Courtesy of Sony Pictures Classic

音楽監督ロビン・ウルダングが語る、『君の名前で僕を呼んで』のサントラあれこれ

今年最大のロマンス映画のサントラについて、ミュージック・スーパーバイザーのロビン・ウルダングに話をきいた。

by André-Naquian Wheeler; translated by Atsuko Nishiyama
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10 January 2018, 9:14am

Courtesy of Sony Pictures Classic

This article was originally published by i-D US.

オスカーの呼び声も高いルカ・グァダニーノ監督によるラブストーリー『君の名前で僕を呼んで』。その中でもっとも印象的な瞬間のひとつがエンドロールだ。みずみずしいニューフェイス、ティモシー・シャラメ演じるエリオが暖炉のそばに座り、カメラはただじっと彼の顔をとらえ続ける。初めてのクィアなロマンス、その決定的な終わりに涙ぐむエリオ。赤くなった目をシャツの袖でぬぐうと、ポスト・パンク風のアイライナーがこすれてにじむ。思春期のナイーブな心が引き裂かれるさまが観る者の胸を打つ。この3分間に及ぶ長回しのショットをいっそう心に響くものにしているのが、バックで静かに流れるスフィアン・スティーヴンスの美しいメロディ「Visions of Gideon」だ。フォークシンガーの彼は、グァダニーノから連絡を受け、映画の脚本を読むよう依頼されて、この曲を書いた(グァダニーノは当初、スティーヴンスを『君の名前で僕を呼んで』のナレーションに起用したいと考えていた)。スティーヴンスは、エリオの胸の痛みへのダイレクトな反応として「Visions of Gideon」を作った。「最後に愛したあの時を思う」柔らかな風が吹くようにスティーヴンスは歌う。「これはビデオ?」

『君の名前で僕を呼んで』のスコアは、美しく霞んだ画面を多用したヴィジュアル同様に、豊かで甘やかだ。サウンドトラックに使われているのは、ノリのいい80sのポップソング、繊細なクラシックのメロディ、そしてスティーヴンスによるオリジナルのフォークソングが2曲。グァダニーノは、音楽の監修を担当したロビン・ウルダング、スティーヴンス、そしてフィルムの編集者との綿密な作業を重ね、サントラ盤を買いたいと思わせるほどに優れた音楽を作り上げた。「音楽は、映画の物語を伝える一要素です」これまでにも多数のインディ映画やテレビの音楽監修を務めてきたウルダングは言う。「例えば、ルカはザ・サイケデリック・ファーズの〈Love My Way〉を脚本の中ですでに出していました。アーミー・ハマー演じるオリヴァーは、あの曲の歌詞に共感するはずだと考えたからです」

グァダニーノは従来的な映像と音楽の組み合わせ方に実験を取り入れてもいると、ウルダングは言う。「最初に脚本を読んだとき、ピアノの音は録音したものを使うことになるだろうと思いました」と彼女は振り返る。「でもルカの希望は、セットで撮影しながら同録することでした。だからティモシーは(撮影前に)ピアノとギターのレッスンを受けたんです」

Courtesy of Sony Pictures Classics

ウルダングとグァダニーノは、エリオとオリヴァーのロマンスを彩る音楽の追求をさらに広げていった。映画の封切前にSpotifyで42曲のプレイリストを公開したのだ。このリストには映画で使用された曲以外に、最近のヒット曲も含まれている。例えばアッシャー、トロイ・シヴァン、そしてイヤーズ・アンド・イヤーズなど。すべて恋の喜びと切なさを歌った曲ばかりで、ティーンが孤独な夜に聴くタイプの音楽だ。この徹底した、心のこもったアプローチこそ、『君の名前で僕を呼んで』を人々の感情を揺さぶる経験にしている所以だろう。

エリオの心情にあまりに近く寄り添ってきたために、ウルダングは彼のSpotifyのトップヒットをなんとなく予想できるまでになっている。「たぶんキンクスね」彼女が教えてくれた。「それからファルコ。あとはデヴィッド・ボウイ、トーキングヘッズ、それにヴェルヴェット・アンダーグランドかな」

ウルダングは自身の制作会社リール・ミュージック・スーパーヴィジョンを経営し、20年以上にわたって音楽を監修する仕事に携わってきた。それはただ良い曲を選ぶだけでは到底終わらない作業だと言う。

「レコードをコレクションしたり、Spotifyのプレイリストを作るのとはまた別の仕事です」彼女は言う。「もちろんクリエイティブな側面もありますが、書面での事務作業(音楽を使用するための交渉、権利をクリアにし、予算を組む)も大量。素晴らしい音楽を見つけてくるのは誰にでもできるけど、この仕事は必ずしも自分の好きな曲を売り込むことではありません。苦手な音楽でも、仕事のために使うかもしれないということを理解するのが重要です。プロジェクトに合うものなら、どんな音楽でもちゃんと聴き、知らなくては」

Courtesy of Sony Pictures Classics

音楽監修へのこの徹底的なアプローチこそ、長年にわたって共に芸術作品を作り続けるウルダングとグァダニーノの関係の基盤にあるものだ。『君の名前で僕を呼んで』以前にも、ウルダングはこのイタリア人監督のきらびやかな前作『胸騒ぎのシチリア』でコラボレーションし、次作『Suspiria(原題)』にも参加が決まっている。「彼は素晴らしいヴィジョンの持ち主です。この映画での作業は24時間態勢でした。というのもグァダニーノはイタリアに、スティーヴンスは東海岸に、私はLAに住んでいるので」

グァダニーノは『君の名前で僕を呼んで』の続編の計画について、いたずらに何度も質問されている。確かに、20代になったエリオの音楽の趣味についてもみんなが興味津々なはず。ザ・スミスがカート・コバーンに取って替わられているのが想像できる。それでも時々は「Love My Way」を聴いて、オリヴァーのちょっとダサいあのダンスを思い出すのだろう、という気がしてしまう。

『君の名前で僕を呼んで』のサウンドトラックは下のリストで聴ける。

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