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愛と狂気のガールズムービー『ガーデンアパート』がめざす、小さな革命

若手映像作家としてポンピドゥーセンター主催の映画祭や英テレビBBCで作品を発表してきたUMMMI.が、石原海として新作映画『ガーデンアパート』で長編デビュー。本作の日本での劇場公開を記念し、監督が本作を撮影しはじめたきっかけ、そこにある試みを語る。

by Umi Ishihara
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21 May 2019, 10:28am

アタシはあの日以来、とにかく熱っぽく浮かれていました。初めて映画を撮ったとき、それはたったの5分だったけれども、自分はもうそこらへんにいるただの女の子じゃないんだと思えて、ひとりきりで祭りの真っ只中にいる気分になりました。自分はこんなに素晴らしいものを作れるんだから、もしかしたらかっこいいものを理解できるクールな誰かに愛してもらえるんじゃないかとすら思いました。でも、もちろん5分の映画を撮ったというだけで自分を取り巻く世界が変わることはありません。アタシは相変らずひとりぼっちだったし、そこらへんにいる女の子となんら変わりがなく、あるいはそれ以下、でした。

そのあと数年間、短い映像をいくつか撮り続けて、アタシは少しずつ欲が出てきました。段々と世界を変えたいという気持ちが抑えられなくなったのです。世界を変える、というのは政治とか社会とか誰かを救うとか大きいものではなく(もちろんそれも含むけれど)まずは、アタシの映画を捧げるひとに小さな革命を起こしたいということを指しています。

『ガーデンアパート』
『ガーデンアパート』

『ガーデンアパート』はそんな気持ちから生まれた、ごく低予算の、当時は映画の作り方すらわからなかったアタシの(録音さんが必要だとか照明部がいるとか、そんなことすら知らなかった)多くの人の助けを借りて才能に溢れたみんなで作り上げた映画です。そして気づいた頃には、これを撮影したのはもう3年前の夏となってしまいました。なぜなら撮影が終わったあと、映画を作る自信、もはや生き延びる自信、みたいなものがすべて無くなってしまい、自分が正しいことをしているのか解らなくなってしまったからです。それゆえ、完成するまでにとても長い時間がかかってしまいました。でも、考えてみればみるほど、すべては『ガーデンアパート』から始まっているような気がするし、初めての長編映画が、この映画でよかったと今となっては思えるようになりました。

すべての作家が常にベストのものを作り続けることだけが良いわけではないように、人生には悪い時も良い時もあると思います。『ガーデンアパート』は、その両方の時に寄り添えるような映画でありたいと思います。

『ガーデンアパート』
6 月 7 日(金) - 13 日(木)テアトル新宿を皮切りに全国順次公開。