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マドモアゼル・ユリア&A. G. クック:世界観の音像化

ByShiho Watanabephotos byTakao Iwasawa

東京を代表するアイコンであるマドモアゼル・ユリアと、UKを拠点とし、チャーリー・XCXらとの作品でも知られる気鋭の音楽プロデューサーのA. G. クック。アンビバレンツという共通項を持つ両者のクロストークが、ここ東京で実現した。

2016年に自身のコレクション・ブランドであるGROWING PAINSを立ち上げたマドモアゼル・ユリア。彼女が2017年3月に行った初のランウェイで楽曲を担当したのが、UK気鋭のミュージシャン/プロデューサーのA. G. Cookだ。彼もまた、自身の音楽レーベル<PC Music>を運営しながら、グローバルな音楽活動を続けている。今回は、そのA. G. Cookとマドモアゼル・ユリアによるクロストーク・インタビューを敢行。i-D Japanのためだけに、出会った経緯や、互いの作品について、そしていまの音楽&ファッション・カルチャーを取り巻く状況を語ってもらった。

A. G. はすでにもう何度も日本に?
A. G. Cook(以下A):日本に来るのは、4、5回目かな。
マドモアゼル・ユリア(以下M):もうそんなに?
A:最初にきたのは4歳の時だったんだけど、とにかく東京の街のネオンが凄かったって記憶があるよ。

お二人が知り合った経緯を教えてもらえますか?
M:もともと、私が彼の大ファンだったんです。初めてAG の曲を聴いたのはネット上だったんですけど、すぐに「いいな」と思って。そうしたら、私の仲いい友達が彼とつながっていることに気がついて、その子にAGを紹介してくれるようにお願いしたのがきっかけです。
A:そうそう。僕たち、結構共通の知り合いがいるんだよね。友達を通じてユリアのことは前から知ってたんだ。「この子、チェックしておいたほうがいいよ」って言われてたくらいだし。実際に会ったのは今回が初めてだけどね。

実際に会ってみて、どうでしたか?
A:イメージ通り! これまでオンライン上だけでコミュニケーションを取ってきたけど、実際も同じパーソナリティだなって。
M:うん、私もそう思う。

ユリアさんが立ち上げたコレクション・ブランドGROWING PAINSのショーに、AGの音楽をフィーチャーしたと伺いました。
M:そうなんです。最初にAGが楽曲を送ってくれた段階からすごくいい感じでした。もともと、AGが2つのバージョンを送ってくれて。AGはバージョン1の方が好きだと言ってくれたんですけど、私はもうひとつのバージョン2の方がいいなと思って。結局、2人で話し合ってバージョン2に決めたんです。

ファッション・ブランドのコレクション用に曲を書くという作業はいかがでしたか?
A: コレクションのショーなんかで自分の音楽が使われていることは知ってたんだけど、ひとつのコレクションのために曲を書きおろすのは初めてだったね。
M: 以前、ソウルで開かれたChanelのショーに行ったとき、ランウェイの最初にAGの曲が流れてたのを覚えてるな。
A:マジで? ユリアもあのショーにいたの?
M:そう! アフターパーティでDJ もしたんだよ。
A:そうだったんだ。とにかく、今回ユリアのために曲を1ピース書けたことはとっても嬉しく思ってるよ。


GROWING PAINSのために曲を書く上で、大変だった点や気をつけた点などはありますか?
A:最初にユリアがコレクションのデザインをたくさん送ってくれたからテーマも共有できたし、すごく作りやすかった。何より、GROWING PAINSのテーマやアイデアがとても面白かったから、「よし、やってみよう」と思えたよ。戦争をアイデアの下敷きにしながらも、ハードコアな面やクレイジーな面もあったから、音楽もコントラストをつけるようにしたんだ。僕の作品は結構クリーンで、かつサイコロジカルだと思う。でもユリアには、もっとアグレッシブでラウドでディストーションが効いたようなサウンドが似合うと思う。ある意味、すごくパンクだし。だから、クリーンだけどはちゃめちゃで、アンビバレンスな音楽にしようと思って。

