chelmicoが描く、等身大のラブソング

デビューアルバムの発売とともに、ガールズラップシーンにおける“It Girl”となったchelmico。先日行われた初のワンマンライブは満員御礼。彼女たちが愛される理由とは? 素直で、そして媚びることのない2人の魅力に迫った。

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04 januari 2017, 3:15am

ラップブームが巻き起こる今、独創性を持ったラッパーたちが頻出している。「ウタモノラップ」「ゆるふわラップ」など、さまざまに分類されるラップシーン。その昔、ラップ=ヒップ・ホップなどと安直に結びついていたイメージは、今となっては存在しないに等しい。ラップにかぎらず、すべての音楽シーン上でジャンルの細分化が起きたために、少なからずリスナーも細分化されたように感じる。そんななか、大衆音楽ファンからニッチな音楽ファンまで、境界を飛び越え多くの人に愛されているガールズラップユニット・chelmico。スキルフルなラップと愛嬌抜群のキャラクターから、今もっとも注目を集めていると言っても過言ではない。

アルバムがリリースされてから、chelmicoに対するリスナーの声に変化を感じる?
Rachel(以下R):アルバムには歌詞カードが付いてるので、これまでより聴き込んでくれてる人が多いように感じます。たとえば、「Love Is Over」に自分を投影してくれていたり。
Mamiko(以下M):みんな歌詞をツイートしてくれたりして。そういうのが嬉しいよね。

よくエゴサーチするの?
M:エゴサ芸人です(笑)。
R:1日100回くらいしてるよね(笑)。いいなと思うツイートを見ると、大抵Mamikoちゃんの「イイね」が付いてるんです。天沢聖司かよってなる。「またコイツ~?!」みたいな(笑)。
M:耳をすませば芸(笑)。

先日リリースされたアルバム『chelmico』は、2人が注目を集めるきっかけとなった「ラビリンス'97」やファンの間でも人気の高い「Love Is Over」を含む10曲から構成されている。等身大の歌詞はそのままに、これまでのchelmicoのイメージからぐっと大人の魅力を増したアーバンポップなサウンドが心地よい「Night Camel feat.FBI」など、トラックとしての完成度が非常に高い楽曲が盛り込まれたアルバムとなっている。

アルバムのなかでもお気に入りの曲は?
R:聴けば聴くほど全部好きになっていったかも。特に味わい深いのは「3rd Hotel」とか「Night Camel」とか。どちらもryo takahashiのトラックなんですけど。
M:でもやっぱり「Love Is Over」はすごい。自分たちで言うのもアレだけど、あの曲はすごいなって(笑)。ホントに作れてよかった。

「3rd Hotel」や「Night Camel」がアルバムに入っていることで、ポップになりすぎることなくバランスの取れたアルバムになっているよね。
R:意外と音楽好きな人に聴いてもらえてる気がする。
M:コアな音楽ファンの人たちには、「chelmico大好き」って言ってもらえなくてもいいから、「でもなんかいいよね」って思ってもらえるようになりたい。たとえばPerfumeみたいな人を嫌いな人ってあんまり見かけないじゃん。アンダーグラウンドな人たちに聞いても、Perfumeのことあまり興味ないからかもしれないけど …。でも嫌いとは言わないと思うんだよね。そんな感じになりたい(笑)。
R:それなりに通じるようなものは作っていきたいなと思っています。

アルバムに収録されている楽曲の作詞はすべて2人が担っており、その多くが恋愛をモチーフとしている。彼女たちが描く歌詞の世界には、素直で可愛い女の子になりきれない自分へのもどかしさや、それでも誰かを好きにならずにはいられないどうしようもなさといった皮肉が随所に散りばめられている。しかし言葉尻からは、強くあろうとする健気さや、純粋に恋愛を楽しむごく普通の女の子の姿が見て取れる。そういった日常におけるリアリティがあるこそ、2人をより身近に感じられるのかもしれない。

実生活は創作活動に影響を与える?
R:めちゃくちゃ歌詞にでる。
M:恋愛が激動だと豊作だよね。
R:ありがたいことにね(笑)。「むしゃくしゃしてるから、ちょっと一曲付き合ってよ」って言って書きはじめて。
M:これぐらいにしよって言っても止まらないよね。
R:「まだ書けるから! まだこの温泉は出る!」みたいな(笑)。

冬になると歌詞が書きにくいってインタビューで答えてたよね。
M:脳が停止するんだよね。気が滅入っちゃうというか。だからすごいネガティブなことばっかり出てくる。
R:私は冬のほうがガンガン出てくる。そう思うと私はネガティブなほうが向いてるのかもしれない。
M:ネガティブすぎると chelmicoっぽくないなって思ってしまって、自分のソロのほうに全部持って行っちゃうんだよね。「chelmicoっぽさ」っていうパッケージで判断しちゃう。

chelmicoっぽさに縛られすぎて、歌詞が広がらないときはある?
M:私はあるかも。
R:私はないな。基本的にいつもネガティブだから、Mamikoちゃんがそこでバランスを取ってくれてる気がする。だから私はいつも自由に書かせてもらってます(笑)。

作詞するときは、一人称で書くことが多い?
R:私は一人称が多い。自分のことしか書けないんだよね。人から聞いた話でも、自分のことみたいに書いちゃったりとかするし。
M:私は三人称かな。小説的というか、映像的というか。だけど詩的になりすぎるから、最近は頑張って一人称で書くようにしていて。言葉を崩そうとしているというか、わかりやすい言い回しにしたくて。
R:ポエティックになりすぎると距離が遠くなっちゃうからね。普段の言葉づかいでも、ラップにすれば詩になるって最近気づいて。それで作詞の幅が広がった感じはした。無理して詩っぽく仕上げなくても、普段の言葉づかいでいいよねって。
M:そこを崩せるように頑張ってるんだけど、難しいね(笑)。
R:ロマンチストだからね(笑)。
ポップな存在として、多くの人から愛されている2人。しかし見えないところで、「chelmico」という存在がどうあるべきなのかを貪欲に追求する姿勢が垣間見れる。彼女らが持つ"ポップさ"の裏には、ラップに真摯に向き合い、より高みを目指す熱い想いがある。そのギャップこそがchelmicoが愛される理由なのだと、2人の姿を見るたびに感じる。

chelmicoとして活動していてよかったと感じる瞬間はどんなとき?
R:ライブして、お客さんにすごい良い反応をもらったときとかかな。でもそのあとにどうしても人疲れしちゃって、「疲れたね、休憩行こうか」ってMamikoちゃんと身を寄せ合ってるときが一番実感するかも。今いろいろ思い出して、エモくて泣きそうになってきた(笑)。chelmicoも大事なんですけど、やっぱり1人の友達としてすごい尊敬できるし、こういう人と出会えてよかったなって。
M:嬉しいな。Rachelとは友達からはじめて、今こういう関係になれたことがよかった。
R:友達から一歩踏み込んで、余計に大事な存在になったというか。そう思うときがchelmicoやっててよかったなって思う瞬間かな。
M:それとお客さんが共感してくれたり、私たちを通して思い出ができたとか。そういう声を聞くと、本当にやっててよかったなって思いますね。

では最後に、今年の抱負を。
M:抱負はない!って言ってるだけなんですけどね(笑)。
R:「○○したい」じゃなくて、やるからね。実行しますから。だから抱負じゃなくて予定(笑)。2017年、いろいろやっていくので期待しててください(笑)。

Credits


Photography Ko-ta Shouji
Text Naoko Okada
Location hole hole cafe&diner Shibuya