掲載されなかった、怪しくエロティックな写真

写真家で『Matte Magazine』誌の創始者でもあるマシュー・ライフハイトは、イェール大学の大学院生。校内紙用に撮影したものの、ボツになった彼の写真が素晴らしい。

by Rory Satran
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03 June 2016, 9:41am

通常、大学院生が『Yale Daily News』紙で働くことはない。しかし、我らが『Vice』誌の寄稿フォトエディターであるマシュー・ライフハイト(Matthew Leifheit)は、イェール大学で美術の修士号取得を目前に控え、学生生活を写真に収めたいと考えていた。それはもはや情熱とも呼ぶべき衝動だった−−舞台のリハーサルやスポーツイベント、紅葉が美しい秋のキャンパスを写真に収めたいがために、この校内紙のスタッフフォトグラファーの役を買って出たほどだ。しかし、彼の写真には、俗に言う"アイビー・リーグの日常的光景"とは違う世界が収められていた。

水泳大会やダンスパーティでたくさんの写真を撮っても、紙面に掲載されたのはごく一部だった。木陰に隠れてキスをするカップルやシャワーを浴びる裸の男子生徒……、これらは校内紙には不適切だと判断された。マシューは次のように話す。「本当に良い写真にかぎって、新聞のストーリーに適していない場合が多い」。そこで彼は、掲載されなかった写真を自分で作った学校未認可の新聞にまとめ、『Yale Daily News』の横に並べて置いた。

それを手に取った客員教授で写真家のコリエ・ショア(Collier Schorr)は、マシューのプロジェクトが持つ反体制的な姿勢に興味を示した。「写真家は不採用の作品にこそ、より強く惹かれるものです。最近は写真という媒介に選択肢がありすぎて、フォトグラファーには世知辛い世界だから」とショアは語る。「『Yale Daily News』を引き立て役にして、自分の作品を際立たせている。すべてマシューが意図的にやっているの。ここに収められている写真はどれも、アンチ報道であり、アンチ現在であり、アンチ特集の姿勢なのよ」

新聞用紙に白黒プリントされた作品群はどれもドリーミーで、ときに怪しくエロティックですらある。そこには、ふだん写されることのない、日常の内部が捉えられているのだ。「彼の写真は学校の歴史に準じているようにも、反発しようとしているようにも見えます」とショアは言う。手前に置かれたマスクとその後ろのドアで佇む男を捉えた作品や、ウィジャボード(こっくりさん)に触れる繊細な手を写した作品などがその好例だ。テニス選手の動きを背後から連写し、フォルムに焦点が当たっている作品などもある。マシューは、「勉強している時も、心が他のところへ行ってしまうことがあるんだ」と言う。彼の作品から浮かび上がるのは、世間が抱いているアイビー・リーグへの幻想と、ごく私的なリアリティから覗くアイビー・リーグの隠された物語なのかもしれない。

Credits


Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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