スケートボード界の寵児、タイショーン・ジョーンズ interview「家族はみんな博打打ちだった」

2018年度のスケーター・オブ・ザ・イヤーを受賞し、Supremeの顔となり、adidasで彼自身初となるシグネチャースニーカーが発売され、ついにi-Dの表紙を飾るタイショーン・ジョーンズ。NYで今、いちばんクールなスケーターだ。

by Felix Petty; photos by Mario Sorrenti
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20 September 2019, 6:45am

タイショーン・ジョーンズは今、NYの新進気鋭のスケートキッズから、真のスターへと変革を遂げようとしている。彼の人生を決定づけたのは、Supremeの長編スケートフィルム『Blessed』(2018)への出演だろう。レールに飛び乗り、低くかがみこんで車のあいだを通り抜け、警官や警備員から逃げ回り、地下鉄の改札をオーリーで飛び越える彼の姿だ。

『Blessed』で魅せたそれらのシーンがきっかけで、タイショーンは2018年のスケーター・オブ・ザ・イヤーを受賞。スケーターにとって最大の栄誉だ。現在20歳の彼は、Supremeの顔として広告を飾る、世界一クールなスケーター。しかも、ブロンクスにレストランをオープンしたばかり。そして今回、i-D UKの表紙を飾る。

彼は今、自分が住んでいるニューヨークのフラットの目の前に停めた車の中にいる。『Blessed』の監督、ウィリアム・ストローベックといっしょだ。今日は2019年6月22日。今夜、adidasのシグネチャーモデルが発売される。最高の人生だ。

そんなタイショーンにウィリアムは問う。「情熱をもった人間はたくさんみてきたけど、君の情熱はそのなかでも群を抜いている。『Blessed』の撮影のとき、君は朝4時に起きてマディソン・スクエア・ガーデンの階段を跳び降りてた。僕に、外に出てスケートしようって電話をかけてきたしね。君のスケートへの打ち込みかたは、マイケル・ジョーダンのバスケへの打ち込みかたにも匹敵する。そのモチベーションって何?」

そんな賛辞に面食らったタイショーンは、しばし黙考し、〈カネ〉あるいは〈安定〉という答えを導き出した。「人生で得たいものがあって、それがモチベーションになってる。俺は家族や母さんの面倒をみたいし、家やいい車も欲しい。仲間たちの助けになりたい。頑張れば頑張るほど、すぐにそれが手に入るだろ」

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Tyshawn wears all clothing Supreme. Silky durag Hardies Harware. Jewellery model’s own.

「俺の家は金持ちじゃないから。家が金持ちなら、カネのことなんて考えない」とタイショーン。「自分がリッチなら、あるいはリッチな家庭で育ったら、働きたいなんて思わない。考えるのはクールでいたいってことだけ…。うまい説明がみつからないんだけど、でも俺自身は、自分の家族を支えるために生まれたと思ってるんだ。俺以外に誰が母さんの面倒をみてくれる? もし子どもが生まれたら誰が育ててくれる? 俺はちゃんとバトンを渡したい。死ぬまでいい生活したいだろ。俺が〈連鎖反応〉のきっかけになりたいんだ」

タイショーンは今、かつて誰もが夢みた〈アメリカンドリーム〉を実現している最中だ。ブロンクスの少年が、生まれもった才能とたゆまぬ努力だけでスターダムへと邁進し、スポンサー、富、名声を手中に納めた。

彼がスケートに夢中になったのは、友人がもっていたコンピューターゲーム『Skate』がきっかけだった。そして兄が実際にスケートを始める。「俺はいつも兄貴についてってた」とタイショーンは回想する。

「兄貴みたいになりたかった。それだけ。俺は次男坊で、長男の真似ばっかしてた。兄貴がスケートをやりだしたから、俺も始めた。それがきっかけだよ。中学生のとき、将来何になりたいか訊かれて、俺はこう返した。『学校とかどうでもいい。俺はプロのスケーターになる。学位なんて俺には必要ない』って」

会話のなかで、タイショーンは有名になったことについて気恥ずかしそうな様子をみせ、この話題に関しては歯切れも悪かった。これについて考察することに興味がないのか、あるいは単にシャイなのかもしれない。いっぽうで、彼は自分の能力については絶対的な自信をもっている。

「もしいつか、欲しいものをすべて手に入れたら、スケートへの情熱を失ってしまうかもしれない。これまでもやりたいことを叶えてきたけど、でもまだ全部じゃない」

「君はスケーター・オブ・ザ・イヤーを受賞した。スケート界最高の賞だろ」とウィリアム。「まだ満足してない?」

「してない」とタイショーンは断言する。「もし満足を感じたら、滑りにいくだけ。受賞のことなんて忘れるために」。彼は自らの高い能力を自覚しており、自らが賞に値する存在であることもわかっている。さらに、やるべきことも認識している。

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Tank Calvin Klein Underwear. Silky durag Hardies Harware. Jewellery model’s own.

