Abbey wears Hoodie and tracksuit bottoms Vetements. Briefs model's own.

アビー・リー、モデルから女優へ

『マッドマックス 怒りのデスロード』への出演で、アビー・リーはモデルから女優へと華麗なる変身を遂げた。ニコラス・レフン監督作ホラー・スリラー映画『ネオン・デーモン』への出演を果たしたアビー—その成長はとどまるところを知らない。

by Frankie Dunn
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06 January 2017, 3:40am

Abbey wears Hoodie and tracksuit bottoms Vetements. Briefs model's own.

Hoodie Champion. Top Supreme x Playboy. Sweatband Nike. 

Champion Bikini top customised by stylist's studio. Briefs model's own. 

アビー・リー(Abbey Lee)は、ニューヨークの冷えきった自宅アパートの一室に座り、暖房設備の修理工を待っている。ロスアンゼルスの暖かな気候に慣れてしまってはいるものの、やはり古巣のニューヨークは彼女にとって特別な場所だ。だから仕事を終えて数日を経た今も、彼女はこうしてニューヨークにとどまっている。しかしその前夜、アビーの心は西海岸にあった。彼女のデビュー作、『マッドマックス怒りのデスロード』(2015)が次々とアカデミー賞を受賞していたからだ。「ジョージ(George Miller)のことを本当に嬉しく、誇りに思うわ! 最優秀監督賞を受賞できなかったのは残念だけど」とアビーは話す。ディストピア映画の古典ともいうべき『マッドマックス』の続編で、アビーはモデルから女優へと華麗な転身を遂げた。ポケモンがスキルを習得してレベルを上げていくように、近年は数々のモデルが女優の道へ進んでいる。しかし、成功の度合いはまちまちなのが現実だ。そこへきてアビーは、その異彩を放つ個性をもって、この新たな領域でキャリアを築いていけるだけの才能を持ち合わせている。

「心が演劇をやりたがってるの。モデルのときにはなかった感覚よ」とアビーは明かす。「モデルは過去のもの。お金を稼がせてもらって、世界を旅させてくれて、そして『マッドマックス』へと道を切り開いてくれた」。モデルという仕事に不満が募り始めたとき、アビーはやる気を失ったという。「ファッションは、その業界にいる人たちにとってはとてもアーティスティックなフィールドよ。モデル以外にとってはね」と彼女は説明する。「モデルにはみんなのビジョンが投影されるのよ。ただ写真を撮られるだけの存在に落ち着くいてなんていられなかった。脳がどんどんしびれていくように感じたわ」。彼女自身も認めるように、彼女には演技の経験がほとんどなかった。そして、教育の面でも決して恵まれてはいなかったと彼女は言う。アビーは少女期、メルボルンにあるカトリック系女子高に通った。この時期をアビーは「なんにも面白くなかった」と形容する。「そのことをたまに考えることがあるのよね」と彼女は当時を思い出しながら話す。「もしもあのときアーティスティックな学校に通っていたら、いま私はどんな人間になっていただろうって」。

怒りのデスロードに巻き上がった砂けむりも落ち着いた今、誰もがアビーの次なる動きに注目している。ロスアンゼルスを舞台にしたホラー・スリラー映画、ニコラス・ウィンディング・レフン監督の『ネオン・デーモン』で、アビーは失敗を乗り越えて改めて業界復帰を目指すモデルを演じる。若さと美しさを執拗に追い求めることの残酷さをテーマにした作品だ。「サラには、どこか得体の知れないところがあるの」と彼女は自らの役柄について話す。「完全に理解することが難しい女性—タフだけれど感受性が豊かだったりするの」。物語は、アビーがよく知る世界だ。モデルを演じたかったわけではないし、過去を懐かしくも思わないが、そこは、「ニコラス・レフンだもの!それに、バカな金髪女を演じるわけでもないし。これはアーティスティックな映画。ディープな映画。人間の複雑な真実を扱った映画なの。わたしの役どころも同じく深い女性。だからこの映画出演は悪い選択ではなかったと確信してるわ」。クリスティーナ・ヘンドリックス、キアヌ・リーブス、ジェナ・マローンなどとの共演もまた、彼女の主演を後押しした要素だった。「本当に興味深い経験になったわ。私はあの世界の一部だったことがあって、みんなが演じる役が本当はどんな人間なのかをみんなに理解してもらえるための手助けができたのよ」。

