ラッセル・シモンズがHIPHOPのミュージカルを制作

ア・トライブ・コールド・クエストのトラックからタイトルを取ったミュージカル『The Scenario』は、「ヒップホップが隆盛を極めていく30年間」を物語る大作。

by Hannah Ongley
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08 February 2017, 9:45am

ヒップホップ業界の重鎮ラッセル・シモンズが新しいことを始めようとしている——ミュージカルだ。1984年、リック・ルービンとともにDef Jamを作り出したシモンズは、今でこそブロードウェイの歴史を塗り替えるまでに至っている『ハミルトン』がまだオフ・ブロードウェイで初公開された2015年初頭に、独自のヒップホップ・ミュージカルの草案を発表していたが、ここにきてようやくその詳細を語った。ミュージカルの名は『The Scenario(ザ・シナリオ)』で、これはニューヨーク州クイーンズから生まれたヒップホップの英雄、ア・トライブ・コールド・クエストのトラックから取ったものだという。内容は、ダイナミックなパフォーマンスを盛り込んでヒップホップの30年を物語るものとなるそうだ。このミュージカル制作にあたり、シモンズはDef Jamの親会社であるUniversal Music Groupと組むという。ヒップホップの楽曲を多く所有するユニバーサルと組むことで、ラップというジャンルの台頭から繁栄までを描くことが可能になる。

「あらゆる人たちに観てもらいたい」とシモンズは『The New York Times』紙とのインタビューで語っている。「デトロイトの"フッド(低所得者層地域)"に暮らすキッズにも観てもらいたいし、ニューヨークの洗練されたミュージカル・ファンたちにも観てもらいたい。50歳だろうが14歳だろうが、誰もが夢中になる作品になる」

これまでにシモンズが楽曲を使用すると明かしているアーティストは、ドレイクやケンドリック・ラマー、カーティス・ブロウ、そしてザ・シュガーヒル・ギャングなどがいる。「ラキムとケンドリック・ラマーのあいだにある違いは小さい」と、シモンズはヒップホップ黄金期を築いたエリックB&ラキムの片割れであり、ヒップホップ界に最も影響を与えたアーティストとして名高いラキムを引き合いに出して、ヒップホップの歴史について語っている。エリックB&ラキムによる衝撃のデビュー・アルバム『Paid in Full』は、今年で発売30周年を迎える。

『ザ・シナリオ』を観たいという人には、ユニバーサルが持つラップ楽曲の数々に改めて触れる良い機会となりそうだ。シモンズは現在、ブロードウェイの限界を押し広げるべく「テクノロジーの可能性を試している」という。目指すは伝統的なブロードウェイ・ミュージカルの世界ではなく、むしろ実際のコンサートのような世界観なのだそうだ。彼が模索しているスタイルのひとつが、演者が繰り出すフレーズに観客が呼応し、引き継いで音楽を生む"コール・アンド・レスポンス"のスタイルだ。観客の激しいブーイングを浴びて途中退場せざるを得なくなるという災難に見舞われたものの、わざわざチケットを取って『ハミルトン』の観劇に訪れるほどのヒップホップ好きだと発覚した現アメリカ副大統領マイク・ペンス(きっと『ザ・シナリオ』も観に訪れることだろう)に誰か、もっとマシな言葉さばきを教えてやってほしい。

『ザ・シナリオ』は2017-2018年シーズンにプレミア公開される予定。

Credits


Text Hannah Ongley
Translation Shinsuke Kuriyama at WORDSBERG Inc.

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