ウィリアムが監督し、Supremeの伝説的スケーター、ジェイソン・ディルも出演した50秒の動画『Buddy』でシーンに登場した頃のタイショーンは、やせっぽちの少年だった。ジェイソンとタイショーンは、いかにもニューヨークのストリートにいそうな登場人物たちと会話を交わす(ホームレスの男が「俺はたまにコカイン吸ってたぜ」というと、ジェイソンは「ああ、俺もだよ。大したことじゃない」と返す、というような)。

その動画ですでに、タイショーンの神に与えられた才能は明らかだった。彼は、NY郡裁判所の高い階段もオーリーで難なく下りていくが、この場所は彼が何度も挑戦している場所だ。『Blessed』の終盤でもその場所に挑戦する姿が映され、大きな感動を与えるシーンとなっている。彼はNYにおけるアイコニックなスケートスポットを、スケートを始めて間もない頃から自らの遊び場にしてきたのだ。

『Buddy』のあとには、ウィリアムにとって初となる長編のSupremeのスケートフィルム『Cherry』が制作された。本作では、まだ声変わりもしていない小さなタイショーンが、そのときすでに有名だったSupremeスケーターのディラン・リーダーをキラキラな眼差しで見上げるキュートなシーンも垣間見れる。『Cherry』は、Supremeというブランドの25年にも及ぶ〈神話〉に登場した、新世代のSupremeスケーターたちの存在感を強固なものとした。タイショーンをはじめとして、ナケル・スミス、ケビン・ブラッドリー、セージ・エルセッサー、ショーン・パブロなど、全員が王者に名乗りをあげている。

「『Cherry』の撮影のとき、俺は14歳だった。当時は、Supremeの映像に出るなんて考えもしてなかった。プロになりたくて、ただ自分の人生を生きてただけ。特に何か考えてたわけじゃない。そのときはとにかくやって、あとで話す、みたいな。みんなには『お前これやってたのかよ! すごいな!』っていわれるけど、俺はいつもやるべきことをやってるだけ。未来を見ていたいと思うし、物事を引きずるタイプじゃない。自分は何も成し遂げてない、もっと上を目指さないと、って常に思ってる」
じゃあ、当時の自分にアドバイスをかけるとしたら? 彼は一拍おいて、「特にない」と答えた。「その頃から俺はすべてを理解してたから」

タイショーンのスケートボーディングは、努力して手に入れた賜物だ。そこには、闘わなければ得られない自由がある。彼はスケーター・オブ・ザ・イヤーに輝いた唯一のNYC出身スケーターだ。NYでは、ストリートの不屈の精神や気骨が買われる。スケーターはNYという街を異なる視点から見ること、ルールを曲げ、ルールを壊し、ギリギリのところで生きていくことが求められる。警官や警備員をまく必要もある。

「タイショーンは誰にも止められない」。ウィリアムは去年、『Blessed』の公開時にそう述べた。「もし誰かが障壁を築いたら、彼はそれをどかすだけ。警察を呼んでも無駄。『警察が来ても俺は捕まらない』。それがタイショーンだ。彼は気にしない。それは簡単なことじゃない。僕らはそれを、ストリートで学んでいくんだ」

おそらくここで問うべきは「タイショーンはスケート界のマイケル・ジャクソンか?」という質問ではない。「そもそも彼はスケート界のMJを目指すべきなのか?」という質問だ。タイショーンはタイショーン、他の誰でもない。大きな情熱を抱き、薬物などに手を出さない、よくできた若者。大金を稼いで、母親に家を買ってあげたいと望む若者だ。

「シグネチャースニーカーで得た金はどう使う?」とウィリアムが尋ねると、タイショーンは「投資するかな」と答えた。「金に働いてもらわないと。俺の家族はみんな博打打ちだったからね。ばあちゃんもそうだよ」

「でも自分を売りすぎてもないよね。タイショーンって名前のついたエナジードリンクを出してるわけでもないし。君は地に足が付いていると思う」とウィリアムはいう。タイショーンの答えは、彼の携帯にかかってきた、車の購入についての電話で遮られてしまったが。

「Supreme、Fucking Awesome、adidas。君には最高のスポンサーがついてる。もし、世界のどんな企業にでもスポンサーについてもらえるとしたら、どの企業がいい?」。タイショーンは無表情で答える。「ランボルギーニ」。
ここでタイムアップ。彼には、今夜のシグネチャーモデルローンチの前に、片付けなくてはいけないことがある。

「他に何か言いたいことはある?」と最後にウィリアムが問うと、タイショーンはこう答えた。「いや、ないよ。もう行こう」。

「ありがとう、次のインタビューはきっと『Forbes』だな」

「『Forbes』の長者番付に載るのももうすぐかも」

「ピース」

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All clothing Supreme

Credits


Photography Mario Sorrenti
Styling Alastair McKimm

Hair Bob Recine for Rodin
Make-up Kanako Takase at Streeters
Nail technician Honey at Exposure NY using Dior
Photography assistance Lars Beaulieu, Kotaro Kawashima, Javier Villegas and Chad Meyer
Styling assistance Madison Matusich, Milton Dixon III and Yasmin Regisford
Hair assistance Kabuto Okuzawa and Kazuhide Katahira
Make-up assistance Kuma
Production Katie Fash
Production assistance Layla Néméjanksi and Adam Gowan
Creative and casting consultant Ruba Abu-Nimah
Casting director Samuel Ellis Scheinman for DMCASTING

This article originally appeared on i-D UK.

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