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カール・ラガーフェルド「太陽の宮殿 ヴェルサイユの光と影」写真展

カール・ラガーフェルドがヴェルサイユ宮殿を撮り下ろした写真展「太陽の宮殿 ヴェルサイユの光と影」が銀座のシャネル・ネクサス・ホールで開催される。写真家としてのラガーフェルドのまなざし、紙に対する彼のこだわりを体感しよう。

by Yuuji Ozeki
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16 January 2017, 6:18am

1987年、カール・ラガーフェルドはChanelの広告キャンペーンを制作するため、自らカメラを手にした。これが写真家カール・ラガーフェルドの誕生である。その後の評価は周知の通りだ。ファッションデザインの領域をはるか超えた分野でもたぐいまれなる才能を遺憾なく発揮する作品の特徴は、直感と第一印象による被写体への愛情、自然の発露と偶然が重なり合う瞬間にある。そして、その彼が好んで被写体に選んだのが、フランスのヴェルサイユ宮。17世紀後半、太陽王と謳われたルイ14世により建造されたヴェルサイユ宮は、ラガーフェルドにとって「具現化されたおとぎ話の世界であり、過去のものでありながら私たちの想像力に語りかけてくる」場所だった。彼が宮殿の光景を映画のような世界観で私的な表現した写真--それは光や影と戯れるような、遠近法やぼかしを用いて描写される禁断の寓話であり、ユニークな視点で捉えながらも時にドラマチックな物語をも思わせる荘厳な世界だ。

今回、シャネル・ネクサス・ホールで催される「太陽の宮殿 ヴェルサイユの光と影 カール ラガーフェルド写真展」では、2008年にヴェルサイユ宮殿で開催され、好評を博した同展から作品を選りすぐり、再編集。日本初公開のエキシビションとして戻ってきた。

写真のプリントは羊皮紙を模した紙を使い、スクリーンプリントによって制作されたもので、ラガーフェルドの希望により鑑賞者が紙の質感や画像の細部まで堪能できるよう、作品をガラスやフレーム等で額装はせずに直接壁に取り付けるというシンプルな方法で展示される。「紙こそが、私が最も好む素材です。私にとっては、あらゆるクリエイティヴィティの出発点でもあります。そして写真の場合、それは最高潮に達した最終の成果なのです」と語る彼にとって、この展示方法は本展示で重要視したコントラストの表現を際立たせるとともに、スクリーンプリントという昔ながらのやり方がこれらの写真を真に独創的たらしめる最適な方法なのである。

デジタルがこれほどまでに発展し、大量の情報が刹那的に消費される時代の中で、旧来のメディア、とりわけ紙媒体は最もその矢面に立たされている存在と言っていい。時間と手間をかけ、幾度ものチェックを経て初めて世に出るモノ作りは、確実に時代と距離を置いた遺物となってしまった。しかし、今日において、それは紙マニアのラガーフェルドが語ったように、紙の質感や匂い、はたまたページをめくって得られる驚きや発見そのものが最早ラグジュアリーとなる。遅かれ早かれ、紙製品を買うことや紙にこだわることはマチュアーな領域の嗜好として認知される日が来るだろう。いつしかファッション誌はやがて高価な写真集としてのみ形を留めることが許されるようになった時、意匠の行き届いた紙選びやインクの匂いとは、その時に感じる高揚感とは何か、その兆しを示していた本写真展に思いを馳せてくれればと思う。

太陽の宮殿 ヴェルサイユの光と影 カール ラガーフェルド写真展
開催期間:2017年1月18日(水)−2月26日(日) 
時間:12:00-20:00 (入場無料・無休)
会場:シャネル・ネクサス・ホール
住所:東京都中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F

Credits


Text Yuuji Ozeki
All Images ©Karl Lagerfeld