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アメリカ映画が描く「真摯な痛み」Vol. 2

12月17日(日)渋谷・ユーロライブにて、一日限りの上映会が開催! 日本では劇場初公開となる埋もれた名作『マイ・ファースト・ミスター』と、ジェームズ・L・ブルックスやジャド・アパトーも認める現代米コメディ界の最重要人物のひとりであるマイク・バービグリアの最新作にしてジャパン・プレミアとなる『ドント・シンク・トワイス』が特集上映される。

by Takuya Tsunekawa
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14 December 2017, 8:10am

『マイ・ファースト・ミスター』は、14歳で『アイズ・ワイド・シャット』(1999)のロリータ役で注目を集めたリーリー・ソビエスキー演じる17歳の少女とアルバート・ブルックス演じる49歳の孤独で堅物の紳士服店主の交流を描く。実際に当時ハイティーンだったソビエスキーが、多くのピアスやタトゥーを施し、自傷行為を繰り返すほど世に幻滅し希死念慮を抱くゴス少女ジェニファーを好演し、周囲の気取った人間への苛立ちや思春期の思い悩みなど、気まぐれでふてくされたティーンの感情を体現している。現実社会と上手く適合できないはみ出し者のティーンエイジャーを描いたいま改めて観られるべき名作である。

また、7月に開催された「アメリカ映画が描く『真摯な痛み』Vol. 1」で上映された長編第一作『スリープウォーク・ウィズ・ミー』に続き特集される、マイク・バービグリアの長編第二作『ドント・シンク・トワイス』は、売れない即興コメディ劇団を描いた群像劇。エドガー・ライトも2016年のベスト・インディペンデント映画の一本に挙げた本作は、ジャド・アパトー製作総指揮のNetflixドラマ『LOVE ラブ』のジリアン・ジェイコブスや『ゲット・アウト』(2017)の監督ジョーダン・ピールとともに人気お笑いコンビ「キー&ピール」を組むキーガン=マイケル・キーをはじめとした出演者のアンサンブルが見事な傑作ドラメディである。

スタンダップ・コメディを通して夢遊病/睡眠障害の体験を笑いに変える芸人の姿を描いた『スリープウォーク・ウィズ・ミー』で半自伝的内容に取り組んだバービグリアは、ボブ・ディランの名曲からタイトルを引用した続く『ドント・シンク・トワイス』でも観客の散々な目に遭ったエピソードをコメディアンたちが即興で笑いに変えていく姿を描いている。どんなに辛く悲惨な経験をしてもその痛みを笑えるネタにしてやるのだという芸人たる覚悟をさらに深化および洗練させた手法で繊細にあらわしているのである。バービグリアは「芸術は社会主義だが、人生は資本主義」だと標榜し、コメディアンとしての信念と出世への羨望との葛藤を描きながら、ビタースウィートな作風の中に夢や成功とは何であるかを問いかけているのだ。しかし注目すべきは、ここで描かれる即興コメディの哲学とは、誰が一番笑いを取れるか競い合うことではなく共同で支え合ってコントを作っていくことであり、それは他者の思いつきに対して肯定的に乗っかって笑いを生み出すことである点だ。彼らは毎回、舞台に上がる前にどんなことがあってもサポートしお互いに味方であることを「私がついてるよ(I’ve got your back)」とそれぞれの背中に触れ合って表明するのである。

かつてミシェル・トゥルニエは愛情と友情の重大な違いは、「敬意なき友情は存在しないこと」だと言った。ならば、今特集で上映されるどちらの映画においても人と人を結びつけるのは、信頼と尊敬である。競い合うのではなく支え合うことを尊び、くよくよ感傷に浸らずいまを信じようとする真摯さがあるのだ。

今後のソフト化や劇場公開の予定もない一日限りのまたとない貴重な上映会に、ぜひ駆けつけてほしい。

アメリカ映画が描く「真摯な痛み」Vol. 2
日時:2017年12月17日(日) 会場:ユーロライブ(渋谷) 料金:2本立て1000円(入れ替えなし・整理番号制)
タイムテーブル
12:50~ チケット販売開始
13:05~ 開場
13:20~『マイ・ファースト・ミスター』上映
15:25~『ドント・シンク・トワイス』上映

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