実際に、初めてのコレクションを終えられたときの気持ちはいかがでしたか?
M:とてもエキサイティングでした。すごくいい感じだったと思う。
AG:僕はストリーミング中継で見てたよ。ロンドンは朝10時だったからちょっと眠かったけど。
M: そうだったんだ! 本当にありがとう。どんな感じだった?
A:空間の使い方もすごくかっこよかった。画面を通しても、音楽が爆音で流れているのがわかったよ(笑)。すごくクールだったし、熱気の凄さが伝わってくるようだった。

AGが気になっている現在のロンドンのユースカルチャーなどはありますか?
A:僕の周りの友達がやっていることはホットだと思うな。ロンドンはちょっと変わった場所だから、変化が絶えなくて、特に今は過渡期なのかなと感じてる。いろんな国からクリエイターが集まってくるから、すごくインターナショナルな雰囲気もある。あと、若手のアーティストからもたくさんデモ楽曲をもらうんだけど、その度にいい音楽を作ってるヤツはいっぱいいるんだなあと感じさせられるね。今回、東京に来る前にソウルや北京にもいたんだけど、アジアの若いDJの子たちにもすごく可能性を感じるよ。

近々、新曲のリリースなどはありますか?
A:たくさんあるよ。チャーリー・XCXともレコーディングを続けているし、ミックステープも準備中。自分のレーベル<PC Music>からも新作が出る予定だよ。そうだ、アメリカの<Awful Records>って知ってる? ロサンゼルスでそこのメンバーのファーザーと会って、一緒に制作をしているところ。あと、エストニアのラッパーのトミー・キャッシュとも一緒に曲を作ってる。自分のレーベルのタイプとは違うサウンドだけど、そもそも俺たちはみんな仲のいい友達同士だから、一緒に集まって面白いモノを作り続けてるって感じかな。もちろん、今までどおり女性ヴォーカルのPOPソングも作ってるし。ユリアも、次の制作を始めてる?
M: 今は、次のショーの準備をしているところ。2018年春夏コレクションが10月中旬に発表になるんだけど……。
A: ファッション・シーンは本当にペースが早いよね!
M: そうなの! すぐに次のシーズンが来ちゃう。最近、すごく1920年代の日本のファッションに興味があるんです。1900年くらいに流入したヨーロッパのカルチャーと日本のカルチャーが合わさって、とってもいいミクスチャー感がある時代。今からアイデアを書き出す作業を始めるので、次のコレクションはAGにまた音楽を頼もうかな。
A: こちらこそ、ぜひお願いしたいね。そうだ、ここ数年で東京のファッション・シーンも変化しているように思うんだけど、ユリアはそれについてはどう思ってる?雑誌の「FRUiTS」も月間での発行をやめたよね? あの雑誌はとてもエクストリームな原宿スタイルを提唱してたと思うんだ。それに、僕が4年前に東京に来たときは、もっと奇抜な格好をしたキッズが歩いていたと思うけど、今はちょっと落ち着いたっていうか、ユニクロっぽいっていうか……。
M:本当にそうだと思う。今はあまりお金をかけなくてもファッショナブルなコーディネートができる。前は洋服にすごくお金をかけてたと思うし、私たちは「それで貧乏になっても構わない」とすら思っていた。ファッションに対してもっと情熱的だったって言うのかな? でも、今の若い子はそういった情熱がないのかなと思うな。
A: なんでそういうふうになったんだろう?
M:わからないけど、最近はみんな雑誌も読まないし、InstagramなんかのSNSだけで流行を追ってるからじゃないかな。
A:ユリアはそういった状況を変えたいと思ってる?
M: 意識してここを変えたい、という気持ちはないけど、若い子たちが、私や私の友達がやっていることを見れば、刺激されて何かが変わるんじゃないかなという気持ちはある。
A: クールだね。若いアーティストたちは必ずユリアに影響を受けると思うよ。

FRUiTS