その次に、アビーはアレックス・プロヤス監督の『Gods of Egypt』で、小さいながらも重要な役を演じることとなっている。蛇を乗りこなす暗殺者という役だ。この役を演じる上で必要となったトレーニングの中で、アビーはナイフ使いやグリーンバックでの演技などを学んだ。「映画が出来上がるまで、ヘビがどんな見た目になるかさえわからなかったのよ」と彼女は笑う。「視覚的な想像力が必要となるの。それと恥を捨てなきゃいけない。だっておかしいのよ。ブリトーなんかを食べてる200人ぐらいの人たちの目の前で、テニスボールを相手に演技をしなきゃならないの。バカみたいに見えるかなんてこと考えちゃいけないの。バカみたいに見えてるんだから、実際に」。

また、アビーは今年、スティーブン・キングの原作をニコライ・アーセルが映画化する『ダーク・タワー』に出演することが決定している。「実は、脚本もまだ読んでいないの」と彼女は言う。「でも、偉大な監督から指名されて、マシュー・マコノヘーとイドリス・エルバと共演してくれと言われたら……!」アビーは、自らに与えられたチャンスを実にありがたく思っているように見える。その姿はとても可愛い。「キャリアにおいて今の段階は、業界を信じてひとつひとつのチャンスに賭けなきゃいけないと思うの。競争のレベルは正気の沙汰じゃないし、毎日頭を抱えているわ」と彼女は明かす。「怖いわよ。仕事をもらうって大変なこと」。

映画情報検索サイトでは人間以外の役の経歴が増えていくアビー。しかしタイプキャストされる傾向を、彼女は厭わない。「この世のものとは思えないようなキャラクターを演じるのは好きよ。でも自分をすべて投じて演じられるような、血の通った人間らしい役を演じるのにも強く魅かれるわ」と彼女は言う。現在、アビーは薬物依存に関する半自伝的内容の脚本を執筆しているが、このプロジェクトはまだ初期段階にあるのだそう。「思っていたよりずっと難しいのよ」と彼女は明かす。「これまで何かを書いたことなんてなかったしね。簡単なことじゃないわ」。しかしこれに関し、彼女はこれ以上の話を避ける。「完成にはほど遠いし、もしかしたらボツということもあるから」。

薬物依存に苦しんだ過去があっても、アビーはその経験をポジティブな何かに変えることができる自分を楽しんでいる。モデルとしてでは絶対にできないような何かに。彼女は常にアーティスティックなハートを持ち、常にドリーマー。ドリーマーだからこそ、夢が自分をどこへ導いてくれるかに興味津々なのだ。「夢を見ている状態—眠っているときの心の状態は、起きているときに物理的な体と心がそこにある状態と同じくらい重要なんだと思うの」と彼女は言葉を紡ぐ。自由な心、自然、そして生活の中に起こるささやかだけれど重要なことへの感謝の気持ちこそ、アビーの最も愛すべきクオリティだ。そして彼女のリラックスした佇まいも。彼女は最高にイケていて、一緒にいて楽しい。

『マッドマックス』で演技の世界へと足を踏み入れたアビーだが、親友のライリー・キーオとの共同作業も果たすことができた—昨年2月、キーオの結婚式で、ブライズメイドとして。「彼女がいてくれることを本当にありがたく思っているの。私が役者として悩んでいたり心配だったりするとき、彼女はいつでも私を支えてくれるの」とアビーはキーオについて語る。「彼女は私にとって、この業界でのバックボーンよ」。誰よりもポジティブな姿勢のアビーは、一緒にいる私までもポジティブにする力を持っている。これからも数々の美しい役を映画で演じ、輝くハリウッドの天空にまで登りつめるだろうと思わせるほどだ。「モデルという仕事に私は情熱を傾けることができなかったけれど、こうして情熱を傾けられるものを今見つけることができた私は本当にラッキーなんだと思う」と彼女はきっぱりと言う。「だからこれから、私は能なしじゃないっていうことを証明していかなきゃね!」

Credits


Photography Terry Richardson
Fashion Director Alastair McKimm
Text Francesca Dunn
Hair Cim Mahony at La La Land
Make-up Kanako Takase at Tim Howard Management using NARS Cosmetics
Nail technician Honey at Exposure NY
Photography assistance David Swanson
Digital technician Rafael Rios
Styling assistance Lauren Davis, Sydney Rose Thomas
Hair assistance Brian Casey
Production Mary Clancey Pace at Hens Tooth Production, Julia Reis at Art Partner
Production assistance Eric Jacobson, Evan Schafer
Casting Angus Munro for AM Casting (Streeters NY)
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.