SNSで自分の弱さをさらけ出すことで、実生活での人間関係が希薄になる?

ネット上で内面を吐露することで、孤独感がより強まる可能性がある。

by Sara Radin; translated by Ai Nakayama
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16 March 2020, 9:43am

「SNSでのシェアはカタルシスをもたらし、自分がネット上のコミュニティとしっかりつながっている感覚、彼らが私を見てくれているという感覚を与えてくれます」と、30万人を超えるフォロワーを有する人気ウェルネスブロガーで、〈リー・フロム・アメリカ〉として知られるリー・ティルグマンは、2019年9月のInstagramの投稿でこう書いた。

「でも、SNSは新しいツールです。私たちは、SNSで何でもかんでもシェアすることが、長期的にみてどういう影響を与えるかを知りません」

ティルグマンは数ヶ月にわたるSNS断ちから戻り、「〈弱い私〉ポルノ(vulnerability porn)」に溢れた現代で、いかにして自分の現実世界とのつながりが希薄になっていたか、そしてネット上で自分のことをシェアしまくることで、いかにして自分が「実生活」を生きる力を失っていたかを告白した。その感覚には、多くのひとが共感できるはずだ。

元メディア幹部で現在は企業心理療法士のジェニファー・マセルマンによると、SNSの〈弱い私〉ポルノは、自らの弱い部分を見せることへの依存と関連しているそうだ。つまり、自分の感情や心理をさらけ出すことで、他者から認可や注目という報酬を得る仕組みだ。

〈弱い私〉ポルノは、InstagramやYouTubeといったプラットフォームにより、いっそう広まった。「今やどんどん大量生産され、すぐに見つけられるようになり、文化におけるスタンダードになりました」とマセルマンは語る。

このトレンドはすっかり市民権を得て、ひとびとはこれで稼ぐ方法を学ぶようになったとマセルマンはいう。つまりSNSによって、誰もが自らの心の痛みを、有名になるため、あるいは利益を得るためのチャンスにすることができるようになった。

彼女は、タロットから社会不安障害まで、あらゆることを話す場としてYouTubeを使っている。彼女が自分のYouTubeチャンネルで孤独感や寂しさについて話すようになったのは、2017年のこと。それに対し、自分も同じだ、というコメントがなんと何千件も届いた。自分がサポートされている、認められた、と感じたサンミは、同チャンネルだけでなくInstagramでも同様のコンテンツを投稿し続けている。

「昔なら、実生活で家族や友人からのサポートを必要としていたことが、今では〈いいね〉や〈頑張れ〉というコメントなど、心の距離が遠い励ましの反応を生み出しています。本当は、電話を通して、あるいは直接会って慰めてもらったり、話を聞いてもらったり、ということを欲しているのに」とマセルマンは、ネット上だけで内面を吐露することのネガティブな点を説明する。

「私も、友達に打ち明けない話はインターネットには投稿しません」とシラーはいう。彼女は、自らのインターネットでの体験をきっかけに、実生活でも安心して弱さをみせられるようになり、より深くオープンな人間関係を築けるようになったという。
しかし彼女は、インターネットでシェアするのは過去の体験のみであり、不安障害や神経症のさなかは投稿をしないようにしているという。

「SNSには、多くのひとが人生で一度や二度は経験する、情緒の問題や精神的/心理的な問題を標準化するというポジティブな側面もありますが、そこにある、想定外の副次的ダメージは遠大です」とマセルマンは言及する。

自分の内面を外の世界とシェアすることがあまりに普通のこととなり、みんな〈弱い私〉に疲れはじめている。

最近、第一子を出産したフォックスは、長年インターネットに自分の内面を吐露していたが、今はそこまでシェアする必要を感じていないという。

「SNSからは少し離れ気味です。SNSはコミュニティの日記みたいなもの。時々、自分の考えやそれにまつわる会話がずっとインターネット上に残ればいいな、と思うこともありますが」

現在彼女は、仕事として頻繁に講演を行い、自らのメンタルヘルスや母親であることについて話している。

インターネット上で自分の弱さを公開することにはポジティブな側面もあるが、私たちがつらい状況を投稿するとき、その経験は一時的に和らぐものの癒されはしない。「それが、浅く、心の距離が遠い人間関係や、社会不安症、パニック障害、そして薬物乱用など、時間をかけてさまざまな問題に発展します」とマセルマンは語る。

ティルグマンの投稿では、このように書かれていた。「SNSは、人と人とのつながりの代わりにはならない。誰かと顔を合わせて交流する時間がないと、私たちは具合が悪くなってしまう」。彼女は、SNS断ちをし、自分がシェアするコンテンツについてより強く意識することに意義を見出していた。

これまで自分がインターネットで公開してきた自分の弱さについて、特に後悔はしていない筆者だが、ネット上での内面の吐露に関してのスタンスは変化しつつある。今、多くのひとが同じような変化を感じているようだ。

This article originally appeared on i-D UK.

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