ダニエル・リーによるブランド改革 第2章:Bottega Veneta 2020春夏

「やるなら思い切りやりたかった。そうじゃなければ意味がありません」

by Osman Ahmed; translated by Nozomi Otaki
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02 October 2019, 10:46am

時代精神を正確に捉え、より多くのひとびとに共鳴し、私たちの服装や買いたいと思うアイテムについての会話に影響を与える…。ファッションショーにおいて、そんな瞬間を目撃することはそうそうない。

しかし、今シーズンのBottega Venetaはまさにそんなショーを披露し、ファッションを巡る議論の流れを変えた。英国ヨーク生まれのダニエル・リーがBottega Venetaのショーを手がけるのは、今回が2回目。ダニエルは、服、バッグ、靴のすべてにまつわる、自信に満ちたストレートなコレクションを通して、私たちのワードローブの青写真を打ち出した。

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「このコレクションのテーマは、私たちを象徴するもの、そして衣服を身にまとうという現実を、より強固なものにすること。すなわち生活に根差した服です」と彼はショーの後に説明した。

「やるなら思い切りやりたかった。そうじゃなければ意味がありません」とダニエルは続けた。「好き嫌いはとにかく、何かは感じてもらえるはず。何のメッセージもないファッションなんて、つくる意味がないでしょう?」

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では、今回のコレクションで彼は何を伝えようとしたのか? それはこの服を見ればわかるはずだ。凝りすぎても複雑でもない、とにかく興味を惹かれ、純粋に欲しいと思えるアイテムだ。昨シーズンに比べ、メンズウェアはより進化し、普段使いしやすいデザインになっていた。

キーとなるルックは、ぴったりとしたセーター、ボックス型のブレザー、レザーのバミューダパンツ、足元は長めのソックスにローファー。ウィメンズウェアもより軽やかになり、車の座席に敷くビーズシートのような素材をドッキングしたり、アシンメトリーなネックラインの、身体にまとわりつく柔らかなニットを中心に展開された。

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ダニエルは、大ぶりのジュエリーやバッグ、華やかなイントレチャートのミュールにぴったりな、身体のラインを際立たせる服を、一貫して強調していた。また、それらのアイテムをオーバーサイズのトレンチコートで包みこむことで、家を出てからクロークルームに入るまでの時間のような、ナイトライフを満喫するスピリットを表現。

さらに、マティス風のステンシルのような猿やパイナップルが描かれたスカーフ地のホルターネックも登場した。ダニエルはこれを「やんちゃ」と形容すると同時に、彼がいつも既製服のデザインに取り入れる〈生々しさ〉に結びつけて説明した。

熱狂的なファンたちは、ダニエルが以前在籍したかつてのCélineのように、新生Bottegaのアイテムに我先にと飛びついてる。スクエアトゥのシューズ、貝のような形のポーチは、かつてのCélineのアイテムと同じくわずか数秒(あるデパートによれば、正確には30秒)で完売し、酷似したアイテムを売り出すデザイナーやブランドも続出している。これこそ、ダニエルの美学が広く行き渡っている証拠だ。

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来シーズンにも、ゼブラ柄のミッドヒール・パンプス、木の持ち手がついたイントレチャート・クラッチ、サテンを織りこんだメンズのローファー、身体に巻きつけるオーバーサイズのショルダーバッグに続く、さらなる大ヒットアイテムが登場するだろう。興味深いのは、どのアイテムもロゴやブランド戦略に頼っていないことだ。

ダニエルとBottega Venetaの周りには、常にうわさが絶えない。彼が賢いのは、いつもミステリアスな空気を漂わせていることだ。彼はSNSを使わず(ただ、家族がInstagramにアップされているBottegaの服を着たひとの写真を送ってくれる、と彼は以前話していた)、今回のショーのすべてのルックに意味を持たせた。

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Bottega Venetaはずっと、〈隠れた富裕層〉の象徴であり、伝統的なクラフトマンシップと唯一無二の品質にこだわるレザーブランドとして、〈自分のイニシャルだけで充分〉をモットーにしてきた。ダニエルは、ブランドの歴史やありふれたファンタジーをただ参照するのではなく、そのモットーを下敷きに自らのヴィジョンを膨らませているように思える。

短命なブランドが増え、多くのラグジュアリーブランドが、過剰生産、スピーディで断続的なプロダクトの発表、質よりロゴ、実物よりブランディング重視の傾向など、大衆向けにシフトしつつある今、Bottega Venetaがこのまま勢力を拡大し続けられるかどうかは、ブランド上層部に懸かっている。

しかし、ショー会場となったセナート宮殿の、膨らんだレザーを収めたガラスの箱が敷き詰められた、イントレチャートのモチーフを思わせる床こそが、彼への期待を物語っていた。今、Bottega Venetaの目の前には、希望と興奮に満ちた、輝かしい未来が広がっている。

ダニエルはこれからも毅然とした態度でノイズをはね除け、華々しい活躍を見せてくれることだろう。

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This article originally appeared on i-D UK.

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