ベルリンで活躍する5組の日本人映像作家

何気ない日常風景の記録から生命力溢れるパフォーマンス、時空間を超えた作品まで、ベルリンから発信する5組の日本人映像作家たちを紹介。

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okt 20 2017, 5:36am

多様な歴史・文化背景を持つ人々が住む街、ベルリン。アーティストのユートピアでもあるこの街に魅了され、移り住む映像作家たちが年々増加傾向にある。彼らに様々な映像表現を可能にし、創造力をより掻き立てる原動力こそ、街自体に根付く多様な文化に対するリスペクトの姿勢であろう。そんな恩恵を受けたベルリンの日本人映像作家たちが描き出す日常から派生したテーマの中には、あなたの感性をより豊かにする瞬間が詰まっている。これから紹介する5作品からその瞬間を見出そう。

Yu Nakajima ( 中島 )
ドキュメンタリー作品を中心に、ショートフィルムから広告、MVなど多岐に渡る作品を手がけ、国際的に活躍する映像作家。「瞬間や気持ちや存在や色々なもの」がある中で「生まれる瞬間より消えていくものを見ているのが楽しい」と語るように「無くなる。消える」ことに注目し、その瞬間を丁寧に見つめる作風が印象的だ。『January, 2015』はハイアートとローアートの垣根が低い文化の日本とその違いがはっきりと別れているヨーロッパ、その二つの国の宗教観と文化について表現した作品。美術館や神社の御神体の写真を撮ってはいけない日本と比べ、ヨーロッパでは美術館でも教会のキリストを写真に撮っても文句を言う人はいない。本物はただ1つのため、複製は複製そのものとして認識され本物にはなり得ない。その根底にある違い、文化的に分かり合えない部分の面白さを是非感じ取っていただきたい。

Hanae Utamura( 宇多村 英恵 )
特定の場所の記憶にインスパイアされた過去、現在、未来が交差する時空間を構築し、身体性に重きを置いた映像インスタレーションの制作および映像を用いたパフォーマンスを行っている現代アーティスト。『Kameradschaft Zollverein』は、ドイツ・エッセンにあるツォルフェライン炭坑業遺産群でのレジデンスプログラムにて制作した作品だ。本作には、オーストリアの映画監督ゲオルク・ヴィルヘルム・パープストによる炭坑夫映画『Kameradschaft』の一部シーンと、現在の炭坑群跡の痕跡を映すクローズアップのシーンが流れる。「滑らかな映画的カメラワークと、炭坑跡の空間で動くパフォーマーの目線的カメラワークの対比」「炭坑夫の目線の先に、歴史を見つめるもの、見つめられるものの視線が交差する」ーこのカメラワークの対比と視線の交差から生じる彼女の構築した時空間の中で、あなたは何を感じるだろうか?

Kayoko Tomita ( 冨田 香代子 )
個人の異なるバックグラウンドを、視覚表現や言語を用いることによって表面化させるというコンセプトのもと、作品を生み出している映像作家。目の前の出来事や現象の中にある「当たり前であって当たり前でないもの」を見つけ出し、観察し、考察する彼女が、ベルリンでの生活の記録を、断片的に構成した作品が『Meine Erscheinung』だ。本作は渡独して間もない頃に撮影した素材をベースに展開される。視覚的に心地の良い映像に寄り添う緩やかなハミング、そこにドイツ人による宮沢賢治の詩『雨ニモマケズ』の朗読が加わる。囁きかけるドイツ語の抑揚の揺らぎと詩のイメージを見事に重ね合わせた。慌ただしい日々の中にある、うっかり見過ごしてしまいそうな美しい瞬間の数々、心地の良い揺らぎの音色、どことなく懐かしさを感じる映像と世界観にあなたもしばし身を委ねてみてはいかがだろうか?

Hoji Tsuchiya( 土屋 萌児 )
コンセプトは特になし、作りたいと思う物を自分に出来る方法で制作することがモットーのアニメーション作家。「アナログな方法でも新しい手法が生まれる可能性がまだ沢山あるのではないか」と考えている彼の制作は、修正・編集にはコンピューターを使用するものの、撮影は全て手作業。制作スピードは作品によるが、1日平均2秒ほどだとか。そんな手法に対する探究心の強さが窺える『The Singing Line』は描く事と声を出す事は本来同じ行為なのではないかと思い制作された作品。声を出すと同時に手を動かすと、ある形が出来上がり、その形の描き方に対しての擬音語の様なものが生まれる。それを繰り返していくにつれてどちらが主体なのか分からなくなり、双方が補い合いながら形と発音を形成していく。この妙に目と耳を刺激する映像は何度もリピートしたくなるほど中毒性あり。

Joji Koyama ( ジョージ・コヤマ )
日本生まれ、英国育ち、現在はベルリンを拠点に活動する映像作家兼グラフィックデザイナー。Four Tet, Mogwai, ColdcutなどのMVを手がけており、近年は映画制作にも従事している。『Jlin - Carbon 7』はシカゴの女流フットワーク・プロデューサーJlinのMV作品であり、ベルリンのダンサー兼振付師コーリー・スコット・ギルバード(Corey Scott Gilbert)とのコラボレーション作品でもある。「水のような音楽を表現する」Jlinに告げられたこのイメージを元に表現されたコレオグラフィーは、生み出しては壊していくプロセス、まさにコーリーによる圧巻のソロ・パフォーマンスの記録は、音、身体表現、映像が生み出した化学反応の賜物。その予測不可能な4分39秒からまさに目が離せない。

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