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      film Oliver Lunn 24 May, 2016

      リチャード・リンクレイター監督:ロングインタビュー

      軽薄で高圧的、そんなステレオタイプでしか描かれてこなかった80年代の体育会系の男たち。リンクレイターは、最新作『エブリバディ・ウォンツ・サム‼ 世界はボクらの手の中に』で他の表現を与え、同時に80年代の若者にあった精神を描いている。

      リチャード・リンクレイター監督:ロングインタビュー リチャード・リンクレイター監督:ロングインタビュー リチャード・リンクレイター監督:ロングインタビュー

      『バッド・チューニング』が発表されてから20余年−−監督のリチャード・リンクレイター(Richard Linklater)が、その"精神的な意味での続編"となる『エブリバディ・ウォンツ・サム‼』を発表した。舞台は80年代のとある大学。登場するのは、ビールを浴びるように飲む、野球部所属の仲良し大学生たちだ。リンクレイターは今作でも、(これまでもそうしてきたように)体育会系の男子をステレオタイプで描くことはしない。彼が描くのは、マリファナを吸い、ジャック・ケルアックの小説や詩を読み、パンクのコンサートに行くような体育会系の男子だ。彼らは、映画でよく見る"無神経で高圧的"といった体育会系男子像とは一線を画している。それもそのはず、リンクレイターは、80年代初頭に大学で野球チームに所属していた体育会系男子のひとりだったのだ。当時のリアルな体験と記憶が染み込んだこの映画は、オリジナルでパーソナルな傑作に仕上がっている。

      先日、リンクレイターに会った際、彼は体育会系の大学生として過ごした日々、テクノロジーの進化によって絶滅してしまった交流や結びつきの感覚、そして青春時代に聴き込んだ音楽が持つ力について語ってくれた。それからディスコ好きになった経緯も。

      エブリバディ・ウォンツ・サム‼』に登場する男の子たちには、まぬけで、かと思うとケルアックを読んでいたり、と"奥行き"がありますね。
      そうだろ! 僕自身が元体育会系(Jock)だったからね。今、彼らのそういう面を世に見せることができて嬉しいよ。体育会系が映画を撮るのが珍しいからね。体育会系の男を描くのは大抵おとなしいタイプのやつらだろ?「体育会系なんてバカばっかだろ」って思ってるようなね。

      だからそういうイメージを払拭したかったと?
      うん、特に80年代の体育会系の描かれ方をね。その頃、体育会系はクールな存在だったんだ。思慮深くてセンスいい有名アスリートも出てきてたしね。バスケットボール界の伝説、カリーム・アブドゥル=ジャバーがジャズショーの司会を務めたり、ウィルト・チェンバレンが調理師になったり−−多方面に興味や才能を持った体育会系はクールだと考えられていたんだよ。少しサーフィンができたら驚いたり、エキセントリックな事として扱われるけども、結局は人間、スポーツに秀でていようが、それ以外に秀でていようが、そんなに特別な事ではないよね。

      この映画を自伝的作品とこれまでおっしゃっていますが、あなたはこの中で物静かなアスリート、ジェイク役だったんじゃありませんか?
      そうだね。昔のチームメイトたちは、「いつかこういう映画を作るんだと思ってたよ。お前はいつも本を読んでたしな。レイ・デイヴィスがいかに素晴らしいかとかなんとか、音楽のことでいつもアツくなってただろ」って言ってるよ。

      この映画を『バッド・チューニング』の"精神的な意味での続編"と説明していますが、キャラクターたちのその後の成長という事なのでしょうか?
      続けて登場するのはミッチ・クレイマーだけだよ。なんていうか、地元を離れて大学に行くってことは、それまでの全てを置いていくことだと思うんだ。高校を卒業してひとつの章が終わり、大学で新しい章が始まるっていう人生における精神的な続編と同じだよ。ミッチが大学でどんな男になったか、考えてみてよ。『バッド・チューニング』で、彼はピッチャーだった。でも、ゲームの直前で先輩のしごきに遭う。あのまま野球を続けて、4年後に大学に入った−−それがジェイクで、そんな想像がこの映画を作るきっかけになったんだ。

      この大学生活が『バッド・チューニング』の延長にあるものだとすると、『Slackers』は『エブリバディ・ウォンツ・サム‼』の延長ということになるのでしょうか? 私には、高校・大学・大学院という三部作のように思えるのですが。
      ハハハ、そうだね。僕の映画作りは、あの時代がベースになっているんだな。不思議だよね。80年代後半にはすでに映画作りを始めていて、世界に対する視点もはっきりしていたのに。わざわざ時をさかのぼってあの時代の映画を作るなんて、僕には必要ないはずなんだ。実際にあの時代に生きたわけだからね。

      80年代の大学生活は特に楽しそうですね。
      最高だったよ。運もよかったんだと思う。エイズが問題になる前だったし、レーガンやブッシュが大統領になる前の時代で(その後の12年間は最悪だった)、大人になって社会に出ていったとき、すごく自由を感じた。当時起こっていたカルチャーもオープンだったからね。

