ハンナ・ピクシー・スノードンと美を語る

彫師ハンナ・ピクシー・スノードンと愛、幸福、そしてひとを真に美しくするものについて語った。

by Tish Weinstock
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29 September 2016, 2:30am

タトゥーに覆われた肌とその漆黒の髪で、ハンナ・ピクシー・スノードン(Hannah Pixie Snowdon)は浮世離れした存在感を放っている。ビーチで日焼けした肌、そしてブロンドの髪がメディアを埋め尽くす現代にあって、彼女の美はひときわ異質だ。彼女の肌に描かれた絵柄はどれも彼女の内なる自己を映し出している。初めてタトゥーに魅了されたのは16歳のときだったという。現在、ハンナは自身のスタジオBlack Stabbath内にショップを構え、タトゥーの施術だけでなく自身が描いたイラストも販売している。

多くの苦悩を経験した青春期を経て、彼女はいま、ようやく心の安らぎへとたどり着いた。そしてファンたち(Instagramのフォロワー数は576,000人を超えている)にも同じように幸せを実現してもらいたいと切望している。その一環としてハンナは自身のZine『The Key』を制作し、その売り上げは精神保健チャリティ団体「Be Mindful」に寄付している。最新イラストのコレクションを発表したばかりのハンナに、愛、幸福、そしてひとを真に美しくするものとは何かを語ってもらった。

最初にタトゥに興味を持ったのはいつでしたか?
スタジオで働き始めた16歳のとき。わたしの親友ふたりが雇ってくれたの。彼らは私よりもずっと年上で、私に自信を与えてくれたわ。大学を辞めてでも、自分が幸せを感じられることをやろうと信じる力をね。私は超がつくほどの勉強家だったから、それまで続けていた勉強を投げ出してしまうのが大きなリスクになるだろうというのはわかってた。でもその頃、わたしはとても惨めだったの。

体に墨を入れることの何がそこまであなたを夢中にさせるのですか?
それがどこに端を発しているのかはわからない。でもタトゥの伝統的な形式やその歴史には強く惹かれたの。アートも好き。ひとがわたしのアート作品を永遠にまとい続けてくれるということは、私にとって最高の形ね。それから、私は誰もがそれぞれに自己表現をできればいいと思っていて「好きなアート作品に体を覆われていることで常にインスパイアされているという状態」、それこそがタトゥーの意味なの。もうひとつ、タトゥーは「深刻になりすぎるな」という大切なメッセージをいつでも思い出させてくれる存在でもある。私の足は、変でおかしな絵で埋め尽くされてる。そこに一緒に掘られた思い出もある。自己をあまりに深刻に受け止めすぎているひとは多い。体はただの乗り物であり、箱でしかないということを忘れてしまっているのよね。いずれ私たちは誰でも萎んで枯れていくのよ。だからこそ今、もう少し楽しんでもいいんじゃない? と私は思うの。

あなたのタトゥはデコレーションとしての意味合いが強いのでしょうか? それともそこにはより深い意味が込められているのでしょうか?
その両方ね。私が入れているタトゥーには、ただ「アート作品として常に体にまとっていたいと思って入れた」ものも、ビジュアル的には大したことないけれどとても深い意味を込めて入れたものもある。思い出として入れたものもあるわ。良い悪いではなく、私が経験したこと、今では感謝せずにいられないような昔の出来事を、思い出として刻んだの。他には「お前は正しい道を進んでる。状況をコントロールしようとするのはやめろ。運を天に任せろ」と自分に言い聞かせるために入れたものもあるわ。

デザインする際にはどれほどのリサーチが必要となるのですか?
ただペンを走らせることもあるけど、たいていの場合は、描き終えるまでに絵自体が新しい意味を持つようになるの。親しみがなかった文化や伝統的なデザインにインスピレーションを受けて絵を描こうと思えば、それなりのリサーチが必要になる。その時は取り憑かれたようにリサーチするわ。だってそのデザインが何を意味して、何を象徴するのかを正確に知っていなければいけないわけだから。ビジュアル的なデザインよりも、それが持つ意味そのもののほうが美しいということはままあることよ。

タトゥはあなたの内面を反映していると考えていますか?
そうね。反映しないほうが無理だと思うわ。好きで、私にとって何かしらの意味があってデザインを選ぶんだから。誰も、誰かのクローンになっちゃいけないの。先にも言ったように、自分自身でいること、ひととは違う「自分」であること、それが真の美なのよ。

あなたが作った『The Key』について少し聞かせてください。
ソーシャルメディアで私たちをフォローしてくれている若い子たちが「自己を受け入れて自分を愛す」ことができずに悩んで、不安を抱いているとわかったの。『The Key』を作る前に会ったキッズたちも、多くが摂食障害や抑うつ症に苦しんでいたわ。わたしはもう見ていられなかった。世界を変えられるとも、変えようとも思ってはいなかったけれど、出版物というプラットフォームを使って少しでも愛や優しさを届けたいと思ったの。一緒に『The Key』を作ったアナ(Ana)も私も、ティーンのときは相当の抑うつ状態を経験していたから「あのときに今くらい知識や経験があったらあんなに苦しまなくて済んだかもしれない」と思ったのよね。今はインターネットのおかげで有益な情報を手に入れることもできる。だから、そこに力を添えるかたちでこのZINEを作ったというわけ。『The Key』では、アクティビストや詩人、アーティスト、ミュージシャンたちからそれぞれの「幸せの鍵」について書いてもらったの。初版の200部は1分で完売したのよ。すぐに増刷をかけて、3日後には予約注文だけで6,000ポンドの売り上げになった。私たちはそれを全部、不安や抑うつ症状に悩むひとたちにとても有益なサービスを提供しているチャリティ団体Be Mindfulに寄付したの。

「もうひとつの美のありかた」の象徴として見られることをどう感じていますか?
いまだによくわからないけれど、とてもありがたいことだとは自覚しているの。バービー人形が美の基準だなんて(あのプロポーションは人体学的に不可能だと証明されている)間違っているわ。メディアが作り上げた美の理想を追えば追うほど、どんどん人は我を忘れていく。「世界はますます人間を抑うつ状態に陥れる構造になってきている」とどこかで読んだわ。幸せな状態は、経済にはよく作用しないものなの。真に幸せな状態にあるとき、私たちはそれほど多くを求めなくなるでしょう? 身体的な(いわゆる)"欠点"をだれかに指摘され、強調されないかぎり、誰も整形手術なんて受けたりしないのよ。程度の差こそあれ、私たちはみんなこの時代の犠牲者なんだと思う。私も含め、ね。

あなたにとって「美」とはなんでしょう?
誰に後ろめたさを感じることも、こびることもなく、自分に忠実であること。私たちは生まれながらにして誰もが個性的で美しいの。だからそれぞれが自己表現をして、幸せを追求するべきなのよ。自分自身のためにね。好きなことを「好きだから」という理由でやればいい。仲間に入れてもらうために容姿を合わせたりすることなくね。生まれ持ったものがすでにかなり素晴らしいものだってことを絶対に忘れないで。

blackstabbath.co

Credits


Text Tish Weinstock
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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