「ファッションブランドである」とは?

年間最優秀ウィメンズウェア・デザイナーにノミネートされたRodarteデザイナー、マレヴィー姉妹に対し、『Washington Post』紙が、「彼女たちは本当にデザイナーなのか」と疑問を投げかけている。

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jun 7 2016, 6:15am

photography jason lloyd evans

"どれだけのシューズを売ったか"だけでファッションブランドの存在意義が判断される時代にあって、売上以外に存在意義を見出すレーベルがある。ロンドンだけに見られる現象なのかもしれないが、"レーベルを立ち上げて5年間は飲食店の真上にあるフラットで質素に暮らし、事業を地道に展開して、その間にメゾンブランドを多く手がけるLVMHやKering社の目に留まって何かしらのオファーがもらえればラッキー"というのがイギリスでは当たり前だ。しかし、ラグジュアリー・スポーツウェア発祥の地アメリカでは、そのような流れは長らくご法度とされてきた。ブランディングは、ブランドを事業として展開する上で重要な(そして後に大きなお金が関わってくる)部分だからだ。Rodarteが、その一例だろう。コレクションこそニューヨークで発表しているものの、デザイナーのマレヴィー姉妹は、静かな暮らしを優先して、現在も故郷カリフォルニアでひっそりと暮らしている。そしてブランドとしての活動は、レッドカーペットで依頼のあった数点だけを毎シーズン作り、他はカスタムメイドのスタンスを守るためのトランクショーを行なうのみ。彼女たちは、今年のCFDA(Council of Fashion Designers of America)による年間最優秀ウィメンズウェア・デザイナー賞の候補に選出され、昨年に続き2年連続の受賞を期待されている。しかし今、『Washington Post』紙が「Rodarte−−ブランドとして"存在している"と言って良いのか?」と報じ、議論の対象となっている。

『Washington Post』が収集した情報によると、Rodarteは実質的な利益もあげていなければ、今後の事業拡大も計画していないという。しかし、これはイギリスのファッションブランドの多くもまた同じ状況にある。多くはRodarteのように10年の存続が叶うこともなく消えていき、最後までレッドカーペットや展覧会など、作品発表の場を持たずに息絶えていく。「多かれ少なかれ、生産されることなど叶わない服ばかりよ」と、Rodarteの立上げに一役買ったロサンゼルスの古着ディーラー、キャメロン・デケイズは話す。これは、ファッション業界全体にも当てはまることだ。ランウェイで見る作品のうち、どれだけ店頭に並ぶだろうか? 歯止めの効かないところまで加速したファッション業界で、年に2回のコレクションとファッション業界からの距離をとる姿勢を守っているRodarteは、自らのペースをしっかりと見極めている。売上なんて関係ない。これは尊敬に値すると私は思うのだ。

Rodarte autumn/winter 16. Photography Jason Lloyd Evans

Credits


Photography Jason Lloyd Evans
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.