      その時代を懐かしく、恋しく思いますか?
      そんなことないよ。あの時代に戻りたいなんて思わないしね。この映画は−−今の若者たちを見ていて思うんだけど−−テクノロジーの進化と普及によって失われた"人との関わり"を描いているんだ。テクノロジーは俺たちを繋いでくれるけど、素晴らしい瞬間を奪い取ってしまうだろ。人々は友達と無駄な時間を過ごさなくなったし、遊び方も変わったと思うんだ。友達と5人で、音楽を大音量でかけながら車でAからB地点まで移動する−−その時間と空間に生まれるものがあったんだ。今は、ひとりが運転していたら他のやつらはこんな(スマホをいじる真似をしながら)感じだろ? あのなんでもないような時間をどう埋めるか−−そういうものがあの時代にはあったんだ。その瞬間を楽しむって事をね。

      この映画では、ディスコミュージックがいかに好き嫌いの分かれる音楽だった(そして現在もそうあり続けている)かが描かれていますが、あなたも当時はディスコを聴いたのでしょうか?
      当時は好き嫌いに関係なく、みんなが聴いていたよ。酒と女があるところにはディスコがかかっていたからね。でも、ディスコが好きだなんて誰も言わなかった。言える雰囲気じゃなかったんだよ。今回の撮影でも、「忘れるな。お前たちはディスコなんてクソみたいな音楽、大嫌いなんだからな」ってキャストの頭に叩き込んだんだ! まぁ今では当時よりも好きになっているけどね。S.O.S. Bandの「Take Your Time (Do It Right)」なんて見つけようもんなら大変なことになるだろうな。当時、ラジオで98,000回聞いたイーグルスの曲なんかより聴き続けちゃうと思うよ。

      本作に登場する男子がパンクのライブに行っていたように、境界線が当時ははっきりしていませんでしたよね
      みんな自由に好きなものを謳歌した時代だったからね。場違いに感じることももちろんあったけどさ。この映画では、みんながなんとかして馴染もうとしているんだ。コンサートに行く前に、強そうに見えるよう試行錯誤したりね。僕もそんなことをした覚えがある。服や髪は変えなかったけど。パンクのクラブに行こうってことになって、一緒に行く友達から渡されて、首になんとかっていうのを巻いたこともあるよ。

      パンクシーンでは場違いに感じましたか?
      ちょっと自意識過剰になったけど、飛び込んだよ。「お前なんか誰も見てねえよ!」って思ってさ。ダンスと同じだよ。踊れなくたって、自分が気持ちいいように体を動かしてればそれなりに見えるしね。自意識を捨てれば、大抵の状況ではそれなりになれる。フルに楽しめばいいんだ。

      映画に使われている服について、参考にしたものはありましたか?
      色々を参考にしたよ。たとえば、大学や高校の卒業アルバム。「ああ、こんなもの着てたな」ってね。コスチューム担当のスタッフと服を選んだり、髪型や他のディテールを決めていくのは本当に楽しい作業だった。1971-80年に制作された映画、特に『ミートボール』を観たりして参考になるものを漁ったよ。『ヤング・ゼネレーション』を出演者たちに観せたりもした。大学を舞台にした青春コメディで、俺のお気に入りなんだ。

      音楽はこの映画で重要な役割を果たしています。ディーヴォやニューウェイブのバンド、そして他にもたくさんのジャンルの音楽が使われていますが、あなたの人生において音楽が果たした役割とはなんだったのでしょうか?
      家にいるときは必ず音楽がかかっていたし、車でも、ゲームルームでも常に音楽をかけていた。音楽は生活の中に常にあるものだったんだ。音楽は大切だね。聴く音楽が人の人生を彩って、人との繋がりも深めてくれるんだ。

      音楽との結びつきは今でも強いのでしょうか?
      若い時ほどの強さはないね。年をとると、だんだんとニッチになっていくからね。「ポップカルチャーの中に生きてる」って感じたのは、あの時代が最後だったような気がする。この映画に使われている音楽はあの時代に実際ヒットしていた曲なんだ。当時、僕はもっとアンダーグラウンドにハマっていったんだ。80年代は醜いって思っていてね。ラジオも聴かなくなった。興味をそそられる音楽がほとんどなかったんだ。だけど、今になって80年代に追いつこうとしてるよ。

      @OliverLunn

      『エブリバディ・ウォンツ・サム‼ 世界はボクらの手の中に』

      監督・脚本:リチャード・リンクレイター プロデューサー:ミーガン・エリソン、ジンジャー・スレッジ、リチャード・リンクレイター 撮影監督:シェーン・ケリー 編集:サンドラ・エイデアー 出演:ブレイク・ジェナー、ゾーイ・ドゥイッチ、グレン・パウエル、タイラー・ホークリンほか  配給:ファントム・フィルム 2016/アメリカ/アメリカン・ビスタ/117分  原題:Everybody Wants Some!!

      11月5日(土)より、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかロードショー

      Credits

      Text Oliver Lunn
      Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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      Topics:film, culture, richard linklater, interview, everybody wants some

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