ボノボの最新MV「Break Apart」はモーテルに丸一日閉じ込められた3恋人たちを撮影

素晴らしいのひとことに尽きる。

by Georgie Wright; translated by Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.
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08 November 2017, 10:50am

3組のカップルが内側からはドアが開かない状態で安いモーテルの部屋に閉じ込められると——できあがるのはリアリティTV番組『ラブ・アイランド』のBBC版ではない。ボノボ(Bonobo)のミュージックビデオができあがるのだ。

ボノボの最新作「Break Apart」のミュージック・ビデオは3組のカップルが24時間でさまざまなものを受け入れていく過程を捉えている。映像作家スペンサー・クレイ(Spencer Creigh)はカップル3組をそれぞれ同じ部屋に24時間閉じ込めた。部屋にはベッドだけが置かれている。3組のカップルは携帯電話も爪切りすらも取り上げられている。恋人が「シンクの排水口に食べ残しのスパゲッティが詰まった」とイライラし始めるときに、私たちは迫り来る口撃の嵐を少しでもやわらげようと無意識にテレビを見ているフリをしたり、スマホをいじったり、爪を切り始めたりする。そんな防御のための道具が一切奪われている状態なのだ。

「この映像を見てのぞき見をしているような感覚を見る人に与えたかった」とスペンサーは話す。そこには奇妙で感動的ですらあるプライベート空間にいる恋人たちの美しさが見えてくる。わたしたちはキム・カーダシアンが「公の場では誰についてのコメントもしたくない」と発言するところを見慣れてしまっている。よくよく考えればそんなことを言うときカーダシアン一家の面々は"現実"を演じている。一方で「Break Apart」に登場する恋人たちは退屈な時間を親密に過ごし、そこに映し出される振る舞いや表情はどんなリアリティ番組よりも美しく、リアルに溢れている。

これについてスペンサーは「この映像を見てひとは3組のカップルが見せる気持ちとその表現に感動しながらも、彼らのプライバシーを侵害していることに対して後ろめたさも感じる——そんな相反する感情を味わってほしい」と説明している。

楽曲もそんな矛盾した気持ちに寄り添う作りになっている。幾層にも音が重ねられていながらもミニマルに聞こえるサウンドに、不気味ながらもどこか心落ち着くライ(Rhye)の歌声が響きボン・イヴェールを思わせるメランコリックな雰囲気の中にどこか幸せを感じさせる音となっている。ふたりきり、24時間をモーテルの部屋に過ごす、そこにはInstagramで面白い投稿を見てふたりで笑うためのスマホすらもない——そんな空間で生まれるかけがえのない瞬間を表現するかのように、秒針が時を刻む音が楽曲の向こうに聞こえる。力強い作品だ。

あなたは24時間ずっと恋人を見続ける必要はない。そのうちの3分をどうかこの映像を観るために使ってほしい。この映像はその価値のある作品だから。