙草などを赴くままに、もしくは「記憶」を重ね合わせるかのようにつくられた、Yabiku Henrique Yudiによるコラージュ作品に目を奪われる。作品のグラフィックがハンドプリントされたフーディやTシャツも販売されている。「最近始めたコラージュに夢中で、本気で作品制作をやろうとスタートしたばかりです。テーマはさまざまですが、僕の彼女がロシアに旅行したときのお土産を組み合わせたり、大好きなカニエ・ウェストの幼少期の写真をミックスしたり、miu miuの2052年春夏を想像したりして作っています」と、オカモトレイジに紹介された20歳のYabikuは解説してくれた。

前衛的な木製職人集団である松本ツキ板による、特許取得済みの錆塗装・加工が施されたスケートデッキやプレイステーション4、iPhoneケースがひときわ異様な物体感を醸し出していた。「もともと俺の父親の友達だった、松本ツキ板をやっているダイスケは今回参加してくれた人たちの中でも最も古い友人です。俺が5歳の時に、彼は20歳。いつも遊んでもらっていて一緒にレイブにも行ってました。5〜6年前にTwitter上で再会してからふたりで会うようになって、今回参加してもらったという経緯です」

次は、札幌を拠点とするポストハードコアバンドthe hatchのブースへ。「ギターとベース、ドラム、そしてヴォーカル兼トロンボーンの4人組。ヴォーカルの山田みどりとは、3〜4年前、俺が米騒動や爆弾ジョニーと対バンしていた頃に知り合い、音楽の趣味が合うからすぐに仲良くなって。バンドも狂気的なほどかっこいいので、東京の人にも知って欲しくて参加してもらいました。Tシャツに加えて、マイちゃんという女の子が撮った写真集ZINEは、音源のダウンロードコード付きです」

複数の参加プレイヤーがデザインを手がけたウェアがハンギングされたラックに移動。「秋葉原サイファーによるTシャツとCD音源。彼らは、秋葉原に突如として現れたオタクたちによるフリースタイルラッパー集団です。その中心人物が、俺の中高の同級生であるMCコース。すごく面白いのが、普通のフリースタイルとは文脈の組み方がまったく違っていて、本当に予想不可能なんですね。ただただ好きなことを語り続けるという独特なラップがコミュニケーションツールとしても機能していて、熱量もすごいし、感動的なバトルを繰り広げています」。その隣には謎のラッパー、Qiezi Mabo(チェズマボ)。「ジャージ。そしてQiezi Maboの本物のマスク。これ以上は紹介のしようがないですね。Fire-Kingのロゴをパロった『Star Beach love』という、松本ツキ板とコラボした食器もありますね」。続いて、蛍光ピンクのバラが大きくプリントされたTシャツとスウェット。「最近だとMAGiC BOYZや電波少女のプロデュースをしているYohji Igarashiというトラックメイカーによるものです。彼を紹介するとしたら、同い歳の仲良い友達。以上です(笑)。新作のEP『PINK』も発売されています」。そして、KANDYTOWNのIOとYOUNG JUJUがデザインしたフーディも。「おそらくほぼ初めての物販だと思いますね。IOは中学校の同級生で、YOUNG JUJUは中学校の後輩。もうかなり長い仲ですね」


デザイナー玉田翔太が手がけるTTT_MSWのTシャツの胸元には、ビジューでトリミングされた蝉の刺繍が施されている。「イギリス人の画家で、日本在住のフレイヤ・ディーン(Freyja Dean)とのコラボレーションですね。今回、大型のアート作品も展示している彼女は、松本ツキ板の方の紹介で参加してくれました。初めて知り合う人もいるんですよ」。デザイナー(通称:Tamashabu君)とのつながりを尋ねると「CreativeDrugStoreのポップアップの時に、(THE OTOGIBANASHI'Sの)に紹介されたのが最初だったかな」

映像作家の山田健人は、「少し前に恵比寿リキッドルームで彼自身が行ったインスタレーションのイメージをプリントしたTシャツを持ってきてくれました。大人になったときにきたいなと思って俺も買いました」

その山田健人と俳優の菅田将暉と制作した映像で一躍注目を集めた、日本一有名な一般人こと野﨑浩貴は、「動物園が好きなんですが、だいたいガーゼタオルが売ってるじゃないですか。それを僕のイラストで作ろうと。映像と違って、今回は血とかないので安心してください(笑)」と話す。その隣には、極onTheBeatsのマフラータオルがあるが「実は今、このタオルで汗を拭きながら鎌倉からこの会場に走って向かっているんです。24時間マラソンみたいなことをやりたいと言ってきて(笑)」

クリエイティブ集団YOUTH QUAKEの面々が揃うエリアに向かう。SUNHYUP KIMは、会場中央にある紙をしわくちゃにしたような造形のステンレス板でできた彫刻作品とTシャツ。Yudai Tanakaは、プレイボーイに載っていそうなセクシャルな写真をミキシングしたコラージュ作品とZINE、そして「安全運転祈願ステッカー」。car serviceは、微かにディストピア的世界観がかおる花や植物に包まれた車のオブジェとツナギなどのワークウェアにインスパイアされたウェアの数々。「そもそもYAGIをやるきっかけになったのは、YOUTH QUAKEのポップアップに、極とたまちゃんと行ったことから。めっちゃ良いな。俺らもやろうよって。だから今回、YOUTH QUAKEを誘わないわけにはいかなかったわけです」とオカモトレイジ。

24時間限定開催にした理由は、「平日ですけど仕事の前後であったり、地方の人も本気出せば来たりできるかなと。24時間やるイベントは他にないし、訳のわからないことをやりたい。それが自分なりに『新しさ』を求めた結果ですね」。飄々とした彼のコメントに、次のキュレーティングイベントへの期待が高まるばかりだ。